第20章、作戦会議

次の日学校帰りに空き地で記念すべき、第一回目の反不良同盟作戦会議を始めた。


「さあ、みんな集まったから作戦会議始めようか」

浩太が初めに話始めた。


「昨日、新田君がリーダーを僕にという話をしてくれたのだけど、僕自身そんな資質はないと思っているけど、ホントにこんな僕でいいかな。

まず新田君はどう思う」


「おう、いいぜ、俺はお前の勇気を買ったんだ、だから文句なしだ」


「次に修一君は」


「いいよ、なんといっても、僕がいやな思いをしてるとき、助けてくれたのが、浩太君だけだから、賛成」


「次に俊平君は」


「僕も修一君と同じで助けてくれたの、浩太君だけだから、異議なし」


「うん有り難う。

じゃあ僕が初代リーダーとして精一杯がんばります。

それから、いつでも僕の考え方に無理があったら、言って下さい。

その時はリーダーを交代します」


「浩太心配すんな。

俺たちがしっかり支えてやる。

いいなみんな」


「オー」


「じゃあ、なにからどうこの会を進めていけばいいか、何か案があればどうぞ」


しばらく沈黙が続いたので浩太が案をだした


「まず、情報集めから始めよう」


「何の情報」

みんな浩太の顔を覗き込んだ。


「うん、まず不良達がいじめのターゲットにしている人達を、探し出すんだ」


「どうやって」


みんなは更に身を乗り出した。


「露骨に情報収集をして回ると僕達の噂が広がって、不良達の妨害が入ると後がやりにくくなるから、目立たないようにするのが大事だと思うんだ。

だからまず仲のいい友達から、さりげなく嫌がらせを受けている人達の情報を集めることから始めるというのはどおかな」


新田が賛成した。

「そうだな、反不良同盟の存在がやつらにばれればやつらは必ず妨害をしてくる。

そうすれば新しい仲間や協力者を探そうにもやつらからの仕返しを恐れて、うまくいかなくなる事も考えられる。

その後はどうする」


「うん、実はそこからいい考えが浮かばなくて」


続けて新田が話し始めた。

「修一と秀平はなぜこの反不良同盟にはいってもよいと考えたんだ?」


しばらく二人共考えて、修一が先に答えた。

「そりゃ、助けてほしい時に誰も助けてくれなかったけど、浩太君だけは、他の人と違って、助けてくれた。

それがとても嬉しかったから浩太君の為に何か手伝えることが出来たらと思って」


続いて修平が答えた。

「そうだね、助けてくれた浩太君の為なら、という所が本当だね」


二人の気持を聞いた所で新田は話をまとめ始めた。

「そう、二人とも、つらい時まわりの同級生は不良達が怖い為に誰も助けようともしなかった。

しかし浩太はその怖さに負けず、一人で助けようとした。

それが嬉しくて反不良同盟に入ろうと考えた。

ポイントはそこだよ」


「どういう事、よく判んないよ」

他の三人は首をかしげた。


「どういう事かというと、まずターゲットが決ったら普段からさりげなく遠くから不良たちが接触してこないか見張り続ける。

接触してきたら、まず俺に連絡する。

俺が到着したら、助けに入る。

やつらは俺が押さえるから、君らはターゲットを守ってやってくれ。

君たちが心を開いて計画にのってくれたように、きっと助けた人たちも賛同してくると思うから、そうやって仲間を増やしていこうと思う。」


3人とも、判った様な判らないような、顔をしながらも、

「とりあえず、嫌がらせをされている人を見つけていくってことだね」

浩太が話をまとめて、続けて新田に話しかけた。


「新田君」


「どうした、浩太」


浩太は、すこし遠慮がちに話始めた。

「昨日考えた事があるんだけど、僕がリーダーとしてやっていくなら、今の僕じゃ駄目だと思うんだ」


「どうして」

新田が不思議そうに聞き返した。


「うん、今の僕じゃ、体力的にあまりにも弱すぎると思うんだ。

リーダーとしてやっていくからには、みんなを守れるようになりたいんだ。

それで新田くんに空手を教えてもらいたいんだ」


「空手を覚えたいのか?」

新田は今までとは違う厳しい表情に変わった。

「浩太、空手は喧嘩の道具じゃないぞ。

喧嘩が強くなりたいというのなら、喧嘩の実践をつむしかないぞ。

しかし、あいつらに対抗する為に力に頼るっていうのはちょっとちがうぞ。

力対力じゃ、恨み憎しみしか生まれないぞ」

新田はかなり厳しい口調でいった。


「うんわかってる。

でも、彼らに攻撃を加えるのではなく、危険な時に自分を守るだけでなく、周りも守りたいんだ。

僕が自殺しようとしたのを知ってるだろ。

もう二度とあんな思いしたくないし、いま、いじめで苦しい思いをしてる人にこれ以上苦しい思いはさせたくないんだ」


「力で抑える為に俺がいる。

それじゃ駄目なのか」


「相手は人数が多すぎる。

全員そろえば二十位人はいるんだ。

もし、囲まれたら、いくら君が空手が強いからといって、二十人対一人じゃ無理だよ。

それに、何の役にも立たない僕らじゃ、新田君がやられそうになったとき、誰も君を助けることが出来ないじゃないか」


「俺の事はいい。

俺の事は、俺で何とかする。

お前らは安全に逃げる事だけ考えればいいんだ」

新田はかなり興奮して大きな声で怒鳴った。


浩太もそれに負けないくらいの声で言いかえした。


「それじゃだめだよ、新田君一人に危険なこと押しつけるだけじゃないか、そんなのだめだよ」


その時、不良達が四人を見つけた。

「おう見つけたぞ。

今回の標的は新田一人だ。

ほかの三人はどうでもいいぞ。

いけー」


「うおー」


二十人位の不良達が一斉に新田目掛けて走ってきた。

新田は他の三人に被害が及ばないように、すぐに離れて逃げるように指示すると、小高い丘の上に向かって走っていった。

丘の上で待ち伏せ、迎え討つ作戦をとったのだが、十人はなんとか、帰り討ちできたが、残りの十人に手足をおさえられてしまった。


浩太はてっきり新田も一緒になって逃げるものだと思いその場から逃げようとしたが、なんだか様子が違うのに気付き後の二人を呼びとめ、


「二人とも待って。

新田君が捕まった。

大変だ、どうしよう。

よし、助けに行こう。

取り合えず、僕が助けにいくから、秀平君と修一君はこのまま逃げて」


と言うと、小高い丘の上目掛けて走っていった。

当然、後の二人もその後を追った。


「ばかやろう、逃げろっていただろう。

くるな」


新田の声が空しく響いた。


次回、第22章、決意

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