第27話~貴央サイド~

金曜日の放課後。



「真弥、明日は午前中だけバイトなんだろ?」



俺は昇降口で真弥を引き留めてそう聞いた。



「そうだよ。貴央は?」



「俺は1日暇。なぁ、午後から遊びに行かないか?」



「もちろん、いいよ?」



真弥はニッコリと花のような笑顔を浮かべて頷いた。



その笑顔を見た瞬間、心臓がドキリと跳ねる。



真弥と付き合い始めて半年になるけれど、付き合い始めた頃のトキメキは今でも健在だった。



「じゃあ、バイトが終る前に近くに行くから」



「待たせちゃうのは悪いから、終わったら連絡するよ?」



「いや、そういうんじゃないんだ」



「え?」



真弥は小首を傾げて俺を見て来る。



「コンビニってカラーボールが置いてあるだろ?」



「あるけど、それがどうかしたの?」



真弥はますます眉間にシワを寄せている。



突然カラーボールに話なんかされたら、そりゃ不審に思うだろう。



だけど、そこは俺と真弥の関係があった。



「カラーボールが必要な人がいて、譲ってあげたいんだけど」



「え? それなら、通販でも買えると思うよ?」



「それはわかってるんだけど、配達までに時間がかかるだろ? なんか、急きょ必要になったんだってさ」



俺の説明に、真弥はまだ怪訝な顔を浮かべている。



でも、どうにかして説得する必要があった。



カラーボールを1個持ってくるだけで、その人は俺に1万円をくれると言っているのだから。



「どうにか、バイト先から1個だけ持ち出せないかな?」



「なに言ってるの? それって泥棒だよ!?」



真弥が驚いて大きな声をあげるので、俺は慌てて手で真弥の口を塞いだ。



「大きな声出すなよ」



「だって……」



「大丈夫。今度返せばいいんだから」



それでも真弥は浮かない顔をしている。



「なぁ、俺たちのデートもっと楽しみたいだろ?」



「え? それはそうだけど……それとカラーボールとなにか関係があるの?」



真弥の質問に俺は大きく頷いた。



「もちろんだ! そのために頼んでるんだから!」



「あたしたちのデートとカラーボールなんて、全然結びつかないよ」



それはそうだろう。

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