第6話

確かに、そんなことをする暇があるなら、出口を探したかった。



けれど、恵一の考えも理解できる。



よく知らない相手とここに隔離されているというのは、不安だった。



特に1年生の2人とは面識がない。



相手から積極的に話しかけてくれるから悪い子ではなさそうだけど、信用できるかどうかわからなかった。



「恵里果。恵一の言う通りにしよう」



あたしがそう言うと、恵里果が一瞬舌打ちをしたように聞こえた。



え……?



あたしは目を見開いて恵里果を見つめる。



しかし恵里果はいつもと変わらない表情で、少し青ざめた顔で恵一を見つめている。



気のせい?



恵里果じゃなくて、他の誰かだったかもしれない。



あたしはそう思い直し、視線を恵一へと戻した。



「じゃあ、まずは俺から。俺は川本恵一、2年A組だ」



恵一がそう言うと、1年生2人が会釈をして返した。



それ以上なにかを言うことはなく、恵一はこちらへ視線を向けた。



同じA組の生徒から自己紹介するのがいいと考えているようだ。



あたしは恵一の考えをくみ取り、一歩前に出た。



「あたしも2年A組。井村珠です」



そう言って軽く頭を下げる。



これにも1年生の2人だけが反応してくれた。



2年のメンバーはみんな顔見知りだから、反応はなかった。



「あたしは貝野恵里果。珠と同じA組」



恵里果が早口に、そしてぶっきら棒に言う。



さっきまでは普通だったのに、なんだか機嫌悪くなったのだろうか?



こんな状況だから精神的にヒリついているのかもしれない。



2年A組の生徒はこの3人だけだった。



次いで、恵一は2年生に視線を向けた。



「俺は藤森貴央。2年C組。こっちは同じクラスの豊瀬真弥」



貴央はハキハキとした口調で自己紹介をして、真弥は貴央の半歩後ろで小さくお辞儀をする。



「同じC組の勝木吉之」



吉之は頭をかきながら言った。



手が動く度に、短い髪の毛が揺れる。



恵里果が小さく頷いて聞いている素振りを見せた。



これで、2年生の自己紹介は終わった。



残るは2人だ。



「俺は1年A組の安澤一輝(ヤスザワ カズキ)です」



「俺も同じ1年A組。中沖由祐(ナカオキ ユウスケ)です」



1年生2人組はあたしたちから少し離れた場所でそう言った。



先輩たちに囲まれているため、さすがに緊張した様子で背筋が伸びている。



「ありがとう。どうやら俺たち8人はこの教室に閉じ込められたみたいだ」



恵一が深刻な表情でそう言ったのだった。

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