第12話
事故のあった日。
「あ~あ、良く寝た!」
欠伸をしながらキッチンへ向かうとお味噌汁のいい匂いが漂ってきていた。
「珠、今頃起きて来たの? お父さんもう仕事に行ったわよ?」
「だって今日あたしは休みだもん」
食器を洗っていた母親へ向けてのんびりとそう答え、自分の席に座った。
できたてのお味噌汁に卵焼きにウインナー。
それらをのんびりと口に運ぶ。
「学校が休みの日くらい家事を手伝いなさい。お母さんも仕事してて忙しいんだから」
「わかってるよぅ……」
こんな小言を言われるのは毎週の行事だった。
今日は特に予定もないから、元々そのつもりでいた。
「じゃ、仕事に行ってくるから。出かける時は火の元と戸締り、しっかりするのよ?」
「わかってるってー」
全く、あたしだっていつまでも子供じゃないんだから。
口の中だけでブツブツと文句を言いながら朝食を食べ終え、お風呂掃除をした。
1つでも家事が片付いていると母親はご機嫌だ。
あとは夕方までのんびり過ごして、洗濯物を取りこんで畳むくらいでいいよね。
そう考えながら自室へ向かいベッドに横になった。
朝の貴重な時間にダラダラすることが、なによりも至福の時間だ。
そして再びまどろみ始めた時、スマホが震えた。
《恵梨佳:珠、今日なにか予定ある?》
《珠:特にないよ? 恵里果はなにしてんの?》
《恵梨佳:買い物に行きたいと思ってるんだけど、一緒にどう?》
《珠:いいねぇ、行く行く!》
まどろみかけていた頭が一瞬にして覚醒した。
せっかくの休みの日だ。
やっぱり友達とどこかへ出かけないと損だよね。
あたしはベッドから飛び降りて、さっそく着替えを始めたのだった。
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