第9章、自殺
「あー、面白かったべ、今日はハンバーガとコーラと百円総取り、儲かった、儲かった」
「浩太のやろう、てめえが避けたりするから負けたじゃねえか、おもしろくねえな。
もう帰るべー」
「じゃあな、浩太、今日は楽しかったぜ、また遊ぼうぜ」
「またな、浩太」
「またな、今度逃げたら承知しねーからな」
その場から不良達がいなくなると、恐怖と緊張が一気に解けその場に倒れこんでしまい、ふと目を開けるとそこに今まで自分目掛けて飛んできていたテニスボールが転がっていた。
そのテニスボールを見るとさっきまでの恐怖がよみがえり、あまりの怖さになぜかとっさに逃げなければと思い精一杯の力で走り始めた。
もう心も体も着ていた服もぼろぼろで、履いてきた靴もいつの間にか無くなっていたが、それでも恐怖の方が強くて自分でも何処に向かって走っているのかよく解らなかったがとにかく走り続けた。
しばらく走っていると、目の前に田んぼが広がってきて一本足のかかしが立っていた。
浩太はそのかかしをみると、ある事をふっと思い出した。
いつもここにくると何処からともなく、力強くそして優しく頑張れ、負けるな、と声が聞こえてくる様に感じるのだ。
そしてまた、今も優しくいたわるような声が聞こえた様な気がした。
しかし、今はもう精神的に限界の状態だった。
学校で逃げ回り、今度はそれ以外でも逃げ回らなければならないのかと考えたら、やり切れなく感じ衝動的に側にあったガラスの破片で自殺を考えたのだ。
ガラスの破片を手に取りまさに手首を切ろうとしたその瞬間、何処からともなくとても優しく心地良い、まるで神さんか仏さんに包まれたようなあの柔らかい感覚の風がぴゅうーと吹き抜け、全身の力が抜けそのまま気を失ってしまった。
次回、第10章 自殺(かかしの目線)
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