第14話 邂逅4

唖然とするアウスロ。


その視線の先にいるのは1機の騎甲兵。


天高く振り上げた騎甲兵用の長刀を下ろすと、見知らぬ騎甲兵は此方に振り向いた。


《無事か。 驚いてる所悪いが、今すぐここから離れるぞ。 奴らが接近してきてる》


騎甲兵の後ろから、何十人もの民間人が出てきた。


彼らが、アウスロ達の探していた難民だった。


「な、難民はそこにいるのが全てか!?」


アウスロが問うと騎甲兵は「そのようだ」と答える。


それを聞いた瞬間、アウスロは操縦席からフレアガンを取り出し空に向かって信号弾を放った。


放たれた信号弾は空で緑色に輝き、ゆっくりと落ちていく。


《何をした?》


「全ての難民の回収を完了した合図だ。 早く逃げるぞ!」


慌てた様子のアウスロに騎甲兵は脳裏に疑問符を浮かべた。


《急にどうした?》


操縦席から取り出した荷物を身に付けたアウスロは大声で全員に伝える。


「10分後に我が軍の砲撃が始まる!! ここは更地になるぞ!!」








西区から出る為の道である緩やかな坂道を、1機のエグゾスーツが駆け上がっていく。


その左手には、大勢の人を乗せた輸送トラックを担いでいる。


シャローやベルナデット、アウスロもその荷台の中にいた。


現在、既に3分が経過している。


中央区へはまだ時間がかかる。


残り7分で中央区へ辿り着かなければマリノフ達も砲撃の餌食となる。


上空では、既に弾着観測の為に出撃したのであろう複葉機が空を周回しながら待機していた。


「もう少し飛ばすぞ! 掴まってろ!」


フットペダルを更に踏み込み、走行スピードを上げていく。


カーボンナノチューブ製の人工筋肉がしなり、大地を蹴り上げる。


ジャイロスタビライザーを搭載したエグゾスーツとはいえ、担いだトラックは勿論激しく揺れた。


「おわぁっ!!」


「掴まれ!!」


振り落とされそうになったシャローの腕を、ベルナデットが掴んだ。


ベルナデットよりも小柄で体重の軽いシャローは容易く引き上げられ、荷台に戻される。


シャローを荷台にしがみつかせたベルナデットは、同じく振り落とされそうになっているアウスロの方を見る。


「貴様! そんな物早く捨てろ!!」


アウスロの手には、何やら六角柱型の見慣れない大きな容器のような物を左手に持っていた。


激しい振動で荷台に掴まっている右手の方は今にも離れてしまいそうである。


「捨てられるものか! これは騎甲士であるからには必ず……ぐぉっ!?」


振動で遂に右手が離れ、アウスロが放り出されそうになる。


しかし周りにいた難民達が辛うじて服を掴み、アウスロは間一髪で助かった。


「それ見た事か!! 早くそんなもの……」


「おい!! ま、前!!」


何事かと振り向いたベルナデット達の視界に映ったのは、行く手を塞ぐ中型種のファイターだった。


それだけじゃない。


周りに隠れていた小型種や他の中型種がこのエグゾスーツを半包囲していた。


エグゾスーツがその手に持っていた長刀を振り上げ、攻撃態勢を取る。


「ぶつかるぞぉぉ!!!」


そのまま、目の前のファイターと衝突するかと思われた時、



《撃てぇぇぇぇ!!!》





轟音と共に目の前のファイターが弾けた。


臓物が飛び散り、降りかかる。


「うわっ! きったねぇ!!」


降ってきた肉片を払い落とすシャロー。


「何が起きた!?」


ベルナデットが斃れたファイターの先に何かがいるのを見つけた。


何が起きたのか、1番早く気付いたのはマリノフだった。


ズームされたメインカメラの映像を見たマリノフは安堵の表情を浮かべる。


「間に合った、みたいだな」





そう呟くマリノフが見る先には、ライフル砲を構えた何機もの騎甲兵がいた。


《ここから先は我が隊がエスコートする! 中央区まであと僅かの辛抱だ!》





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