第45話

シンとした空間にテレビの音だけが聞こえて来る。



その音をラジオのように聞いていた時だった、2度ノック音が聞こえて来てあたしはドアへと視線を向けた。



「はい」



「こんにちは、川本です」



そう言いながら入って来たのは恵一だったのだ。



咄嗟のことに驚きあたしは背筋を伸ばした。



恵一は起き上がっているあたしを見て唖然とした表情を浮かべた。



しかし次の瞬間、持っていたフルーツを床に落とし、駆け寄って来たのだ。



そのままの勢いであたしの体を抱きしめる。



恵一に抱きしめられたあたしは呼吸をするのも忘れてしまいそうだった。



「目が覚めたんだな!」



「う、うん……」



「良かった! あれから三日も経過してるんだぞ」



そう言って身を離す恵一。



「あれからって……もしかして、あの教室の出来事から?」



そう呟くと、あの教室での出来事が鮮明に思い出された。



閉じ込められた恐怖。



それぞれが持っていた秘密。



その1つ1つがほどけて行き、やがて真相を掴んだときのこと。



「そうだよ。あの後俺は自分の部屋で目が覚めたんだ。でも、学校に行っても珠は来ないし、先生に聞いたらまだ入院中だって言われるし、もうなにがなんだかわからなかった。全部悪い夢だったんじゃないかって思ってたんだ」



思い出したように恵一は大きく息を吐きだした。



「そうなんだ……。あれは全部夢だったの?」



それにしてはリアルな夢だった。



それに、恵一もあたしと同じ夢を見ているようだ。



「夢なんかじゃない。あれは間違いなく存在した教室だった。少なくても、俺たちの魂はあの教室に集められていたんだ」



魂が……。



それなら、あたしはその間にもずっとここで眠っていたのだろう。



「あの……恵里果は?」



そう聞くと、恵一は一瞬言葉に詰まったように見えた。



あの教室内で、あたしと恵里果の関係は完全に崩れ落ちれしまった。



全部、恵里果の苦しみに気が付くことのできなかった、あたしのせいだ……。



「事件を引き起こした犯人は恵里果だ。もう学校にはいられなかった」



恵一の話だと、恵里果はあの空間から目覚めた翌日から学校へ来なくなったらしい。



連絡をしても返事はないし、どこへいったのか分からないと言う。



だけど、恵里果はきっと自ら罪を償うために警察へ向かったのではないかと思われた。



「でも、1つだけ恵里果から託されたものがあるんだ」



恵一はそう言うと、ポケットから小さく折りたたまれた手紙を取り出した。



「これ、恵里果から私に?」



「そうだ。目が覚めたら渡してくれって言われたんだ。その後恵里果とは完全に連絡が取れなくなった」

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