朝の会話

朝起きると、電話の女の子からメールが入っていた。

すぐにメールを返す。

《寝ちゃった、ゴメン》

「何回も電話したんだよ」

女の子からすぐ電話が入る。

「ごめんね。音楽聴いてたら気持ちよくなっちゃって、

いつの間にか寝てた」

「一人だった」

「一人だったよ」

「本当」

「本当だよ。そっちはどうなの」

「一人に決まってんじゃん。

ずっと眠れなくて、一人でさびしかったよ」

そうか、まだぼくは彼女に

ジョアン・ジルベルトを教えていない。

つぶやくような声が眠気を誘う。

ぼくはふと考える。

ゆうべぼくが思い出した感覚って、

ナツミじゃなくてこの女の子のほうだったかな。

この女の子の感触もまだよく覚えていない。

「ねえ、おなかすいた。ごはんおごって」

「いいよ。この前のところに行けばいいの」

「今はいいの。夕方でいい」

「でもさ、今お腹すいてるんじゃないの」

「いいよ。がまんする」

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