第12話 邂逅2

彼らが逃げ込んだ警察署の中は予想通り誰もいなかった。


「こりゃあ大慌てで逃げたな」


開け放たれたままの扉の中を覗きながら呟くシャロー。


椅子は薙ぎ倒され、床に落ちた物は蹴散らされて散乱している。


この荒れ具合からイーターの襲撃が如何に突然だったかが容易に想像できる。


オフィスやロッカールームを物色していると、2人の警官が更に奥へと向かっていく。


「着いて来い、お前の捜し物はこっちにある筈だ」


警官達の後を着いて行ったら先にあったのは、複数の鍵が備え付けられている扉だった。


しかし、本来ならば厳重に施錠されているはずのその扉でさえも今は開け放たれたままになっている。


マリノフがその中へ入ると、また2つの開けたままの扉があった。


「戸締りをする暇も無かったのか」


手前側にあったのは、武器庫の扉。


中に入ると、電気が点いておらず真っ暗だった。


ここにいた者達が大急ぎで持っていったのか使えそうな大きな棚には武器の類はパッと見では見当たらない。


弾薬ぐらいなら置いて行ってるかもしれないと奥へと行くが電気が点いていないので何があるかも分からない。


「どこかにスイッチは……これか!」


警官がスイッチを見つけ、部屋の電気を点けた。


天井の電球に照らされ、顕になったのは金属製のロッカー。


これも既に開いており、中身は殆ど持ち去られているが、その中にはまだ弾薬が箱単位でまだ残っていた。


ロッカーから自分の銃の弾を取り出す警官達。


マリノフも物色を始める。


「これが……20ゲージ、それもスラッグか?」


それらしき厚紙製の小箱を幾つか見つけ、開けて中身を見ると中には確かに20ゲージのスラッグ弾が入っているのが分かった。


イーターを相手にするならバックショットよりこっちの方が良い。


「こりゃいい」


ポーチを開け、中にスラッグ弾を流し込む。


パンパンになったポーチを背負い直し、ふとベルナデットの方を見た。


そこには小箱を片手に悩むベルナデットの姿があった。


「どうした」


「いや、こういう所で技術の違いが仇になるのだな、と」


ベルナデットが手に持っていたのは8×25mmと書かれた拳銃弾の小箱だった。


彼女の持っている短機関銃の弾種は6.5×30mmであり、8mmなどそもそも使うことの出来ない弾だ。


「そうか、規格も違うだろうからな。 そうなるか」


拳銃弾の小箱を見ながら関心していたマリノフだったが、今更ながらある事に気が付いた。




「……いや待て、今更だがなんでこの惑星で地球のが使われてるんだ……?」


「随分と今更だな……」


今気付いたのか、と溜息をつきながらベルナデットはロッカーを閉める。


「理由は分からん。 しかもそれを言ったら現地住民とで意思疎通できることもおかしいだろう」


「確かに……今までずっと気にしてなかったな……」


気になったマリノフは、短機関銃のマガジンに弾を込めている警官に聞いてみることにした。


「なぁ、リドミア帝国の公用語って何なんだ」


そう聞くと、警官2人は訝しげな表情をした。


「何言ってんだ、公用語なら今だってお前が喋ってるじゃないか。 をな」


「エグルス……語?」


互いに話が噛み合わず、警官達とマリノフは困惑した。


「まぁ、兎に角準備ができたなら出発しよう」


散弾銃を携え、立ち上がったマリノフは武器庫の外に出る。


「その扉が騎甲兵の格納庫だ。 外から扉が閉まってるのが見えたから魔獣はいないと思うぞ」


警官の言葉を聞き、マリノフは扉の先へと行く。


「難民達も直ぐ出られるようにしておいてくれ。 安全が確保出来たら俺が合図を出す」


「分かった」


そう言ってマリノフは格納庫の中に消えていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る