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 天使達の町で、僕だけが人間だった。

 彼等は、何も与えないし、何も奪わない。

 見せかけの翼は、とても綺麗。

 触れたら、薄い氷のように溶けてしまいそう。

 そんな翼じゃ、とても飛べやしない。

 落ちてゆく、落ちてゆく天使達。

 それでもみんな、微笑みながら。

 置いていかれた僕だけが、どうしようもないほど人間だった。


 壁と海に囲まれたその町は、みんなとても幸福で、「世界」はその中だけで充分だった。

 壁の向こう側には、海の果てには、一体何があるのか。

 誰も考えない。みんな考えてる。

 逃げ出す者は、一人もいない。

「逃げる?何から逃げるのさ。此処には逃げなきゃならないものなんてひとつもないのに。」

 旅立たない人達。

 天使達は、飛び立たない。

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