第31話~珠サイド~
「そんなの簡単だ」
恵一が立ち上がり、なにかの確信を持って言う。
「このメンバー全員が、なにかしらの理由で今回の事件に関わってるからだ」
その言葉に息がとまるかと思った。
ここにいる8人全員が……?
「なに言ってるんですか! そんなワケないでしょう!? 少なくとも、1年生の俺たちは事故のことは知っていても珠先輩のことは知らなかったんですから!」
1年生の一輝がそう言ったことで、少しだけ緊張がほぐれた。
それでもみんなの表情は硬いままだ。
「貴央と真弥は偶然事故に関係してたけどね。あたしや吉之だって無関係だよ」
恵里果が恵一を睨み付けて言った。
「そうだよね。いくらなんでもこの中の全員が関係しているなんて思えないよ」
たしも恵里果たちの意見に賛同してそう言ってみたが、恵一は険しい表情のまま変わらなかった。
「貴央や真弥は知らない間に事故を引き起こす原因になってたんだ。そんな風に、きっとここにいる全員が関わってる」
「どうしてそう言い切れるの?」
恵里果が恵一を非難するように言う。
どう頑張ってみてもこのメンバーで協力して脱出するしかない状況で、恵一の意見は反感を買っても当然なものだった。
もしもみんなが嘘をつき、真実をひた隠しにする展開になれば、あたしたちはいつまで経ってもここから出ることはできないだろう。
「事故の話をすることで時間が進んでるからだ。恵里果、お前もなんらかの形で関わってるんだろう?」
恵一の言葉に恵里果が目を見ひらいて「なんてこと言うの!?」と、叫んだ。
心からショックを受けたという様子で、その場に崩れ落ちてしまいそうになる。
あたしは慌てて恵里果の体を支えて恵一を睨みつけた。
「そんな言い方はないんじゃない? ちょっとひどいと思うよ」
あたしの言葉に恵一は表情ひとつ変えない。
「そうだよ、ひどいよ……。あたしは珠の親友なのに……!」
「事故に関係しているとは言ったけど、珠のこととは言ってないぞ? 珠が事故に巻き込まれたのは偶然だったはずなのに、なにか知ってるのか?」
たたみかけるるような恵一の言葉に、恵里果が絶句する。
大きく見開かれた目には涙が溜まっていた。
「いい加減やめなよ恵一! そんな風に威圧的な態度を取るから伝えたいことの半分も伝えられないんだよ!?」
あたしは恵里果の肩を抱いて言う。
「そうか? それならゆっくり説明してみろよ」
どうして恵一は恵里果を敵視しているのだろう?
これ以上、親友の傷つく姿は見ていられない。
恵里果の体を強くだきしめた時だった。
「あたしが関係しているとすれば、あの日珠と遊ぶ約束をしていたからでしょ!? たったそれだけで、なんでここに来なきゃいけないわけ!?」
と、恵里果が叫んでいた。
「恵里果、落ち着いて」
確かにあの日、あたしは恵里果に誘われて家から出た。
家にいれば事故には遭わなかったかもしれないけれど、恵里果が事故に関係しているとは言い難い、日常的な誘いだった。
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