第6話 焚火でこんがりの缶詰
「日も落ちてしまったし今日は ここで野宿しよう」
cabin02なら真っ暗でも進めるし自動操縦モードなら飲酒運転も許可されているけど 真夜中に村へ到着したって見張りの人しかいないだろうし、早朝に向かったほうが都合がいいだろう。
助手席を見るとリザリアは息を切らせたように浅い呼吸を繰り返していた。
はぁ・・
はぁ・・
熱い・・
マシュマロのような肌は赤く染まり ぼやけた視線にホホを赤らめてしまっている。
病気?
ブラウスのフックのボタンも緩ませて熱でも出したのかと思ったけど そうじゃなかった。
その手にあるのは「ウォークの酒」じゃないか?
移動中 ずっと飲んでいたのか。
「だてぇ ブルクさんの感謝の気持ちが嬉しゅくて飲んでたのぉ」と酔っ払いらしい言い訳だったが
完全に出来上がっているので休ませることにした。
ガチャン!
助手席のシートを倒せば横になれる
キャ
ゆっくりと倒したつもりだけど リザリアはおサルさんのうように俺の手に絡みつき俺たちはその柔らかいシートに沈み込んだ。
顔が近い・・そして ドローン写真の映像を今度は肉眼で眺めることになった。
ゴックンとつばを飲む・・だけど
グーグー
リザリアは眠っているようだった。
俺は 外に出るとリザリアの酔いがさめるまでの間に 焚き木を用意してキャンプの準備をする。
石を積んでかまどを作り 後で燃えカスが自然に帰るようにちょっと細工もした。
リザリアの好みは聞いていないけど
「今日は この缶詰でいいか」
焚火の上に網を置いて 缶詰を乗せると熱で温められた感ず目から気泡が出始め、
それと共に 飛び散った缶詰の汁が炭火の上に落ちると香ばしい香りが周囲に広がる
缶詰のフタが黒曜石のように黒く染まり始めたらできあがり。
リザリアを呼びに行こうと思ったら茂みがガサガサと音を立てる。
ガサガサ
鹿か?
熊?
ガサガサ
異世界なら 魔獣とか?
茂みを揺らす音は 力ずよく真っすぐこちらへ向かってきた。
そして ひょっこりと顔を出したのは小人に見えるがひげを蓄えたドワーフの二人組。
鎧のような皮の肩当に皮の帽子。
そして手には つるはしを確りと握り構えていた。
「兄ちゃんは何もんだ?」
ウォークのブルクさんのようには いかないようだ。
「俺は・・俺は・・」
「一人なのか?」
ドアを開けて cabin02に逃げ込めば助かるだろう。
俺はドアの方を見た。
車の窓は モニターになっているので外から中の様子を見ることはできない。
スマートフォンを取り出すと、「自動操縦」のボタンを探す。
うまく不意を突いて 自動操縦でcabin02を動かすんだ。
ドワーフは足も短いし 走り出したcabin02にしがみ付けば俺は逃げられそうだ。
「俺は キャンパーだ!」
二人はゴソゴソと話をし始めた。
スマートフォンの「自動操縦」ボタンに指が伸びたけど今じゃない。
「オレはホルル。キャンパーってなんだぁ? それより いい匂いがするじゃないか?」
つるはしで缶詰をさした。
「ああ 缶詰だ。食べるといい」
よし。いい具合に缶詰に気を取られてくれた。
ドアが開いてリザリアが出てきたらこの計画は失敗する。
スマートフォンを構えた
そして 指を・・・乗せようとした。
「ショウスケ 食事にしましょう」
cabin02のドアが開いて中からリザリアが現れた。
計画は失敗した。
不意な大声に ドワーフたちは驚いたようだったけど逃げられるような隙はなく
すぐにツルハシを構えてしまう。
俺の体が勝手に動く
自分でもわからないけど 両手を広げて大の字になってドワーフに立ちふさがった。
俺はリザリアの事をかばいたいのか?
「リザリア ドアを占めろ! 今逃がしてやる!!」
ドワーフをにらみつけながら ドアの閉まる音を確認すると
右手に持っていたスマートフォンの画面を確認する。
そのとき誰かが俺の肩に手を置いた
「ショウスケ なにしてるの?ソレ 焦げちゃうわよ」
後ろを振り返るとリザリアの姿とドアの閉まったcabin02があった。
久しぶりにGAME OVERのBGMを聴いた気分になった。
ガサガサ
茂みから今度は 袋を担いだドワーフが現れた。
見た目でわかる。
こいつがボスだ。
「よお! 兄ちゃん!それに べっぴんの姉ちゃん!」
そして ドワーフの二人がゴソゴソとボスに話をすると
コツン!
コツン!
二人にげんこつを 貼り付けた。
「ここは森の中だ。つるはしは護身用さ、怖がらせて すまなかったな」
ふぅ・・
腰が抜けて 座り込んでしまった。
「冗談がキツイぜ ははは」
「オレはホルルだ よろしく」
「オレ ドツガン。力持ち 握手 握手」
「そして ワシがビッツだ。荷物の袋があったから遅くなってしまったが 近くでいい匂いがしたから駆け付けたのよ」
そう言うとビッツは 袋を下ろして中身を見せてくれた。
仲には ベーコンや色々な食材が入っている。
「オレ達も混ぜてくれないか?」
話慣れた感じで 明るい人のようだった。
それにしても 二人は少し無口な人だな。
俺も 人の事は言えなかったけど。
「さあ 缶詰でよかったら食べてくれ」
あつあつの缶詰に専用の持ち手を付けてそのまま食べてもらった。
「美味しいわ」
「うん うまいぞ がはは」
缶詰は 思いのほか好評のようだ
それならとさらにふりかけを用意する。
キャンパー御用達アイテム。特性ふりかけ!!
「これも かけてみてくれよ」
「な~に? 大丈夫? え!私 これも好きよ」
「味が変わったな。 ディップのようだ。がははは」
誤解が解けて打ち解けられて よかった。
「今度は ワシらの番だ」
つづく・・。
・・・・
※ コーティング剤が使用されている缶詰の場合は熱しますと剤が溶け出す可能性がありますm(__)m
・・・・
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