第7話 妖怪と人間
その日は雪が降っていた
積もるほどじゃないが
東京では珍しい
都会の人間と
雪が積もる地方の人間は
歩き方が違うと聞いたことがある
それですべらないのだと
部屋ではよちよち歩きを始めた輝が遊んでいる
ちょっと前はなんでも口に入れるので
てんてこまいだった
管理室をそんなに空けるわけにもいかず
しかたなく抱いて仕事をしていた
わんぱくで頭を昇ったり
いすからころげ落ちたり
機械もいじろうとする
新しく買い換えたパソコンで
もっぱら遊んでいる
世の中に携帯電話が普及を始めた
まだまだ手に届くには高い値段だが
雄一郎は営業の仕事柄会社から支給されたらしい
なかなか便利だそうだ
そしてなかなか帰って来ない
どうも彼女でもできたのかなと思っている
私も萌香さんが帰ってくる3時ころまでは
仮眠をとるくらいで起きている
それでも帰って来ない
まぁそれも仕方ないだろう
私と付き合ってた時は3,4人の彼女が居た
知ってたが子供ができたので結婚した
それで女癖がなおるわけではなし
心配なのはもう一人子供ができたら
どっちをとるだろうかということだ
椅子の上でこくりこくりと始めた
気配で目が覚める
「ゆーいちろー」
「家にお金いれてるだけじゃ養ってるとは
いわないのだからね
たまに早く帰れるなら輝の相手もしてよね」
「それから香水の匂いが染み付いてる
風呂はいってから寝なさいよ
服は消臭剤まいてね」
「はい。すいません。わかりました。」
「最後に鍵勝手に出し入れされると
私の存在意義が半減するのですが…」
「いや起こしちゃわるいとおもって…」
「えー普通ならそっと布団に寝かしつける
もんなんじゃないかなー」
「それもありだな」
「輝ははがれそうにないが…」
私の服のぼんぼんをしっかりと握り締め寝ている
「ほんとだ」
ちょっと笑う
「今日も仕事でしょう1時間でもさっさと寝なさいな」
「そうする。悪いなぁ。」
私も布団に入って寝ることにした
輝はそのまま抱えている形
てる…輝も女好きになるのかねぇ
ピィジジツー
無線がなる
こちらS区のセンターです
寝ぼけた頭を切り替える輝は抱えたまま
こういう時は重たい
「はいこちらB区アパートです」
「遅くなりましたごめん」
「寝てたのかな申し訳ないね。」
「今回B区はお休みで大丈夫」
「Z区病院から患者が逃げ出したらしい」
「Z区意外となると森下先生ぐらいしか
見てくれるとこないしね」
その夜随分と輝がぐずるので
気晴らしがてら夜道を歩いてた
妖怪の匂いが近づいてくる!!
慌てて結界を張れる準備
輝がいるのですべて片手だが
意志力の方が勝れば問題なし
アパートに戻る方向で進むが
距離がひらかない!?
それどころかどんどん近づいてくる
こ走りで帰ろうとしたが
これが決定打だった
相手が先回りする形で目の前に現れた
「なんだ徳川さんだっけ?
病院抜け出しちゃだめだよ
妖怪と承知でみてくれるのは
Z区の私立病院だけなんだから」
刃物をちらつかせながら
形相もすざましく
「つきあってもらうぞ
こっちだ」
どうやら公園の方にいくらしい
が、着く前にそれは現れた
慌てて離脱結界を張る
「ご丁寧にどうも」
「あんた人間の退魔師ね」
「なんで徳川さんを追い掛け回すわけ」
「それはそいつの両親を俺が殺したからだ」
答えは裏から聞こえてきた
「で、でも徳川さんは妖怪ネットワークに属して
今では退魔の仕事を手伝っているのよ?」
「実際人質にとられといてかばうわけ」
「昔の事をちゃらにしろとは言わないが
追い掛け回されるのはごめんだ」
「この二人は人間だそれを無視して倒せるか?」
「妖怪をかばう人間などとうに人間とはいえないさ」
その言葉をかわきりに紙が数枚飛んでくる
式神か!このおっさん攻撃手段あるのか?
ともかく防御…防御結界が張られた3人を包むように
てるか?!敷紙は壁にぶつかるとただの紙にもどる
防御結界から抜け出す…う結界のが強いを無理にでようとすると
すーっとそこだけ薄くなった
「だから、今は改心して妖魔退治にいそしんでるんだから…」
2回目の式神投下ぼっと燃えてそこら辺が火の海になる
あぶり出す気か!
「わからないの!復讐は復讐しかうみださない!」
「例え徳川さんがどんな理由で貴方の両親を倒そうとすれ」
「おれは追いかけられたから殺しただけだ」
「へ?なんでおいかけられたのよ?」
「しらん」
「妖怪を倒すのになんの理由がいる
社会に恐怖と殺戮を生み出すだけだ」
いるのだ。この手の退魔師…
実はかなりの数が居る妖怪=悪なのだ
それより熱い体中が火ぶくれしそうだ。
「火をけして!ゆっくり話しあいましょう」
「誰が消すか妖怪の仲間など燃え死ねばいい」
だが火は消えた
「なんで!」
「その手合いと話し合いなぞ無駄よ」
萌香さん!火炎姫が消してくれたのか
「坊や、よく聞きなさい
ここで死にたければ相手するわ
死にたくなければ退魔を引退することね
「こちらも許容できない人間に優しくするほど
人間ができてないの」
こわい火炎姫怒ってる
3投目の式神は術者のまわりで燃え上がった
そのまま火炎姫は近づいていき
相手の首を持ち上げる手は熱をたもってる
のどはひぶくれだろう
そのまま一度手を離す
力が完全に抜けているそのまますわりこみ
したからながれてくる水は尿だろう
「その程度の退魔師ならすてるほどいるのよ
特別だなんておもわないことね」
私は駆けていき慌ててのどの傷を癒す
「なんで?」言葉になってない口の動きだけで読む
「けが人を治すのに理由なんていらないわ」
「さっき妖魔を倒すのに理由はいらないと言ったわね。」
「でも妖魔は自然と生まれてくるものであり
人の思いからうまれてくるものであり
ごく自然と存在するものよ。
木が1本あればそれがいつか妖魔になってもおかしくない
でも木を妖魔に変えるのは人の思いよ」
「人が生み出すというならばなおさら人が片付けるべきだろう」
ふーっとため息をついて眉間に手を当てる
「それはいまじゃなくていいでしょう」
「両親をころされている」
「両親のいない子供なんて沢山居るわ
復讐するべき相手がいるだけでもしあわせかも」
「俺をころせば気がすむのか?
殺せよそれで他の妖怪たちが迷惑をこうむらないならば
ころせばいい。あんたは俺を殺すために退魔師になったのか?」
「ちがう」「だがあんたはゆるせない」
そう言って短刀を引き抜き徳川に近づいてく
すーっと前に火炎姫がたつ
「あんたは関係ない」
「何百人と殺してきたわ。いままでに人間も妖魔も
たちはだかるものはすべて殺してきたわ」
「それでも仲間がいる。助けたいと思う存在がいる。」
「ただ退魔師になっていきているあなたよりは
守るものも殺してきたものもおおいはずよ」
そう言って近づいていく
「来るなーひぃーくるな化け物くるな」
言葉をむししてちかづく炎、火炎姫人の形をとった炎
火炎姫が戻ってきた時には人の姿焼かれた男の姿は跡形もない
「徳川さんZ病院へ一人で帰れるわね?」
「ああ大丈夫だ」
「てる…寝だしてる。こんな時に」と微笑む
火炎姫こと萌香さんとアパートに帰る
てるを布団において萌香さんに一言聞く
生かしてわかってもらえることはなかったのかと
萌香は言う
「分かり合うというのはね。両方が歩み寄らなきゃ駄目なのよ」と
「私たちは妖怪を許容できない退魔師をうけいれられない」
「妖怪を受け入れない退魔師は妖怪ネットワークの存在さへ耐えられない」
「そういうことよ」
「関わらずにすれ違うままで居られれば一番幸せ」
徳川さんはそれから半年とたたずに死んでいった
あっちこっちに癌が転移してすでにたすからなかったらしい
でなければZ病院には治癒師がいる治していることだろう
なんか物悲しさを胸に
人間として妖怪ネットワークに属する自分を振り返ってみたりした
妖怪…当然受け入れられない人の方が多いのだと
一粒涙があふれた
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