第41話

全員の視線があたしへ向けられているのがわかった。



時計の秒針だけが空しく空回り、時間は止まったまま動かない。



あたしは視線に耐えきれず、近くに椅子にストンッと座り込んでいた。



「珠は被害者だろ」



恵一があたしを庇うように言ってくれた。



その通りだと言いたかった。



あたしは被害者だからなにも知らない。



早くここから出たいと泣きたかった。



でも……次はあたしの番で間違いなさそうだった。



ここまで1人1人が自分のやってしまったことをちゃんと説明してくれたのだから。



「ちょっと待って……今……思い出すから……」



自分の手が小刻みに震え始めるのがわかった。



何を思い出すのか。



自分が何をしてしまったのか。



知る事が怖かった。



だけど、思い出さないといけない。



そうしないと、あたしたちはこの空間から抜け出す事はできないだろう。



「ゆっくりでいい」



恵一があたしの前にしゃがみ込み、手を握りしめてくれた。



大きくて暖かな感触に胸の奥が安堵するのを感じる。



あたしはそっと目を閉じた。



みんなの視線を遮断して、恵一の温もりだけを感じる。



「あの日の朝、珠はなにしてた?」



恵一の質問に、あたしの脳裏には朝の風景が蘇ってきていた。



「あの日はなんの予定もなくて、ゆっくりと起きだしたの。その時に、恵里果から遊びに行こうって連絡が入った」



それはなんでもない日常の一幕だった。



朝、友人から遊びの連絡が入って来ることなんて珍しくない。



「あたしはすぐに行くって返事をした。待ち合わせ場所はコンビニだった」



学校の近くのコンビニだ。



そこまで思い出した時、違和感が胸につっかえた。



そう言えば当日もなんだか妙な感じがしたんだっけ。



その違和感がなんなのか思い出すために、あたしはこめかみに手を当てた。



「なんだか変だなって思ったの」



「変?」



「うん……。そうだ! いつもの約束場所と違ったからだ!」



口に出してしまった瞬間、胸の違和感がスッと外れていくのを感じた。

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