第21章 決意

数分後、小高い丘の上で四つの人影が体中アザだらけになって横たわっていた。

四人は、不良達を何とか追い払うことに成功したのだ。

勝ったというより、なんとか引き分けたという感じだった。


「お前らなぜ戻ってきた?」


なんとか追い払った事で安心したせいか、すこし半泣きで浩太が答えた。


「だって僕達仲間だもん。

新田君が捕まっているのに、あのままほおって逃げることが出来る訳ないよ」


「その為に、体中アザだらけじゃないか」


「だって、だって」

浩太は感極まって泣き出した。


「分かった。

分かったからもう泣くな。

お前らが戻ってきてくれたお陰で助かったよ。

有難う。

お前らの言う通り今日みたいな事があったら

確かに対処できないな。

よしわかった。

俺の師匠に相談してみるか。

明日、早速いってみるか」


「いいや、明日じゃなくて、今日行こう。

今日今すぐに」

浩太が待ちきれない様子で答えた。


「今すぐにか?」


新田と浩太の会話を聞いていた二人が遠慮がちに話はじめた。

「あの、僕らも一緒に習いたいんだけど、駄目かな」


「そうだな。

じゃあ今から皆で行ってみるか」


「うん」

三人は声を揃えて返事をした。


四人は空手の心得や空手とはどういうものか、どんな練習をするのか、などの話をしながら、道場へとむかった。


しばらく歩くと小さな空手道場が見えてきた。


「さあ、着いた、ここが道場だ」


中からは、とても勇ましい掛け声が聞こえてくる。


大きい扉を開けると新田はとても懐かしそうにどんどん中に入っていき、後の三人はおそるおそる、新田の後をついていった。

新田は、道場の真ん中に立っている背の高い髭を伸ばした、年配の男性を見つけると、とても懐かしそうに、近寄っていった。


「先生、お久ぶりです。」

とても懐かしそうな顔をして新田は話かけた。


「おおー、新田か、久しぶりだな。

友達を連れてきたのか。

それよりどうした?アザだらけだぞ」


新田は後の三人を自己紹介して、今までのいきさつを説明した。


「そうか、そんな事があったのか。

空手を習うのは構わんが、でもそれを喧嘩の道具には使えんぞ。

でも自分の身を守るために護身術と合気道を身につけるというのならよかろう。

その上で心と体を鍛える為に空手を覚えるというのはどうかな。」


「有り難う御座います、先生」

四人とも、深くおじぎをした。


「明日から早速みんなで来るといい」


みんなと分かれてから浩太は帰りながらかかしと今日一日あった事を語りあいながら帰った。

しかし、話しの中心はこのアザの事を父親、母親にどう説明するか、だった。


次回、

第22章、説得

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る