その13 化学療法を前に
今回、ちょっとグロテスクな話があるのでご注意願います。
書くのを忘れていましたが、手術の前に抗がん剤を入れるためのカテーテルを留置しました。
(当時の手記を確認しながら書いてるときと見ずに書いてるときがあるのです)
本来は腕なのですが、私の腕の血管はとりにくいとのこと。
万が一、液が漏れて皮膚についたとき、皮膚が壊死することもあるとか。
そんなものを体にいれるのか……。
そういうわけで鎖骨付近に留置することに。
局所麻酔をして針を刺すのですが、なかなかうまくいかず、あっちやこっちを試してもう、痛くて痛くて。
やっぱ皮膚の薄いところだからなんでしょうね。
2時間くらいかかってようやく成功。縫いとめてはずれないようにします。
胸の管はこのあと数ヶ月つけっぱなし。
始めは邪魔でしたが気がついたら慣れてました。
手術の説明のときに抗がん剤の説明もありました。
ずらーーーーーーーーーっと予測される副作用の一番下に「死」の文字が。
ええ、化学療法は命がけです。
ようするに「死ぬかもしれないけどいいっすか?」って聞かれてる訳ですが、転移したら死ぬ確率が上がるし、医療訴訟が多いこのご時勢ですから、予測されることは全て書いてあるのだろうと、思い切ってサイン。
この化学療法については、いつ開始するかかなりギリギリまで待ちました。
というのも、本当に「脱分化型軟骨肉腫」なのか最終チェックをしていたから。
ちょっとグロテスクな話になります。
普通、切断した四肢は本人に返却されます。
返却された四肢は燃えるごみの日に出すととっても大変なことになるので注意。
……ここ、冗談ですよー。
通常は火葬場に持っていって火葬してもらいます。
その際、市町村の火葬許可証も必要になるので、取り寄せる必要があります。
切断肢用の小さな棺おけってあるんだって。
で、死んだときに一緒にお墓にいれてもらうことが多いらしいです。
なんでよく伝聞調なのかというと、私、これやってないんです。
私の足は、踵にある腫瘍を検査するために外部機関に出されました。
特別な薬品につけて、骨まで柔らかくして薄くスライドして検査したそうです。
この結果がなかなかでてこなかったんですね。
「脱分化型」ではなく、「通常型」だった場合は化学療法は無意味になるので、慎重に検査に検査を重ねたわけです。
そういうわけで化学療法をいつ開始するか、というのが判断つきにくかったのです。
そのころ、先生との間で少しそれについて話をしました。
「遠野さん、化学療法の開始時期についてなんだけど」
「はい」
「まだ、検査機関から検査は返ってきていないんです」
これは困ったなぁ、と思いました。
「脱分化型の確率が高いので、見切り発車で2月上旬から始めるっていう方法もあるけど……」
いやいやいやいや、死ぬかもしれないっていう大きな治療を見切り発車って待って待って。
「遠野さん、どうする?」
私に聞かれても分かりません。でも、見切り発車はいやだ。
そういうわけで、ちょっと失礼な形で質問を切り返しました。
「大変失礼な言い方で申し訳ないのですが……先生ご自身が同じ立場になられた場合、どの方法を選択されますか?」
「うーん。2月の中旬には抜糸ができると思います。その頃になると検査も返ってくるし、感染症のリスクも下がるのでそれくらいですかね」
嫌な質問の仕方をしてしまったのですが、この先生は基本的に真摯に答えてくださるので、思い切って聞いてしまいました。
結果、抜糸を待って化学療法を開始することにしました。
それまではリハビリ。
リハビリは好きでしたね。気分転換になるし。
平行棒の間を片足で歩いて、筋肉が落ちないように頑張ってました。
――化学療法かぁ……たぶんやることになるけど、どうなるんだろ。
そんなことを思いながらリハビリに励む日々でした。
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