第5話 real.

夜の街。

RGBのイルミネーションが闇を飾る。

嬌声は防音壁の向う。密室の騒乱。

客引きの声だけが響く。


「この女の子見たことないですか?」

写真を片手に飲み屋の客引きに尋ねてみる。

「さぁ、覚えてないな。あんた、うちで働く気無い?」

「遠慮しておきます」

早く帰れよ、という事なのだと受け止めつつ、次へと移動した。


アイスコーヒーのコップが汗をかいている。

「則子も一口乗ったと」

「大概の方は賛同されます」

この佐藤という男は、商品であるソフトウェアを使ってもらうことで幾らかの著作権料を請求するビジネスについて延々と語った挙句、友達の則子さんもしているのであなたもどうか、と誘ってきた。

「著作権ビジネスですか」

「小作料を取る大農場主のようなものですよ」

佐藤、敬称が付けにくい、は、こちらを見もしないでアイスコーヒーを吸った。

「御社のソフト、書くと事実になるという噂なのですが」

「ああ――」

佐藤氏はアイスコーヒーを吸うのをやめる。

「――そう言う仕様と言う訳では無いですが、確かに噂されもしますね」

「仕様ではない」

「ソフトウェア、ですから」

……。

「ご契約頂ければリアルドライブエンジン付けますが」

「エディション違いですか」

「プレミア版です」

ソフトウェアの事は今すぐには判らない。

ビジネスの方も何か怪しげだ。

「則子が今どうしてるか知りませんか」

「ご契約者様の生活を把握しているわけではないので」

「支払いはどうなってますか」

「順当にお支払いいただいているようです」

痛い現実になってるのやらどうやら――

「ちょっとつき合って貰えますか」



「――ふぅ。店も見つからないとは」

「興信所に頼んだ方が早いですよ、多分」

興信所か、手を打っておこう。

「どうします、未だ探しますか」

佐藤は一人で自販機にジュースを買いに行く。

「はい。コーヒーで好ければ」

「……頂きます」



少年よ大志を抱け。

昔の人の言葉。

大志は抱けても実現するには様々な障害が。

先ずはご予算。

何か成すにはお金がいる。同人小説の出版にもお金がかかる。

書けば現実になるのなら誰でも書くだろう。

則子も、私も。

「現実になるプロット」

書けば現実になるのなら。


「もしもし――」






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