アニメの話

 少し重い話が続いてしまったし、次の話も重くなる(かもしれない)ので、ここら辺で箸休め代わりのゆるい話でもしておきたい。


 私はアニメが好きである。もうめちゃくちゃ好き。だが「今期何見てるの?」と問われると非常に困惑する。なぜなら人に言えるようなアニメを見ていないからである。人に言えないアニメ、というと少し語弊が生じる。別に公序良俗に反するようなものではない。現在私が見ているのは、深夜枠で二つ――再放送一つを含む――、おそらく小学校低学年以下を対象年齢としているアニメ――男児向けと女児向けでそれぞれ一つずつ――、それと昭和のアニメ――テレビと配信で一つずつ。ついでに昭和の特撮もテレビで見ている。

 何故このような事態が起こっているのか――その原因は私の父と通っていた高校にある。


 私の父はオタクである。どのジャンルのオタクなのかと言うと、これも少し困惑する。アニメも好きだし、シャーロキアンだし、小説も読むし、外国語オタクだし、ミリオタだし、古いアニメや特撮の話めちゃくちゃしてくるし。絞れない。簡単に父の説明をすると、「生き字引」の一言に収束する。父は毎週新聞に掲載されるクロスワードパズルを解くのだが、そのときに検索できるツールを一切使わない。たまに分からないものがあるとすれば、大抵音楽や和歌、授業で言うと家庭科に関するものだったりする。そして、父と私ではまるっと四十歳くらい年が離れている。だから父の幼少期に放送されていたアニメが「〇周年記念!」的な感じで再放送されて、父が「懐かしい」とか言いながら見始めて、図らずも私がその沼にはまる――というのが割とある。

 次に、私が通っていた高校。ここは自称進学校かつオタクの巣窟だった。元々そういう風土があったのかどうかはよく分からないのだが、文化祭でコスプレ集団が舞い踊るような学校だった――きちんと実行委員会に認められている正式な組織の活動として。こういうのを見て県内のそこそこ勉強のできるオタク達がこぞって入ってくるのである。数年前に某女の子が変身して戦うアニメで初めて男の子が変身したときには、その翌日学校中で散発的に誰かがその話を始めるという怪奇現象が起こった――ちなみにうちの父はこの回をリアルタイムで見ていたそうな。基本的によほどでなければどのアニメの話をしても引かれなかった我が母校のオタク達、とてつもなく心が広いのではと思う。私なぞは一年生の頃、昼休みに友達とイヤホン半分こして乗り物が変形して戦うアニメを見ていたよ……。


 こういうわけなので、今年度はシーズン毎に深夜にやっているそこそこメジャーそうな、人に言っても問題なさそうなアニメを一つは録画して見ている。今期は珍しくそのカモフラージュ用に見始めた深夜アニメが非常に面白く、あの質問が飛んできた時にはこのアニメを躊躇いなく答えることにしている。

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