10話 離婚6

 10.離婚6


「これで彩と俺は赤の他人だ、これからは彩が何をしようと俺には関係ないから、自由にすればいい」


「このマンションは彩の事を考えて、彩の実家の近くにと思って買ったけど、もうその必要もないし、ここに住んでいたら、彩を思い出すから、売って別のところに引っ越すよ」


 それを聞いた彩は、そうだこのマンションは私のために通勤時間がちょっとかかるけどって言って買ったんだった。この人はいつも私の事を考えてくれたんだ。


 そうだ、こういう人だから、この人を好きになって、私からアプローチして結婚したんだ。


 あーーーーー なんて馬鹿な事をしたんだ。 もう後悔しかなかった。


「かっちゃん、私達はもう無理なの? 戻れないの? やり直せない?私の事は嫌いになったの?」、彩は同様の事を何度も言ってきた。


「ああ、俺は今でも彩が好きだ、愛してるよ。でもあんな裏切りは、やっぱり無理なんだよ、やり直しても、いつ同じ目に会うかって怯えながら生きていくのはつらすぎる」


 1分ほどたって、克己がまた話し出した。


「愛する人を失うんだよ、彩にはわからないだろうけどつらいんだよ、苦しいんだ、でも一刻も早く立ち直って前に進まなきゃ生きていけないんだよ」そう言うと観念したらしく


「かっちゃん、ごめんなさい。愛してる、一番好きなのはかっちゃんです。私、この幸せに胡坐をかいてしまって、これがあたりまえだと勘違いして、過ちを犯してしまったの。

 かっちゃんをキズつけた。だから、かっちゃんのために別れるわ。ごめんなさい、でもかっちゃん愛してる、お願い別れてからも会ってほしい」


 克己はそれに答えなかった。


(会ったら忘れられないだろ、何言ってるんだ。やり直しでも考えているのか、

 彩を見たら・・・・・・・・・・・・・・そんなの無理に決まっているだろ)


 彩は次の日、実家に戻り、彩の物は引っ越し業者に頼んで実家に送ってもらった。


 その際、彩のお兄さんが荷物の整理に来て、俺にあやまってきた。


「克己君はまったく悪くない、悪いのは彩だ、許せない気持ちはわかる。本当にすまなかった」


「いえ、もう終わった事ですから、俺は一刻も早く、新しい生活に踏み込まなければ、このまま一生終わっちゃうのはいやです。このマンションは彩の思い出が多すぎます。

 彩に近すぎます。しばらくしてここを引っ越すつもりなので、もうお兄さんにも会わないと思います」


 そう言って、別れた。


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