第8話

「冗談に決まってるだろ。命をかけたゲームなんてあるわけないじゃないか」



そう言って明るい髪の毛をかきむしる。



冗談が通じなかったのは不満そうだが、貴央の言葉に真弥が安堵したようにほほ笑んだ。



でも、外へ出られないことには変わりないのだ。



デスゲームが始まらないだけマシだとしても、このままじゃあたしたちは餓死してしまう。



そう考えてふとここで目覚めてからどれくらい時間が経過したのか気になった。



人間が水分、食料なしで生きられるのは3日とされている。



時間に計算すればたったの72時間だ。



この時間を越えての生存は難しくなる。



そのため時計へ視線をやったとき、あたしはある異変に気が付いて「え?」と、声を上げていた。



こんなはずない。



故障だろうか?



「どうした?」



恵一がすぐに気が付いて声をかけて来る。



あたしは全員へ向けて「あれ」と、時計を指さして見せた。



教室に取り付けられている時計の針は12時を指している。



それはさっきから変わっていないのだ。



「時計がどうかした?」



恵里果が首をかしげている。



「あたしがさっき時間を確認したときも、12時ちょうどだったの」



時計の秒針はちゃんと動いているのに、長針と短針だけ動いていない。



「壊れてるんじゃない?」



恵里果の言葉にあたしは「そうなのかな……?」と、呟いた。



ただ壊れているだけかもしれない。



だけどなんだか妙な胸騒ぎがしていた。



動かない時計を見た瞬間感じた、嫌な気分……。



ただの勘違いならいいけれど。



「それより気になるのが、珠のことなんだけど」



不意に恵里果にそう言われてあたしは目を見開いた。



「あたしのこと?」



驚いて声が裏返ってしまった。



この状況であたしのことが気になるのは、どうことだろう?



「うん。どうしてここにいるの?」



恵里果の質問に今度は瞬きを繰り返していた。



「どうしてって言われても……」



あたしだって、みんなと同じように目が覚めたらここにいた。



それ以前の記憶を思い出そうとしてみたら、頭が痛くなって思い出すことができなかったのだ。



そのことを説明すると、「そうじゃない」と、恵一に言われた。



「どういう意味?」



あたしは首を傾げて聞き返す。



これ以上、説明する方法が思いつかなかった。



「珠、お前は入院してただろ? いつ退院したんだ?」



恵一からの質問にあたしは目を見開いたまま動きを止めた。

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