待ち合わせ場所、通り過ぎる女

夕方、女の子との待ち合わせ場所につく。

まだ女の子は来ていない。

本当に来るのかな。

コンビニの前の信号のところ。

何でこんな場所なの。

ここにこうして立っていると、

すこしばかり間が抜けている感じ。

人がつぎつぎと流れていく。

そう、あきらかにぼくはこの人たちのジャマになっている。

しかたなくぼくはコンビニのほうに移動する。

そして時計を見る。

約束の時間を二十分ぐらい過ぎている。

電話してみようか。

でもさっき電話した時は通じなかった。

場所が違うのかな。

人がたくさんいるし、

どっかにまぎれちゃってるのかな。

ケータイを取り出してみる。着信はない。

やっぱり電話してみよう。

そう思ったときぼくは誰かの視線を感じた。

誰かがぼくを見ている。ナツミだ。

ぼくのほうに向かって歩いてくる。

目と目が合う。

でも、ただそれだけ。

ナツミは視線をそらしてぼくの前を足早に通り過ぎていく。

「おまたせ」ぼくの後ろから声がする。

ナツミがまた一瞬だけぼくのほうを見た。

「知ってる人」

「まあね」

「そう」

「どうする」

「居酒屋でいいよ」

信号の向こうに大きな居酒屋の看板が見える。

ぼくは信号のほうへ歩きはじめた。

「そっちじゃないよ」

そう言って女の子はぼくの手をひっぱっていく。

「知ってる店あるの」

「うん」女の子が明るく答える。

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