『五分』 作 綾野 唯

「え、何。気味が悪い」


 教室に入ってすぐさま恋の話をしよう、だなんて律から持ちかけられた少女の反応はこのようなものだった。昨日の今日で距離感詰めすぎでは、なんてまた構えてしまう。あちらが歩み寄ってくれても結局、少女の今までの中身を変えることなんてできない。


「ごめん、冗談だよ。いや、あながち冗談でもないんだけど」


 はっきりとしない返答に首をかしげる。一体なんのことを言っている。


「昨日の夜、蓮が顔見て逃げた白乃から連絡がきてさ」


 あ、と途端に思考が停止して頭が真っ白になる。何を言われたのだろう。胸が落ち着かない。当然罵倒の類だろうか。当たり前だ。とてつもなく失礼なことをし続けている自覚はある。


「蓮に謝っといてくれって」

「え」


 なんで。どうして相手が謝っているんだ。顔が青ざめていくのがわかる。悪いのは自分だとわかっているのに、また相手に謝らせてしまった。胸のざわつきは治まったが、今度は中身が重く感じる。また自分のせいなのに、の罪悪感に苛まれる。少女の顔色が明らかに悪くなったことに律も気づいたらしく、そんなにへこむなと一応の励ましをしてくれた。今の少女には焼け石に水だが。


「どうする?代わりに連絡とってあげようか?」

「……またメンタル回復してからでもいい?」

「メンタルよっわいなー」

「……ちゃんと腹括るから」


 なんとも情けない少女を律はやれやれと見やる。


「こういうのはなるべく早い方がいいんだけどね。謝りたいと思っているなら尚更に」


 そんなことはわかっている。わかってはいるが、だとしたらもう遅すぎるくらいだ。本当は卒業式の日にあの場で凪に謝らないといけなかったのに。



 少女は今まで過去の自分の失敗や不快な思いはその関係者ごと全て切り離していた。人間関係が面倒になってきたらそのグループごと切り離す。教室の中が嫌いになったらそのクラスごと切り離す。学校が好きではないからその学校ごと切り離す。

 連絡先もリセットして、全部消して、もう二度と会わないつもりで。あったとしても、もう知らない人。人を切り離すのは楽でいい。繋いだままでいる方がしんどくなるしとてつもなく面倒だ。

 その場その場で凌げればそれでいいと思っていた。関係を切るのは恐ろしく容易だ。一旦切れればそれで終わり。

 なのに、ずっと過去の失敗や嫌なことはいつまでも少女につきまとう。日常のふとした時に顔を覗かせ、胸に重りを際限なくのせていく。積み重なった重みは日常生活に差し支えるほどに影響を及ぼしていく。

 頭が痛くて息苦して、切り離して済ませたはずなのにどうしてこんなにつらくなる。頭を抱えてうずくまってひたすらに過去の自分に耐えるしかなかった。今さらそんなこと思い出したってどうすることもできないのに。切り離したってどうにもならない。切り離したって苦しいのに切り離せなかった時にはなお苦しい。

 律に連絡を取ってもらわなくても凪への連絡先は少女も持っていた。個人的な連絡先は破棄したし、自分の連絡先も変えたが、凪の家への連絡はできた。凪とは幼稚園から一緒だったから、自然と知ることになった。凪の家に少女自身が電話をかけたことなんて一度もないが。

 でも、ずっと謝りたいと思っていた。どこかで切り離してはいけないと思っていた。今までだって少女が原因の失態はあった。だけど、それはその場でなんとなくは解決をした。ちゃんと非を認めて謝りもした。ただそのあとその記憶に耐えきれなくて切り離したが。

 凪には謝れなかった。自分のせいなのに謝ることができなかった。それだけがずっと気がかりで、悲痛そうな凪の声が頭から離れなくて。

 謝りたいだけだなんて、それこそ自分勝手で自分の重みを軽くしたいだけなのだろう。自分のことだから、凪のことなんか考えてないのかもしれない。やはり胸のつかえをなんとかしたいだけで。頭を抱えるほどの記憶で真っ先に思い出すのは凪のこと。一度切り離したはずなのに、切り離せない。


 夏期講習が5限で終わってとりあえず学校を出た。出たのはいいものの、本当に気が重い。そんなに顔に出ていたのか、心配した律にアイスを奢られるほどにはへこんでいる。気が滅入っている。

 凪のせいだ、とは思わない。自分が悪いのは分かりきっている。早く謝らないといけないのに、思考が止まって何もする気にもならない。でもいつものごとく受験生の身であるために勉強もせずふらふらと家に帰ることはできない。また画廊に寄らせてもらおう。あそこは居心地がいいから。


 まずは、由月がいた神社へ。


 ♦


 間違えた。

 間違えて由月がいた方ではない神社へ来てしまった。ぼーっと自転車を漕いでいたせいだとため息をつく。

 田舎の地域にはよくあることなのだが、狭い地域の至る所に神社仏閣が点在している。それがなぜなのかはわからないが。ここは少女が通っていた中学校に近い神社。よく幼稚園小学校の時も、中学の時もここで遊んでいた。由月の方よりもここ神社の方が少女にとっては馴染み深かった。案の定、ここがなんの神社かは知らないけど。神社といえばここだった。

 基本的なつくりはあちらと変わらないが、ここにはベンチや少ないが遊具がある。拝殿と本殿をここでもぐるりと回りながら公園のようだったなとつい懐かしくなる。ここでは夏は道に露店も少し並んで夏祭りが行われる。花火も上がらない本当に小さなものだな、中学に入る前は姉と遊びに来た気がする。それの片付けなのか準備なのかはわからないが、店の木材や飾りの籠が木の根元に少し置いてある。中学になってからは姉が忙しくなって一緒に行くことはなくなった。中学三年間でここの祭りに行ったのは一回だったか。


 凪の家は確かここの近くにあった。人に代理で連絡を取ってもらうよりは自分でなんとかした方が良いのだけれど、自分から連絡は恐ろしく取りづらい。なんとなくここにいれば凪に会えたりしないだろうか。そうしたらさくっと謝って終わりにするのに。


 なんて思わなければよかった。神社内をぐるりと回って元の位置に戻ってきたら、凪がいた。ベンチに座ってあれは単語帳だろうか、何か読んでる。何か読んでる、何か読んでるなら、まだ気づかれていないなよし逃げよう。くるりと踵を返し拝殿の陰に隠れる。大丈夫ここならあっちからはこちらを見ることはできない。と安堵したところで違う、と頭を抱える。

 違う。こんなことがしたいんじゃない。逃げたいわけじゃない、逃げたいけど。律の仲介なしで凪と話せる機会なのに、すごい気が重い。行きたくない。いや行ったところでどうしたらいい。どう話す。まず凪のところまでどういうルートで行けばいい。何で行く。いやあそこにいるんだから歩いていけばいいのだけど。

 パニックになってどんどん思考が迷走していく。待って、ここから行くより、裏から拝殿の反対側に回った方がよくないか。そうすれば凪の背後を取れるぞ。いや背後を取ってどうする。闇討ちか。思考の方が一周回ったままに、拝殿の反対側に回り込む。テンパった頭はそのままに深呼吸して静かに集中してるらしい凪の背後を取って


「わ!!!」

「うわ!!?」


 驚かしてみた。いや本当に何をしているんだろう。テンパった自分は本当に何をするかわからないなと新たな発見をした。


「な、に……」


 当たり前だが、驚いた凪が振り返ってこちら見る。目を見開いてさっきよりもさらに驚いている。それはそうだろうなと呑気に思う。だけどこっちを見られるととりあえず目をそらしたくなる、のでそらす。 間違ってもこれから謝ろうというものの態度ではない。


「……」

「……」


 無言が続く。気まづい。いや、この状況も少女が招いたもので、まずは目線をちゃんと合わせろとも思う。なので、ちゃんと自分から声をかけなければと内心決意し、口を開く。


「……こんにちは」


 挨拶は大事だよな、なんて今考えるべきことではないことを考えてしまった。


「えっと……」


 ほらやっぱり困ってる。それはそうだ。昨日顔見て逃げた奴が、なんで驚かしにきてるんだ。そして目を合わせないと謝る態度ではない。

 いい加減ちゃんと謝ろう。ずっと謝りたかったんだから。軽く息を吸う。手が震える。声は震えませんように。


「ごめん、なさい」


 結局俯いて凪の目を見ることはできなかった。

 凪が息を飲むのがわかった。しばらく何を言おうか迷っていたみたいだが、ベンチから立ち上がってこちらを向いた。


「昨日のことなら、大丈夫だから」


 そう言ってそのまま立ち去ろうとする。違う、そうだけどそうじゃない。私が謝りたかったのはそんなことじゃない。ハッとして顔を上げる。手の震えが止まらない。


「違う!」


 思ったより大きい声が出て自分で自分に驚く。でも、違う。違うから、聞いてほしくて。謝らせて欲しくて。

 振り返った凪はまた驚いていて、こいつ驚いてばかりだななんて思ってしまう。それも少女が悪いのだけど。


「ごめんなさい」

「別にいい」

「違う、の」


 だんだん声が震えてくる。自分の中身を人に見せないといけない時は泣きそうになる。メンタルと体のバランスを取ろうと涙が出るのだろう。


「中学の時のことをずっと、謝りたかった」


 どうして一度切り離したものを凪とのことだけこんなに放り出さないのか、ようやくわかった。やっぱり大事な人だったから。あの中学のときにずっと一緒にいてくれた人だったから、手放すのが悲しくて、切り離すのが苦しくて、一度でも嫌いになってしまったのがつらくて。だからずっとどこかで会えたらなと、また話せたらと思っていたから、切り離しても苦しくてずっと悩んでいた。謝って、また話して欲しかった。許して欲しくて。


「私が全部悪かったの。ごめんなさい」


 凪とのことを切り離すのが辛かったからほとんど忘れていたのかもしれない。友達を自分から、自分のせいで失ったから。

 切り離さないで、繋いだままちゃんと仲直りしたかった。


「ずっと謝りたかった。あの時、謝らせてしまって、ごめん」


 ♦


 俯いてるから、本当に涙がこぼれてしまいそうで、結局最後まで声は震えてて、目は合わせられなくて。ひどく情けない姿だろう。喉の奥が痛い。

 凪がこちらに歩いてくる音がする。下を向いているから目の前に来た凪の靴が見えた。


「俺は蓮に嫌われたと思ってた」


 それを聞いてバッ顔を上げる。


「いや、違う。違う?違う、から、違くて。私が悪いから」


 よくわからない弁明を聞いてくすくすと凪が笑う。それを見て思わず目を見開いてしまう。こいつが笑うところなんて本当に久しぶりに見た。


「それならいいんだ。いいよ、許してあげるから」


 屈託無く笑う凪に本当に大丈夫かと思ってしまう。あんなひどいことした奴許すのか、寛容だな。


「何やらかしたかなってずっと思ってた」

「だから、あの、全部私が悪いから気にしないでください……」

「何がそんなに悪いんだ」

「いや、そんなたいしたことではないです」

「敬語やめろ」


 申し訳なさすぎてなんとなく敬語を使っていたら怒られた。


「苦しそうだったのは知ってたんだ。そんな時に余計なことした俺も悪い」


 思わず息が止まる。


「あの時はよくわからなかったけどな」


 ごめん、とまた謝られる。凪は私のことを見ててくれていたのか。どうして自分はもっと早く、もっと外に目を向けなかったのだろう。自分のことで手一杯で、それに甘えていたのか。


「ごめん」

「もういいから」

「お前彼女いそうだな」

「なんでそうなる」

「ここで何してたの」

「驚かしてきた奴に言われたくない」

「すみません」


 空気が軽くなった途端に感じる会話のしやすさに、凪とは仲が良かったのか、と自分のことなのに他人事のように思う。


「勉強してたんだ。夏期講習終わって帰ってきたけど、家だとできないから」

「仲間」

「でも単語見るくらいしかここはできないよな。蓮はなんでここきたんだ」

「迷子」

「適当言うな」

「半分は合ってるから。違う神社に行こうとしたら間違えた」

「お前何歳だよ」

「凪より年上」

「1日違いだろうが」


 頭空っぽにして会話を投げていくため、本当に何も考えていない。


「違う神社って天神の方か」

「は?」

「知らないのかよ」

「え?あそこ天神様だったの」

「北高校に近いところだろ?」

「へー」

「本当に知らなかったんだ」

「ここは?」

「ここは毘沙門天」

「へー」

「一緒に祭りに行った時お前のぼり見てなかったのか」

「……」

「見てなさそうだな」

「……」

「もう思い出すのを諦めろ。なんで天神の方に行くんだ?用でもあったのか」

「あるといえばあるけど」

「は?」

「勉強しに行く」

「拝殿や本殿に上がるのはやめろ」

「そのくらいわかる」

「女子高生が地面で何かするのもどうかと」

「喧嘩売ってるな」


 あの画廊のことは誰にも話してない。律にも姉にも。こいつは、無害だから話してもいいか。あのお兄さんも来たい人が来ればいいといっていたし。


「勉強する場所が欲しいなら秘密基地教えてあげる」


 ♦


「ここ本当に入っていいのか」


 凪を画廊に連れてきたが、最初のコメントがこれだった。ひどく真っ当な感想ではある。


「大丈夫」

「ダメな奴じゃないか」

「あけまーす」

「話を聞け」


 扉を開けるとガランとした館内に空調の音が静かに響く。まずは彼を探さないと。


「凪」

「何」

「ここで待機」

「本当に何」

「ここの館長さんらしき人に会いに行くから」

「らしきってなんだ」

「だってわからないから」

「館長すら定かじゃないってここまずいだろ」


 凪と入り口でお互いに適当に話していると、上からくすくすと笑い声が聞こえてきた。はっとして吹き抜けの玄関ホールから二階を見ると彼が手すりに手をかけてこちらを伺っていた。

 隣で凪が警戒したのがわかる。それはそうだ。もうすでに胡散臭い。


「どうしたの?今日は友達も一緒?」

「ダメですか?」

「別に構わないよ。じゃあお友達も一緒に、こっちにおいで」


 今日は二階か、と引っ込んだ彼の方へ行こうとすると背負っていたリュックを後ろから引っ張られる。


「なんだよ」

「あの人誰」

「館長さんみたいな人」

「大丈夫なのかここ」

「でも夏休み中はずっとここにきてるしな」


 そういうと、凪にお前が大丈夫か、と胡乱げな目をされる。とりあえずリュックを掴んでる凪をそのまま引っ張って二階に上がる。

 凪と一緒に案内された部屋は窓とランプがたくさんある部屋だった。古めかしいランプが吊るされていたり、重なっておいてあったり。今の時間は昼間なので灯りは点ってはいないが、夜になって全てに灯りが灯ればさぞ綺麗だろう。部屋の中央に真ん中に円形の机が置いてある。今日はそこを借りて良いのだろうか。とりあえず警戒心が少女より高くなっている凪を座らせる。隣に自分も座ると目の前に小さな写真立てが見えた。いや、これも額だ。ならばこれも絵画だろうが。


「別に触っても大丈夫だよ」


 少女の視線に気づいたのか彼が促す。その通りに小さな絵画を手にとって眺めてみる。

真っ黒だ。絵画全体が真っ黒。なのに薄い緑と黄色の形をした鋼のような色をした光源が横に並んで2つある。なんだこれは。そしてこの光源をみているとどことなく圧迫感を感じる。


「猫の目じゃないか」


 隣から覗き込んできた凪が言う。ああ、そうか。猫か。ならばこの光源は暗闇で光る猫の目だったのか。そう思うともうこの絵は猫にしか見えない。


「五分」

「ん?」

「この絵のタイトルは『五分』」

「え」


 凪も彼を見て目を丸くする。それは本当に五分で描いたとすればそれは題にして良いのだろうか。手抜きとも取れないか。


「暗闇と目の光しかないのに、なんで猫だと思うの」


 改めてそう言われてしまうと少々困ってしまう。猫に見えたから、としか言いようがない。


「猫の目は暗闇で光る。黒猫の毛並みは闇に溶ける。そんな情報から人間の脳が勝手に脳内で補って補完して、好き勝手に像を結んでしまう。人間の脳は思い込みが激しいから、一度そう見えてしまうと別のものに見方を変えるのはとても難しい。この人は最低限の情報だけ提示して、他のディテールを全て見た人の脳に丸投げしてみたんだ。でもそれでもちゃんと猫に見えるところが凄いよね」


 たしかに最低限の情報で最大限の効果を出している。もう暗闇でうずくまる黒猫の絵にしか見えない。


「この作者は綾野 唯という人なんだけど、人嫌いのすごい面倒くさがりでね。細かい書き込みとかしなくても意図が伝わる絵はかけるんだって思っていたらしいよ」


 それは、誰かに皮肉でもぶちまけようとしたんだろうか。


「でもね、それは猫ではないよ」

「「え」」


 ね、思い込みってすごいでしょう、と彼は目を細めてゆるりと微笑む。


「それ、本当はなんだと思う?」


 ♦


 フェイクなのだと、凪は言った。猫のように見えるのはフェイク。最低限のことでフェイクまで仕掛けるのか。いや、最低限のことしか描写しないからこそ生きるものなのかもしれない。

 画廊から出た夕暮れの帰り道に凪が思ったことを話してくれた。


「作者は人嫌いって言っていただろう。だから絵から何かを読み取られることすら嫌だったのかもしれない。だからわざと猫に見えるようにした」

「猫じゃないなら、何に見えたの」

「人の目」

「人の目……」

「作者には人の目はあんな風に恐ろしく見えていたのかも知れない。五分っていうのもかかった時間というよりは、五分間見つめられてみろっていう意趣返しなのかもしれない」


 まあ、これは俺の予想、と凪は締めくくる。お兄さんもあれ以上は何も言わなかったし、本当のところはわからない。

 けれど、ならば本心を隠してさらにそこに感情を込めるなんて。そんな絵はもう呪いにもなりそうで途端に怖くなった。感じた圧迫感は気のせいではなかったのかもしれない。あの目が頭から離れない。猫ならばよかったのに。人の目が怖いというのは少女も同じなのだから。だからどんどん切り離していったし、中身を隠し続けてきた。


「なあ、蓮」

「何」

「あそこにこれからも行くつもりか?」

「あそこ居心地いいから」


 まあなと頷いた後、凪はうーんとしばし悩むそぶりを見せる。


「行ける時は俺も行くよ」

「あそこよかったでしょ?」

「そう聞かれるとなんとも言えないが」

「そう?」

「だからとりあえず連絡したいから、連絡先教えろ」

「……わかった」


 切り離したはずだけど切り離せなかったもの。また繋ぐことができるなんて願ってはいても、思ってもみなかった。


「ありがとう」

「あー……またな」


 中学の時も遊び終わった後はお互いの家の近くでこうやって別れた。本当に繋ぎ直せるなんて。思った以上に嬉しくて、家に入る前に緩みきった顔をなんとかしなければならなかった。

 そういえばまた画廊の彼に贋作のあの子のこのを聞くのを忘れていた。次会った時には聞かなければ。

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