ゲームの話

 某家庭用ゲーム機が欲しい。

 固有名詞は出さないが、去年の自粛期間中にやたらと流行ったやつ(察してください)。


 高校時代を過ごした田舎を出て親と一緒に上京した(転勤族ゆえの特殊な事例)は良いものの、どこにも遊びに出られない。

 大学に友達はできたものの、家が遠すぎるし(首都圏あるある、東京の大学に通う学生が都民とは限らない)、事情があって大規模会場ではなく市民センターでの接種を希望しているのでワクチンもまだ打っていない。同じく上京してきた友達の家も遠い。サークルも全てオンライン。行きたかったイベントは親に止められて行けず。出会いがないので彼氏なんて夢のまた夢。バイトだけが只々そこにある。今ではバイトをするために外出しているのか、外出するためにバイトをしているのか、もうわかったものではない。

 しかし、人間というものは割と柔軟に出来ている。

 家でできる楽しいことを全てやり尽くそう――私は最終的にそこに至った。

 レポートを全て終わらせたあと、録画したアニメ視聴、動画視聴、春に三日坊主で放置した漢検の勉強、料理、お裁縫、小説作り、お絵描き――などなど。思いつくことは大方やった。

 そこで、ふとあるものを思い出した。某家庭用ゲーム機である。

 3DSなら自宅にある。小四の時のクリスマスプレゼントとして貰ったものだ。スマホどころかちゃんと友達と連絡が取れるケータイすら持っていなかった当時の私をはじめとする小学生にとって、3DSでの通信は大事なコミュニケーション手段だった――あくまで私の主観だが。しかしそれも、小六の冬休みに突然上の画面が点かなくなり、それ以降ずっと放置されている。当時大人気だったゲームソフト(村長になっていろいろするアレです)の自宅増築のローンを完済していなかったのが未だに心残りで、「大学受験が終わったら中古でもいいから3DSを買おう」と考えていた。

 だが、時代は変わってしまった。私の文明は3DS、頑張っても2DSやWii Uで止まっているのに対し、今ではいつの間にか発売されていた画面の大きい横長のゲーム機が席巻しているではないか。それどころか今の小学生の中にはDSを知らないという子すらいるという。

 これは、もう乗り換え時なのではないか――私は静かにスマホで某家庭用ゲーム機の定価を調べ始めた。税込で三万ちょい。そこに追加されるソフト代が定価で税込六千円以上、通販サイトで探しても五千円を下ることはない。大学生になって毎月のお小遣いがなくなり、その分をバイト代で賄っている人間にとってはお高い買い物だ。それに、買いたいものは某家庭用ゲーム機だけではない。秋になったら服も買わなくてはいけないし、サークルのための出費もある。今年は無理だが高校の友達にも会いに行きたいし、就活が始まるまでに免許も取りたい。つまり――結局保留。

 来月中旬からは後期が始まる。授業が再開されればまたレポートに追い回されることになるだろうし、学校側からは対面授業を増やすつもりだというアナウンスがあった。しかし、現実が大学に対してそう優しくないのも知っている。昨年度の話だが、小中高が対面授業を再開しても大学だけはオンライン授業を呼びかけられていた。政策への文句を言うつもりはないが、今年も大して変わらないのではないかと現状を見ながら思う。

 某家庭用ゲーム機はさておき、3DS(中古)は買おうと思う。相場は大体一万円といったところか。大きな傷や汚れがなく、きちんと動くものならなんでもいい。今度リサイクルショップで探してみよう。それで増築のローンを完済する。


 待ってろよ、た〇きち!

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