第14話
☆☆☆
それからあたしたちは全員で大声を上げて先生を呼んだ。
「誰かいませんか!? 助けてください!」
「ドアも窓も開かないの! 先生いますか!?」
「誰か助けて!」
それぞれの声が教室内にこだまする。
叫ぶたびに酸素が薄くなって、頭がクラクラしそうだった。
しかし、外に人の気配は感じられない。
窓から見える景色の中には、未だに人っ子一人見当たらない状態が続いていた。
「俺と一輝は床を剥いでみます」
1年生の由祐がそう言い、工具のノミとハンマーを見せて来た。
選択授業の工芸で使っている道具だ。
「そんなの、あったんだ」
あたしは驚いてそう聞いた。
「はい。工芸を選択している人のロッカーに残っていました」
これはラッキーだった。
机の中がカラッポになっていたけれどロッカーの中は残っていたのは、やはり意味があったのだ。
でも、そうなるとこの隔離空間は誰かが意図的に作り出し、脱出するのを見ている可能性が出て来る。
あたしたちはエンターテイメントのコマに選ばれたのだ。
そう考えて下唇を噛みしめた。
誰がどうして作りあげた世界なのかわからないが、誰も傷つけず絶対に脱出してみせる!
それから1年生2人は床板にノミを当てて破壊し始めた。
犯人たちも、さすがに床を剥がされるなんて考えていないだろう。
きっと、ここに出口があるはずだ。
気が付けばあたしたちはみんなロッカーから工具を取り出し、床を剥がし始めていた。
すでに体力も随分消耗しているけれど、出られるかもしれないという期待が大きく、体が突き動かされる。
それから5分ほど経過した時だった。
バリッ! と音がして床の一部が剝がれたのだ。
床を剥がした由祐の表情が、一瞬にしてパッと輝くのを見た。
「やった! これで出られるぞ!」
貴央が喜びに声を上げる。
しかし、由祐の笑顔がまるでさざなみのように静かにゆっくり、だけど確実に暗くなっていくのを見た。
「どうしたの?」
あたしは額に流れた汗を手の甲で拭い、由祐に近づいた。
「これ……」
由祐はそう言ったきり黙り込んでしまった。
その場から動こうともしない。
「なに?」
そう訊ねながら剝がれた床を覗き込んだ瞬間、絶句していた。
「どうしたんだよ2人とも、怖い顔して」
貴央が真弥と手を繋いで近づいてくる。
それでもあたしは返事ができなかった。
だって、あたしと由祐が見たものは……。
「なんだよこれ!!」
途端に貴央が奇声を上げ、頭をかきむしりはじめた。
真弥は両手で口を多い、震えている。
床下にあったものは、真っ黒な岩のようなものだったのだ。
恐る恐る手を伸ばして触れてみると、それは硬くてヒヤリと冷たかった。
手のひらでグッと押してみると、とても硬くて、そして分厚いものだろうということがわかる。
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