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 温かい雨に打たれて、微笑んでいる君を覚えている

 名前も知らない花が街の至る所に咲き乱れて

 もう靴の中までびしょ濡れなのに

 厚い雨雲は去りそうにない

 滴が次々に流れ落ちる髪も、肌に張り付いたTシャツも

 温かい雨が絡み付いて

 微熱は下がらない

 夢の中のように、目を凝らしてもよく見えない

 手を伸ばしても、届かない

 君は微笑んでいる

 胸に閊えた塊を、解いて広げて君に見せたい

 両掌に載せて、雨に流れてしまわないうちに

 いつかまた逢えたら

 君に何かをあげる

 僕はいつも貰うばかりで

 何もできない

 始まりも終わりもない雨は

 フィルムの傷みたいに、記憶の映写機の中で回り続ける

 温かい雨に打たれて、微笑んでいる君を覚えている

 繰り返す

 よく見えない君が微笑んでいる

 温かい雨の中で

 届かない君が微笑んでいる

 温かい雨の中で

 花は咲き乱れている

 温かい雨の中で

 いつかまた逢えたら

 君とまた出逢えたら

 君に何かをあげるから

 温かい、夏の雨の中で

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