正一さんにおぶわれて
学童疎開にサイパン玉砕
たしか、このあと本土空襲が激しくなり、来年終戦だ。
少ない知識を絞り出し私は怖くなった。
私がばあちゃんになってタイムスリップしてる?だとしたらこの兵庫の田舎は被害少ないはずだが。
多くを聞いたわけではない...。いつも戦争の話を聞こうとするとばあちゃんは一言二言で返事を終わらした。そのうち私から聞くことも無くなったのだ。
畑作業と土鍋料理や薪の扱いにも慣れてきた。
でも、空腹が.....空腹が耐えられない――っ
毎日好き勝手食べてきた私には...。
はぁ チョコに、ポテチに、肉!肉!肉ーっ
ウ―――――
何?なにごと!?
「頭巾や頭巾!」「縁側に荷物!はよっ」
え?これって.....空襲警報?
みんな急いで家を出て走る。下の子達を出し、私と夏代姉さんが最後にでた。
早い.....みんな走りが速い。
運動神経には自信があったが、完敗だ。
足がよろめいて私は盛大にこけた。
小さくなる夏代姉さんの背中―――――。
急いで立とうと起き上がる。何かにひっかけ膝から出血がかなりの量だ。あちゃぁ。
後から走ってきた人が
「ほらっ早く」と前でかがむ。
もたついてる場合ではない。私はその人におぶってもらい防空壕へ。
小さな穴の前に下ろされ、顔を見る
「あっ」梅野
「大丈夫ですか?早く中ヘ」
1時間以上はたっただろうか...
「なんやこれ。」「なんも音もせん」
「訓練か?」
薄暗い中ででごちゃごちゃと会話する者たち。
訓練だったようだ。訓練とか、本番とか
何も知らされない時代だ。
今度は皆、我先にと急いで飛び出る
「泥棒が集まりよるわ。はよ戻りましょ」
「ありがとうございました。」
「血!えーっと、、、」
「八千代です。」
「とりあえず、行こう」
正一さんは私を引っ張って、柳原の家へ。おばさんが「八千代ちゃん あれまぁ」
棚から赤チンらしきものを出した。私は手ぬぐいでなんとか処置をした。「器用に出来るもんやな。」おばさんが感心する。
「ちょっと正一さん...」
おもむろに正一さんを呼び、何やら手紙を渡すおばさん。
正一さんは私と、川端の家(ばあちゃんの生家)へ。
「送って頂きありがとうございます」
どうやら送ってきただけでは無さそうな暗い顔の正一は、手紙をおひさに渡した。
おひさも、眉をひそめ
「さっお入り」と正一を中へ。
正一の両親が亡くなったそうだ。
父親は戦死。母親は病気で入院中だったが、戦死の知らせを聞いた後亡くなったと。
弟たちにはまだ言わないことにした。
仕送りや援助が無くなるため、柳原では正一を面倒見きれない。
正一は、川端の家へ住むことになった。
その日の晩、みんな夜8時頃には寝る。
正一が、縁側で座っている。
後に立つ私に振り向かず「これからどうなるんだろう。」と小さな声で言った。
独り言とも取れるその小さな投げかけに、かける言葉が見つからない。
両親を失い、行く当てなく肩身狭く知り合いの家をまわる。弟を二人も抱えて...
毎晩好きな動画見たり音楽きいたり
喉がかわけばコンビニ行って、明日も仕事かぁとボヤいていた夜8時とは全く違う夜だった。
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