第50話
おはよう、暖かい白米は上手いのう~~~。
久しぶりじゃいつも生ぬるいご飯であったからのう。
こんなに美味かったのか日本人が銀シャリに固執する訳じゃ。
なに?いつもの毒見をスルーしてどうして炊き立てのご飯が食えたのかって?
実は今朝おきたら早すぎて周りの者が誰も起きておらんかったのじゃ。
それで腹も減ったしということで城内をふらふら探検しとったらここを見つけての~台所である。
これはチャンス!熱々のご飯が食えるぞよ~~
久しぶりじゃ元のお拾いなんぞ食ったことがないぞ。
そこにおった若い台所の下働きらしき若い女子に声かける。
「お女中、腹がへったので朝飯を食べさせてもらえぬかのう?」
「え?どなた様ですかのう?」
「おう、これはすまぬ客の秀頼じゃ見知りおくがよい」
「ひぃ~~へへ~~」
土間で土下座する娘、台所で働いておった十数名の下働きのおなご達も駆け寄ってきて土下座する。
むう、困った。邪魔であったのう。
じゃが全身が熱々のメシを欲して動こうとせん。コレはごり押しするしかなかろう。
「すまぬが朝飯をくれい、熱々のをのう」
「も、申し訳ございませんかまどに火がはいっておりません。後ほどお部屋にお持ちいたしますのでおへやでお待ちを」
何を言う、それではいつもの生ぬる飯ではないか。
「いや、予は今日はここで出来たてを食べたい、頼むぞ」
「へ、へ~~~」
「みんな、急ぐバイ!」
女中頭の号令一下、土間に散らばり仕事を再開する。
野菜を洗うもの、何かを刻むもの、かまどに火をつけるもの。
予は土間のかまちに腰掛けてその景色を眺めておる。
かまどの火は火打ち石でつけるのかと思ったらさにあらず、おこり火が中に残っておりすぐ着いた。
すぐに薪は燃え盛り準備が整い、釜が乗せられる。
後は待つのみ。この時代、みな待つのは得意じゃ。
予もそうである。思えば前世では待たず、いつもイライラしとった。
今がよいよい……
そうこうしておる内に責任者らしき侍が側に来たが、手で制して黙らせる。
はじめちょろちょろなかぱっぱあかごなくともふたとるな。
おばあちゃんの教えである。この時代にふさわしい。
電気炊飯器ではわけわからんが、中ではコレをこんぴゅうた君がやっておるそうじゃ。
まあ、意味がわからん奴はいないと思うが念のため。つまり、弱火、中火ときて、、最後に蒸らし
という意味じゃないかな、アレ合ってるのかな?まあ、どうでもい…
「ぷしゅ~~」
おお、吹いたゾもう少しじゃ、ハハハ待ちおしいぞよ。
待つ、待つ、待つ。
出来た!予の前に朝飯が届けられる。
熱々のご飯、あご(とびうお)の干物、高菜らしき漬物。汁物はない。
質素じゃがうまそうじゃ。
さてさて~~~
「お毒見つかまつる」
横から先ほどの侍が飯に手を伸ばす。
「ええい下郎!予の飯に触る出ない!」
「へへ~~~」
まわりのものが全て止まりその場で土下座する。
しまった、いつにない怒号が出てしまったわ。戦場(いくさば)で鍛えておるで大きいからのう。
とにかく今のうちに食おう。誰かきたらとりあげられそうじゃ。
「いただくぞよ」
食う、食う、食う!!!
「うまい~~~~」
みなの顔が綻び、うれしそうじゃ。
フリーズが解けて台所が忙しく動き始める。予もゆっくりと楽しみながら朝飯を食う。
「お拾い様、うまいですか!」
怒りのこもった声、こ、これはもしや。
振りかえれば。
「心配いたしましたぞ、護衛を置いていかれるなぞ天下人として失格でござる」
うわ、怒ってるよ棄丸。
「ああ、すまんすまん。じゃがおぬし熟睡しておったで、疲れておるのだろうと思い起こすにしのびなかったんじゃ」
「う……左様でござるか、拙者不覚でござった申しわけござらん」
「お主も飯を食え、美味いぞほれ予なんか三倍も食って御ひつが空っぽじゃ。しかし少ないなこの御ひ
つ。これこれお女中、すまぬがこれなるわが家来にも朝飯を頼むぞ」
「も、申し訳ござりません。あとはおかゆしかございません。いま、家中の分を作っております」
「なに?」
見れば大きなへっついの上で煮えたぎっておるのは汁物ではなく、おかゆか……
「立花の食い物はいかほどこの城に残っておるのじゃ?」
「お粥にして三日ほどでございましたが、人が増えましたのであとどのくらいか……」
「……我らのせいか、すまぬのう……」
「いえ……」
しおしおと部屋に帰る我ら主従。
「いかがしたらよいものか、ゲップ」
「さようでござるな、グー」
予は腹いっぱいで眠く、棄丸は腹すきすぎてまともに頭が働かん。
で、以下のようなとんでもない案が浮上してしかも本気でした。
それはみんなが引くだろうな~~~
とにかく食えるものを早急に集めるという話になった。
有明海の魚とか、何百人分の魚を取るんだ、金あるし漁師から買うか?囲まれてるから少しは夜陰に乗じて運び込めるが、大きな得物ではなくては足りん。で、色々考えてたが……
「仕方なし、鍋島を食おう」
「……え?鍋島の食料をうばうので?」
「無理じゃ。それより見張り等、四、五人を引っさらうほうが簡単じゃ」
「ま、まさかそれを食うと!!!」
「その通り」
「しょ、正気でござるか!たとえそれで助かっても天下に人非人とそしられますぞ」
「城のもの全員に食わせる。食わぬものは殺す。もちろん立花一族も予もじゃ。一番に予が食おう」
「ま、まことでござるか?」
「二番目は主じゃ、棄丸」
「う~~む」
「どうするどうする、食うか、切腹か?ソレソレ」
「うむうむうむ」
ははは、悩んでるよこいつ。おもしれ~~
しかし予も食えるかな?まあ、飢え死によりましだろ、吐くかも……
「聞くところによると、豚肉の味に似てると言うぞ、少し生臭いとも言う」
「ぐわ~~やめてくだされ、想像するとこみ上げてきますぞ。大体豚肉なんぞ拙者食ったことがござらん。浄土宗の信者でござるぞ、仏に怒られまするぞ」
「どうせ、おぬしも予も沢山の殺生を繰り返してきた身、来世の地獄が大地獄になるのみぞ。天下統一の後は二人して仏門にはいるぞ」
「……は、わかり申した。お供つかまつる」
「それでこそ予の守護神じゃ」
「……… ………」
「秀頼様!ごちゅうしん、ごちゅうしん~~~~」
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