第40話
右に下関、左に門司を見ながらクジラ丸は快適に帆走しておる。
そう、ここは関門海峡。
長かった瀬戸内海の旅も終わり九州に入ろうとしており、ここからは玄海灘である。今までのような穏やかな内海ではなく波も荒々しい外海である。ここ玄界灘で捕れた魚はおいしい、それはなぜか?海が荒く、お魚さんたちはは必死に泳いでいる。で、身が引き締まり美味しい……て、ほんとかね?
うわわ、揺れる揺れるくじら丸が~~~
まるで、今から潜水しますよ~~~と言わんばかりに上下左右に揺れはじめよった。
う、うぷ、ぷぷぷ……
予、久しぶりに船酔いが再発しそう。
はい、はい、確かに荒いです波大きいです。わかりましたから何とかして!
皆を眺めておると平気な顔をしておる。だ、だれも酔っておらん予ひとりかぁ~~~
「まご~~。こ、この揺れ何とかしてくれい!!!予は耐えられん!!!」
「は?大したことござらんが、こんなもんでござるよちっとも海は荒れておりもうさん。これを何とかせいと言われても船を岸に着けて陸を行くしかないでござろう。
幸い九州の先っぽには到達しとります。目的の博多まではいま少しありますが、ここ門司に上陸して秀頼様は博多まで歩いていかれまするか?」
「なにをゆうとる。博多では目的地の筑後、柳川まではまだ遠い。
筑前、筑後をのんびり歩いておっては危険じゃ敵方がうろうろしとるわ。
このあと平戸、長崎を通り抜け、ぐるっと回って有明の海に入り、筑後川そばの柳川城に入る。まだまだ船旅は長いぞよ」
「エエ~~ッ。は、博多ではござらんのか???拙者、すっかり目的地はそこだと思っておりもうした。博多なら、わが雑賀党の貿易で若きおり何度か行ったことがあり申す。あそこの女郎衆は良いですぞ。ぜひ今回も行かねばと思うとりましたのに」
「主は会合のおり何をきいとった!詳しく説明したではないか!寝とったのか?」
「然り」
皮肉が通じらん……阿呆じゃこいつはぁ~と呆れとったら船酔いを忘れとったわ、これは良い。
「まご、でかした!おぬしの阿呆で船酔いが直ったぞよ、あっぱれあっぱれ」
「は???」
ついでにくじら丸には安定版がついとったことも思い出し、両側からひれの様な板を下ろす。
船はぐっと安定しまっすぐ走行し始めた。揺れもかなり軽減されこれなら外海でもなんとか帆走できそうである。まあ、運動性に関しては細かい帆の操作ができる西洋帆船や唐船にはかなわんが。
そうそう唐船は予はジャンク船と覚えておったがあれは白人が蔑称しつけた言葉らしい。外食の軽食をジャンク食というがごとく。中国人が日本人を倭人と言ってるのと同じだのう。まあ、どーでも良いが(これが日本人の考えか?)
本題にはいろう。誤解があるようじゃから皆を集めてもう一度話をすることにした。
「え~、大抵のものは知っていると思うが、わが秀頼遠征隊の目的地は九州は筑後にある柳川である。その柳川上の城主である立花宗茂を頼る。かの者は律儀、かつ勇猛果敢な武士である。共に立ち九州の加藤清正、黒田如水あたりを引っ張り込んで九州の大名を従える…と、いう予定である」
「前も言いましたが、立花殿が立ってくれましょうか?」
「絶対大丈夫である。それに関しては任せい!」
「は!」
いや、前世で立花さんは徳川と戦うことを主張したんだよな、そして豊臣に準じて戦い、その後浪人している。それをその高潔さ、勇猛さを惜しんだ家康が再び召し使えたんだよ。その後の活躍により再び大名になれたんだよ。頼るにぴったりの人だよ。しかも故郷に近い人だし。
目的の半分は故郷、筑後に帰るということなんだからね、予はホームシックである。
まあ、そういうことで敵方にこちらの情報が漏れるのが怖いんで博多は素通りである。
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ここは平戸、外国船が多く出入りしてる港のひとつに停泊しておる、昨日停泊して、一夜をすごしたのじゃ。
港に打ち寄せる魚の死がい、海草、船から棄てられた人の排泄物や食べかすが潮にまじって独特なにおいを放っておる。ゴミが多く散らばり多くのかもめやウミネコがえさを求めて乱舞しておる。
西洋船は今は見当たらんが、和船は千石船が5~6隻停泊しておる。
その中を朝靄をついて出発するくじら丸、櫂走にて静々と沖まで向かう。
そして……大帆をはって帆走を開始する。すべるように走るくじら丸、快適じゃ~~~
「うーみは広いな大きいな~~♪行ってみたいなよそのく~に~♪」
「おお、いい歌ですな、うたいまするぞ! うーみーは広いなおおきいなア~~♪」
孫一が歌うと皆が合唱する。このフレーズばっかり延々と。
うざいわ~~~~
「船が見えまする~~」
見張りのものから知らされてあわてて前を見ると、水平線から帆が見えてきた。
だんだん全貌が見えてきた。沢山の帆が見える三本マストの外国船じゃ。
どれどれどこの国の船かのう?あの国旗は……
うわ、けっこうボロボロの船じゃのう。くじら丸より大きいが嵐にでも遭ったのか帆はところどころ穴が開き、船体はつぎはぎがしてある。船足も遅いようじゃ。
「いかがいたしますか?大きく避けてすれ違いますか?接近いたしますか?」
孫一が今までとうって変わり、精悍な顔で聞いてくる。
「うむ……そうじゃな……とりあえず接近してすれ違いつつ、相手を観察。こちらに敵意がないことを示しつつ何か得るものがないか見てみよう。うまくいけば援助して味方につけようぞ、金なら船底にあるからのう、ふ、ははは」
「は、承知!」
直ちに全員武装、接近戦有利の火炎弾を多く準備してちかずいていく。
「お~~い。お~~い」
何人もの兵たちが船べりに立ちにこやかに笑いながら手を振る。
大帆をつなぐ綱にはいくつもの豊臣の旗印『桐』そして千成瓢箪が朝日にひかる。
二十メートル離れてですれ違おうとする両者。相手を右に見てすれちがおうとしておる。
うむ、結構おおきいのう、船側には六門」の砲門が開いておるのう。
ん?砲門?????
「孫一!おもかじじゃ!!!逃げるのじゃ!!!砲門が開いておる撃たれるぞ!!!」
「え?あ、は!船頭おもかじぃ~~~逃げろ!離れろ~~~」
あわてて船上をバタバタと走り回り、左に舵をとり、西洋船から離れようとするくじら丸。
「どーーーん」
白煙が西洋船の側面から六つ上がる。
「ガガーーン」
「ガシャーン」
「うわーーー」
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