第44話

 海水をぶっかけられて目を覚ましたアダムス、よほど怖かったのかベラベラ喋りおったわ。


 ただ命乞いが間にはさまるため、話が長いし、聞きづらいし、カタコトである。面倒くさい!


 で、以下に要約~~~


 本国イギリスに帰りたいが、難破あがりで日本にたどり着いたため、金が無く、船もない。


 家康の対外的な手伝いをし、機嫌をとり、援助を懇願する日々であった。

 

 うまくいかず平戸にてくすぶっておった。あきらめて嫁ももらった。


 ところが先日家康より知らせがあった。近々そちらを「豊臣秀頼」を乗せた船が通りかかるであろう。その船を捕らえるか、最悪殺すかすればお前の帰国を認めるし、船も援助してやろう。ついてはいくらお金が掛かってもよいのですぐ実行するようにと。


直ちに平戸のポルトガル関係者に話をつけて船を借り受け、船員も集められるだけ集めて予を待ち伏せして居った。 


 まさかこんなに強いとは、倭寇の親玉だったとは、全くの誤算である。


 かくなる上はあなたに臣従しますのでよろしく。




 などと、どこまで予をなめて居るのじゃ、この毛唐は~~~~~


 普通は全員死罪であろう、作戦中とて人手も時間もない。ここでは人も船もすべて始末して先を急ぐのが正しいであろうのう。


 じゃが......西洋船がおしい!!!そして動かすための毛唐も欲しい!!!


 しかし、こちらは先ほどの戦闘での負傷者を除くと戦えるのは100人割ったわ、無理じゃぁこの人数で

捕虜を連れていくのはのう、どうしたもんか?うーむ。


 「これ、棄丸、今後どうしたもんかのう?」


 「考えるまでもござらん、先を急ぎます。すべて処分でござる、人も船も。のう、孫一どの」


 「さようさよう」


 やはりか、さすれば仕方なし。


 「ならばよきに計らえ」


 「は」


 「承知つかまつる」


 予は見たくないので後ろを向き、海をながめる。


 よい天気じゃ、たくさんの小島がみえるのう。この海岸は小島が連なっており風光明媚じゃ良きか

な良きかな。


 予は後ろから聞こえてくる怒号、悲鳴、海にたたきここむ水音を聞かないよう努めて居った。


 それにしても、この船を沈めるのはおしい、おしい、おしい~~~、やっぱとっとこ、保存しとこ、

そうじゃあの小島に隠しとけばいいではないか、操作法のマニュアル付きで。


 くるりと振り返ればそこは阿鼻叫喚、足と手を縛られて身動きできなくなった毛唐たちが芋虫のよう

にならべられ、わが秀頼隊のものどもが暴れるそのものを無表情に、淡々と、一つ一つ海に放り込んで

いく。


 「いちにのさん!」


 「マイゴット!!!ゴット!!!」

 

 わめきながら海に落とされ、しばらくは海面で動いておるが、すぐに静かになるおぼれたのであろ

う。

 あちこちに死体がプカリプカリ、ひ、悲惨よのう......


 よかった、まだあいつは残っておるな。


 「まて、アダムスは捨てるな、ちょっと用がある。後は良いぞ」


 「は」


 予は再び遠くの小島を見つめて現実逃避を再開する。コナミちゃん元気にしてるかな?今度会ったら

こんなことしてあんなことして遊ぼう、ふふふ...いや神社参りや、貝会わせのことだよ!!!



 まだまだそんなことが楽しいお年頃の予です、ははは。


 「お拾いさま、終わりましてござる」


 棄丸の声に振り返るといや~船上すっきりしましたな、アダムス一名を残して後は秀頼隊のわが良き

もの達のみである。

 

 良きかな良きかな、どうやら予は結構人見知りかな~~知らぬ毛唐たちがイヤだったみたい。


 気分爽快になったぞ、あの様なことがあったというに予も適応したもんじゃのう戦国に、ははは。


 「アダムス」


 「イイェッサー。タスケテクダサイ!」


 「おぬし、今生きて居るではないか、今後も生きたければ罪を償え」


 「ハ、ハイナンデモシマス。ワタシフナダイクデス。フネツクレマス、ウゴカセマス。ワタシトッテ

モヤクニタチマス」


 「うむ、その言葉忘れるな、裏切れば地獄が待って居るぞ、しかもキリスト教のではなく、わが国の地獄がのう」


 「ハハイ~~」




 予は孫一にこの小島群のどれかにこの西洋船を隠すように指示。その際、アダムスを縛り付けて船上

に放置するように命じる。


 食料をそばに置いとけば2~3日は大丈夫であろう。その間に立花と話をつけて回収に来ることにした。




 いや~、思わぬ時がたってしまった今晩は小島にて一泊である。


 西洋船に積んであった食料を分捕って今夜は試食会じゃ。


 まずはビスケット。現代の甘いやつと違ってこりゃ堅パンだな石みたいに堅い。しかもなんか穴あい

てるぞ?なんだこりゃ、まるで虫がくったみたいって、食ってるではないか!ガインガインと板縁にた

たきつけると中から芋虫見たいのがにょろにょろとき、気持ち悪い予は食べれんわ皆に下げ渡す。

 保存食に良いと皆自分の手荷物に何枚かずつしまっている。その前にガインガインと叩き付けて虫を追い出す。

 

 次に塩漬けの豚じゃ。ハムみたいなもんか、切って食ったら塩辛いったらありゃしない。食えんぞこ

りゃ、アダムスに聞いたらスープにするとのことレシピを知ってるものは現在海の中にいるとのこと、

なるほど。

 とりあえず味噌汁のなかにたたき込む。うん、ちょっと辛いが結構いけるではないか!魚に飽き飽きして居ったのでちょとうれしい。


 まあ、このようにして一夜は明け、船上にアダムスを厳重に縛り付け、2~3日分の食料を置き有明

海、ひいては柳川の立花に向かって出発する。


 やれやれやっと明日は到着できるかのう疲れたわ。


 城にてたっぷり寝るぞ~~


 とその時は思っていたんじゃが.........






 長崎半島を過ぎ、島原湾を通り、ようよう有明海に到達した、長かった!!!


 こんなに苦労するなら、博多で上陸して荷駄を組み、陸路を行った方が断然早いな、よくわかったわ、次回はそうしよう。とにかく柳川は目の前じゃ。クジラ丸の前に陸地が広がっておる。


 よし、川をさかのぼるぞ、確か沖端川という川の側に柳川城はあるんだったな。


 「これ、沖端川というのはどれじゃ?そこをさかのぼれい」


 「は、あれかと」

  

 孫一、目の前を指さす。そこには確かに結構おおきな河口がひろがっている。


 「なぜわかる、この付近、筑後川や矢部川などの大河があるぞ」


 「大きさがまあ、そこそこでござるし、流れが遅そうでござる。それとカン」


 うむ、いい加減なやつめ、だがこいつカンは優れて居るし、まあ、間違えたらやり直せばいいだけのこと、さかのぼってみるか?


  「ならばよし。のりこめい!!!」


  「はっ、安定板上げよ、帆をおろせ~~~」


   クジラ丸の船上は大忙し、大帆がろくろで巻き取られ、両側の安定版が上げられる。

   

   予を除き、全員が櫓を持つ。


  「こぎ方はじめ!!!」


  「いちに、いちに」


  号令とともにクジラ丸はその巨体をゆっくりと川口に突っ込んでいく。


  川の中で、流れに逆らい、クジラ丸はじりじりと座礁せぬよう川の真ん中を進んでいく。


  いくら平底の和船とはいえ、巨体じゃ。力がいるぞ。みな、すぐにヒイハア言い始めた。


 「もうすぐじゃ、がんばれ、秀頼隊!!!」

 

 「お、お~~」


 声も幾分元気なし、きつそうじゃ。ああ指揮者で良かった、子供でよかったと思う予であった。


 ん?なんか聞こえるぞ、あれは法螺のではないか!


 「ブォ~~」


 「ダダーン」


 お、鉄砲の音、それにかすかに歓声も聞こえる。


 「いくさがあっておる様じゃ、皆のもの気を引き締めて漕げい!!!」


 「おう!!!」


 先ほどとは打って変わり、精悍な声を上げて漕ぎ続ける秀頼隊。


 「あれは!!!」

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