第13話
……みんな元気にしているかな。
一番下の子はよく夜泣きをしていたから、私がいなくて最初は寂しがったかもしれないが、お世話係の人が来てくれるようだし、報酬で家計も潤ったから以前よりよっぽど幸せに暮らせているだろう。
忘れられていたらちょっと寂しいけれど、毎日食べられて健康に過ごしているならなんでもいいか……。
熱でうつらうつらしていると、ごそごそと布団を揺すられた気がして、そこにある手を掴んだ。
これは……弟の手かな。嫌なことがあると私の布団に潜り込んで時々泣いていたから、今日もなにかあったのかもしれない。
「うーん……どした?お姉ちゃんとこ来る?」
えっ、という声が聞こえたような気がしたが、ぐいと両手を引っ張って布団に入れてやる。
「ねんねしな……。お姉ちゃんがだっこしててあげるから……」
お姉ちゃん?と呼びかける声が何度か聞こえたが、その都度『うん……うん……大丈夫だよ……』といつも通り適当に相槌を打っていると、何となく嬉しそうな声が聞こえてきた気がした。
弟が寝付くまで起きていてやりたかったが、熱のせいで瞼を開けるのもしんどくて、気付けば相槌を打つ余裕もなく私は意識を失うように眠ってしまった。
***
朝の光を瞼の裏に感じてゆっくりと目を開けてみると、昨日とは打って変わってすごく頭がすっきりしていた。
こんなふかふかのベッドで寝るのが初めてだったから、泥のように眠って超回復したみたい。お高いベッドすごい。
久しぶりに家族の夢とか見て、気分のいい目覚めだった。
寝汗かいたし、着替えるか~と思って起き上がろうとすると、両腕が上がらない。
ん?と不思議に思って首だけあげてみると、なんと両脇に例の双子がすやすやと挟まって寝ていた。
「んんん?」
なんで双子が一緒に寝てるのカナー???
疑問いっぱいで硬直していると、双子がパチッと目を開けて二人して私を見上げてにっこり笑った。
「お姉ちゃんおはよう」
「お姉ちゃん元気になった?」
「お、おはようございます……?あの、なぜお二人は、ここで寝ているのかな……?」
「ええ~!?何言ってるの?お姉ちゃんが一緒に寝ようって言ったんでしょお!」
「全然放してくれなくて、ぎゅうぎゅう抱きしめてくるからさぁ、僕らも寝かしつけられちゃったよ!」
おぅ……マジか……。多分寝ぼけて弟と間違えたわ。寄りにもよって、大嫌いな聖女様に抱きしめられるとか屈辱だったろうに。申し訳ない。
「あー、それはごめん。ちょっと具合悪くてぼんやりしていたもんだから……」
「うん、いいよ。元はと言えば僕らがお姉ちゃんに怪我させちゃったからだもんね」
「僕らすごく反省したんだ。もうあんなことしない。だから許してくれる?」
二人はうるうるした目で見上げてくる。あ、あざとい……。妹もよく怒られそうな時こういう手を使っていたが、分かっていても許しちゃうんだよねえ……。
「いや、もう怪我のことはいいから、ひとまず部屋出ていってくれる?昨日そのまま寝ちゃったから、着替えたいんだよ」
「じゃあお風呂準備してあげるよ。お湯入りたいでしょ?」
「まだふらふらしているから、僕らが洗ってあげるよ」
「お風呂……は入りたいけど、一緒には入らないよ?」
昨日まで殺意満々だったのに一緒に風呂入る?あり得ないでしょ。水没させられる予感しかしない。
「えー!だって昨日、僕らのお姉ちゃんになってくれるって言ったじゃん!」
「お姉ちゃんができたって僕らすっごく嬉しかったのに!嘘だったの?」
「はい?お姉ちゃんになる?えっと、私が君らの?」
どうやら寝ぼけながら適当に相槌を打っていた時にそんな話になっていたらしい。
おう……。昨日の私……人の話はちゃんと聞こう。
なにがどうしてそういう話になるのか皆目見当もつかないが、昨日まであれだけ敵意むき出しだった双子と和解できたのは良かったかもしれない。
旅の間、ずっとギクシャクしていたらしんどいからね。
ん?でも、旅が終わって本物とまた入れ替わったらおかしなことになるんじゃないかな?
最後に司祭様がネタバレでもするのかしら?
一晩で突然友好的なった双子と、風呂に入る入らないと揉めていると、司祭様と騎士団長さんが部屋に入ってきた。
「ファリル!ウィル!いないと思ったらこんなところに!」
「まさか昨晩から聖女様のところにいたのか?!」
双子は暴れて抵抗したが、二人にとっ捕まって外に連れ出されていった。
この日を境に、なぜか双子は私に超友好的になり、おはようからおやすみまでとにかくベッタリくっついて離れなくなった。なんなん?
***
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