その20 Welcome Japan!

 3クール目の化学療法が終わった頃。

 大体4月ですね。

 嬉しいことがありました。


 ついに!ついに歩くコツをつかみました。

 「股の筋肉を伸ばすような感じで」と何度もいわれていたのですが、自分では伸ばしているつもりで、どうにもうまくいかなかったです。

 えーい!と義足側を踏ん張り、ぐいっと股の筋肉を伸ばして一歩前へ。

 それの繰り返し。

 リハの先生が「それや!」と喜んでくださいました。

 要領が分かると後は簡単。同じ要領で何度も往復。


 試しに平行棒の間でなく、杖を使って歩くことに。

 リハビリに使っていた杖はロフストランドクラッチというタイプです。


 両手用に2本買いました。

 杖で歩くとなるとちょっと緊張。

 平行棒と違って掴まっているものが動くからです。

 何度か歩いてみて、帰りは病棟まで車椅子ではなく杖で戻ることになりました。

 久しぶりに杖で歩く病棟は変な感じ。 

 天井がやけに低く感じました。

 この杖は現在も愛用しています。

 ちょっと遠いところにいくときや、長く歩くことが予測されるときに使っています。

 この杖、2つの役割があります。

 1つは本来の目的の歩行の補助。もうひとつは「足が悪いです」という目印。 

 急に後ろから自転車で煽られても動けません。

 混雑の道の中、もうしわけないけれども早くは歩けません。

 そういう目印。


 リハビリ以外にも個人的に練習したいところですがそれはダメ。

 万が一の事故(転倒など)すると大変だからです。

 車椅子とはもうしばらくのお付き合いかな。

 最初は車椅子では昇れなかったスロープも余裕でいけるようになったけれど、私の本来の目的は車椅子を自在に操ることではない。

 歩くことが目的です。

 それがちょっと見えてきた日でした。


 もうひとつ嬉しかったのがアメリカから特別ゲストがきてくださったこと。

 私のために来たわけじゃないですよ(笑)

 9話で書いたとおり、私は「クラブハウス」というところに所属しています。

 クラブハウスはアメリカ発祥。

 そのアメリカの一番初めにできたクラブハウス、つまり初代クラブハウスの責任のある立場の方が来日されたのです。


 日本のクラブハウスをいくつか周られ、私の所属しているところにも。

 その件は電話で聞いていました。

 こられると聞いて、とてもとてもお会いしたかったのですが、入院中の身。

 歩けるわけではないので、クラブハウスまで一時外出してもたどり着くのが難しい。

 なので諦めていたのですが、なんとお見舞いに来てくださることに!

 写真を撮ったり、しばらく歓談したり。

 英語はあまり得意じゃないけど、そこはカンで。

 少し英語ができる人が翻訳してくれましたしね。


 実はこの出会い、後にあることにつながっていくとはそのことは思いもしていませんでした。

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