第1章 風がはこんだ贈り物
もともとオイラはとある農家でとても美味しいお米を守るため、お百姓さんに使いふるされた布と木切れを使い何の変哲もない一本足のかかしとして作られたのだ。
とうぜん作られた時は他のかかしと同じで、なんの変哲もないただの田んぼの中の1本足のかかしだった。
秋になって稲の穂に実が付き始めると、毎日毎日朝から晩まで、いや朝から次の日の朝まで24時間無休で、雨の日も風の日もただただ田んぼの真ん中にカラスやスズメの脅し役として立たされ、そして米の収穫が終われば、カビくさい蔵におしこめられ、また次の年に田んぼに立たされるというその繰り返しの毎日だった。
ところが、とてもよく晴れたある日の事、それはそれは心地よく、まるで神さんか仏さんに包まれたようなとても優しく柔らかい感覚の風が、何処からともなくピューと吹いてきた、と思ったらその瞬間かかしであるオイラに、魂ってやつが入ってきたのだ。
なんとも不思議な出来ごとだったのでよく覚えている。
どうやらこの日がオイラが生まれ変わった日のようだ。
なぜこんな不思議な事がオイラだけに起こったのかそれは未だに判らない。
しかし、今思えばきっと神さんか仏さんがこれから起きるであろうことを予測し、それをなんとかさせる為に、あのとても優しい柔らかい感覚の風にのって一本足のかかしであるこのオイラに、魂ってやつを体に入れるためにやってきたのだと思う。
そして、その魂ってやつはオイラだけに送られたそれはそれはとっても素敵な贈り物だったに違いない。
次回 第2章 心をもらった一本足のかかし
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