第3章、かかしが感じた不愉快

オイラを、不愉快にさせる少年の集団が現れるようになったのは、魂ってやつが

入って来て2年目の秋だった。

楽しそうに通り過ぎていく子供たちの次に彼らはやってくる。


上下真っ黒な洋服をきていて、どうやら高等学校という所に毎日通っているようだ。

いつも煙のでるまるい筒のような物を口にくわえて、みんなが通る道を我が物顔で

歩いてくる。


それだけでも不愉快に感じるのだが、いつも1人だけにみんなのカバンをもたせ、すこしでも地面に付こうものなら、殴ったり、蹴ったりしているのだ。


一見じゃれ合っているのかな、とも思えるのだがあまりにも不自然で会話の内容からしていじめられているとしか思えない光景なのだ。


そしてもっともっと不愉快なのが、それを見て知らん顔をして通りすぎる人達だ。

その通り過ぎる人達みんながみんな私は関係ないという顔をして、顔をそむけて通りすぎていくのだ。


その時だけは、話せない事と、動けない事がとてもじれったく感じるのだ。


この時になってやっとオイラが話せない、そして動けない本当の理由が分かったような気がした。


もし始めから話す事ができていたなら、抗議したい事があっても我慢するしかないというじれったさ、というかこのイライラ感を感じることが出来なかっただろう。


そしてもし始めから動くことができていたならきっと、もっともっと興味がある面白そうなことを追い求め、オイラを不愉快にさせるこの状況と向き合う気持ちをもてなくて、オイラもみんなと同様にこの光景をどうでもよいと感じて、見て見ぬふりをする人達と同じになっていたに違いない。


オイラに魂をくれた神さんか仏さんがきっとそれが解っていたから、あえてこの二つの能力を与えてくれなかったのだろうと思う。


次回、第4章、かかしの心配

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る