4

 それは、動画サイトに投稿された一つの動画から始まった。「リヴァイアサン」と名乗る者が、いきなり全世界に宣戦を布告する、と言い出したのだ。もちろん最初は誰も相手にしなかった。


 ところが。


 そいつの予告通り、太平洋に浮かぶ差し渡し五〇〇メートルに満たない小さな無人島の一つが、白昼いきなり爆発して姿を消したのだ。


 一転、世界中が恐怖に包まれた。最初はとんでもない核テロリストが出現した、と考えられた。しかし、爆発現場では放射能がほとんど検出されなかった。水爆だったらその原理である核融合反応では放射能は生成されないものの、起爆のために原爆が使用されるため、それが生成する放射能が検出されるはず。なのに、検出されたのは放射化(放射線が照射されたことにより放射性物質に変化すること)によると思われる、ごく微量の放射能だけだった。


 調査の結果、「リヴァイアサン」は太平洋上のとある無人島に潜伏していることが分かった。しかし、どこの国も手を出すことができなかった。みな、例の新型爆弾を恐れているのだ。実際、「リヴァイアサン」は自分に危害が加えられたと見なしたら、世界中の都市を無差別に新型爆弾で爆破する、と宣言している。


「リヴァイアサン」の要求は至極幼稚なものだった。各国の首脳は即刻退陣せよ。世界は全て我にひれ伏せ。我が世界の唯一の王になるのだ……


 なんというか、ここまで分かりやすい悪役だと、乾いた笑いしか出てこない。しかし、世界はヤツに手も足も出ない状態だ。


 もちろん俺にはヤツの正体が分かっている。ヤツも俺と同じように、ミラーワールドに転移できる能力を持っているのだ。どうやら俺みたいな存在は俺だけではなかったらしい。


 無人島を吹っ飛ばしたのも対消滅による爆発に間違いない。放射化が起こっている、ということからもそれは裏付けられる。対消滅では放射線……γガンマ線が大量に放出されるのだ。


 上等じゃねえか。


 とうとう俺は戦うべき相手を見つけたようだ。早速俺は行動を開始した。


 ---

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る