幕間 腹黒撫子と謎メガネ
「驚きましたね」
観客席からどよめきが聞こえる。
私の――、
今目の前で行われている
「あの
「彼もなんらかの事情があってFクラスである、と思ってよさそうですね」
さっきの一瞬の攻防。観客席からは全て見えていたが、彼は幻影の構成に必要な力の大部分を、マナから得ていた。
「彼なら……」
淡い期待を抱きながら、試合を見つめる。
2人はお互いに杖と剣を向け合い、硬直している。こうなったら、通常、先に動いた方が負ける。魔術の試合は基本的に後出しじゃんけんになりやすいからだ。相手の術式に対応して、打ち消す術式をぶつける――。そんな争いになりやすい。
しかしこの2人の場合はその限りではない。
先に動いたとしても、マリアさんは必殺の威力でビームを撃つ。あの距離なら外さないだろう。加えて、さっき見せたように、杖からではなく1から術式を組んで攻撃する手もある。逆に後手に回ったとしても、やはりあの距離は必中必殺。先ほどのように背後を取られたときに見せた動き。対応能力や勘は流石名家の娘。さらに、かなり不安定な体勢だったのにも関わらず狙いは正確だった。高威力のビームばかり撃っている影響か、体幹も強いようだ。
だが、相手をしている彼も侮れない。観客席だから見えたが、どうやら彼の持っていた黒い杖は、黒い剣に変形するらしい。つまりあの剣は杖でもある。魔術を使うこともできるだろうし、剣として使うことも出来るだろう。ここまでの彼の走りやジャンプ、空中で狙われたときの身のこなしを見るに、肉弾戦もできるタイプの魔術師。その身体能力であれば、魔術を使うだけでなく、直接ターゲットに斬りかかることもできる。
TVで見る
硬直と静寂を破ったのは、黒ぶち眼鏡の彼だった。
右足で後方へ跳んで、距離を取る。
マリアさんは魔力をためることなく、速射でビームを撃つ。
速射ビームでは威力が足りない。眼鏡の彼はその幅ギリギリの
いや、違う。
ビームは彼の動きを制限するためのもの。
左手で術式が組まれていく。本命はこっちか。
彼はそれに気づき、素早く跳躍。一気に距離を詰める。
同時に、彼女の術式も完成。
勝負が決する、その一瞬――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます