第11話 邂逅

ターブリール要塞都市西区。


中央区へと続く大通りに銃声が響く。


散発的な銃声、そして夥しい数の足音。


マリノフは何十人もの人々を率いて走っていた。


彼らは偶然にも同じく西区から脱出しようとしていた難民達と合流し、現在共に逃げているのだ。


勿論、それにイーターが気付かない筈も無い。


四方八方から襲い来るイーターをたった数人で撃退しながら進んでいる。


しかし、現在の彼らの目標は中央区ではなかった。


「俺の機体がこの先にあるってのは本当だろうな!?」


「間違いねぇ!! つい数時間前に運ばれてきたのを見たばかりだ!!」


答えるのは難民達の中にいた警官。


彼曰く、マリノフのエグゾスーツは押収された後この先にある大きな警察署に保管されているとのことだ。


そしてその警察署もそこまで離れた距離には無い。


走って行けば直ぐに着く距離にある。


何の障害も無ければ、の話だが。


「にしても数が多いな!!」


家屋の影や屋根、路地裏から飛び出して来る無数のファイター。


迎え撃つことができるのは僅か5人。


「警官!! 後ろだ!!」


「虫ケラが!!」


マリノフと散弾銃と短機関銃で武装した警官3人、そして──


「ベルナデット!! 屋根の上のクソ野郎を撃ち落とせ!!」



「ベルナデット・コヴァレンコ」。


東欧連合国軍所属にして階級は少尉である。


所属する部隊は違えど、2人にとってはこの世界にに於ける唯一の同志だった。


「行け!! 行け!! 早く!!」


武器を持たず、戦えない難民達を先に進ませ、後方から追ってくるファイターを足止めする。


ポーチの中のショットシェルの数も段々少なくなって来ている。


この状態ではいつまでもつのかも分からない。


家屋の壁を這っているファイターに向けて発砲する。


脚が数本弾け飛び、体液を散らしながらファイターが落下した。


続けざまに後方から走って来たファイターの顔面を撃つ。


しかし、そのファイターの死体を踏み越えて更に倍以上が襲いかかってくる。


「ベルナデット、マガジンあと幾つだ!!」


「あと4本だ!!」


もう弾が尽きかけて来た頃、漸く警察署が見えた。


周りにファイターもおらず、入る事はできそうだ。


「もう構ってられるか!! 中に逃げ込むぞ!!」


非武装の難民を先頭に、次々と警察署の中へ逃げ込んでいく。


ベルナデットとマリノフは逃げ込めたが、警官の内の1人がファイターに捕まった。


「わああああああぁぁぁ!!」


組み敷かれ、パニックになる警官。


それを助けようと外に出ようとしたもう1人の警官をマリノフが止めた。


「もう駄目だ! 助からん!!」


「あぁああぁあ!! 痛ぇよぉぉおおお!! 助けてぇぇぇぇえ!! 」


ファイターに取り囲まれた警官は体のあちこちに噛み付かれ、筋肉ごと肉を食いちぎられていく。


腹は食い破られ、腸が引きずり出される。


それでも尚彼は死ぬ事ができず、ただひたすらに叫び続ける。


言葉にもならない叫び声を上げていた彼は、もう既に腰から下を持ってかれていた。


「奴らの気を引いてる今の内に扉を封鎖するぞ」


警官を中に戻すと体の肉を少しずつ食いちぎられていく彼の叫びを無視しマリノフも中に入り扉を閉めた。











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