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池塘に隣接する露台。
水面には蓮の葉と花がちらほら。
硬い木のテーブルにグラスを並べて、冷たいお茶を注ぐ。
何処からか運ばれてくる橙の香り花。
未だ聞こえる蝉の声も、この陽射しと熱気で夢現。
飼い猫がくわえてきた鳥の死骸を、お菓子の包みだった和紙で優しく包み、水葬する。
僕の愛する世界。
グラスの中で融けた氷が作る琥珀の陽炎。
直に座る露台の涼しさ。
水面を這い吹く風。騒ぐ緑。
オレンヂ色に狂う想いの花。
僕の愛する世界。
微笑みと涙を捧げる、君に。
赤い月と黒い沼の夢を抱き締めて、そのくちづけを瞼に。
僕の愛する世界。
見てごらん、魚が跳ねたよ。
あれはもがく僕の指さ。
残り夏の熱射で氷と一緒に融けてゆく。
遠雷が聞こえる。
もうじき夕立が来る。
僕の愛する世界。
さよなら、夏の小鳥。
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