第6話 宣言の説明の宣言②
ど、どういうことだ!?
なんで、詩葉は僕が詩葉の事を興味ないなんて思い込んでるんだ?
それも随分昔からって……?
「ちょっと待ってよ! 僕は本当に詩葉の事を」
「はいはい。ありがとね、ナギ」
ダメだ。完全に流されてる。
な、なんで詩葉は、こんな勘違いしてるんだ!?
僕はこんなにも詩葉を好きでいるというのに。
「わ、わかった!! じゃあこれだけは確認させて? 詩葉は一体いつから僕が詩葉の事を興味ないなんて思ったの?」
なぜ詩葉がこんな勘違いをしているのか、それを紐解いていかないと。詩葉の意識は変わらないとみた。
まずは確認だ。根本を聞かないと。
「へー? 私に過去のトラウマを蒸し返せと? ナギったらとんだドSプレイね」
「あぅ……ご、ごめん、そんなつもりはないんだけど」
「でもいいわ? そんなサディスト的なナギにも
「あ、えーと……これは褒められてるのかな……? ありがとうって一応言っておくよ」
どうやら詩葉にとって、僕が詩葉に興味がないと思わせた出来事や思い出は彼女にとってトラウマにもなってるようだ。
詩葉にトラウマを植え付けるだなんて昔の僕は、とても酷い仕打ちしたらしい。
言うまでもないが、僕は好きな人にそんな事一ミリたりともした覚えはない。
「最初の挫折は……そうね。保育園の頃」
保育園っていったら花組の頃かな。
あまりに昔の事で、あんまし何があったか覚えてないけど。
「その頃からナギに好意を持っていた幼き日の私は、いつもナギの近くにいようとしたわ」
うむ。それは事実だろう。なんだかんだで、僕と詩葉の家も近かったし、両親は仲が良かった。それもあってか、僕と詩葉は一緒に保育園に行ったり、帰ったり、遊んでたりもした。
今思えば、今よりも昔の方が二人でいた時間は多かった気がする。
「それこそナギの近くにいたいがために色んなお願い事をしたわ。『ナギ、おままごとしよ?』、『ナギ、動物園に行こ』、『ナギ、お散歩しよ?』とかね。もちろんナギは優しいからいいよと、全部快く受けてくれたわ」
むぅ……お願い事を受けたって感覚ではなかった気がするな。僕も詩葉とそれがしたかったからしたって感覚の方が近い気がする。
してあげた感は、さらさらなかった。
「そんなある時、私はある提案をした。『ナギ、結婚してくれる?』って」
なんてこった。
記憶にないけど、詩葉からそんな魅力的な提案を受けてたなんて!!
今の僕には到底貰えないチャンス!
それを貰えてる過去の僕が憎い!!
「でも、今まで全部いいよっと言ってくれたナギは今回は『ダメ』と頑なに拒否をした」
今ほどガキの頃の僕を殴りたいと思った事はない。
何やってんだよ、僕!!
こんなに好きでいる詩葉からの結婚の申し込みがあったんだぞ!?
素直に受け入れなくてどうする!
どんな理由があって、そんな真似をーー
「当時のナギに理由を聞くと、『僕はプ◯キュア、チ○リータと結婚するんだ』……と。アレが私の初めての挫折ね」
「…………」
ま、まぁ……。当時は恋愛とか分かんなかっただろうし。
許してやらんこともないな。
「女のプリキ○アなら分かるけど、まさか、人間でもない獣にまで負けるなんてね。あの時は相当なショックを受けたわ」
「で、でも、そんな幼い頃の事なんて」
言い訳にはならないけど、僕自身その時は、恋愛のれの字も知らないアホンダラだ。
それこそ僕が詩葉にその気がないとは、言い切れはしないのでは。
「ーーいいえ? これだけじゃないわ」
そう言うと、再び詩葉は言葉を続ける。
「小学校の時には、毎日一日一回ナギに私の好意や好きを伝えてたけど、ナギは全くの無視」
「えぇ!? そ、そんな事本当に言ってたの!? 僕、全く知らなーー」
「ーー当時は口に出すのが恥ずかしかったからモールス信号で言ってたけど」
「分かるわけなくない!?」
さすが、頭が良い詩葉だ。小学校の頃からモールス信号を巧みに操ってたなんて。
そっか。小学校の頃、やたら詩葉が何度もノックや、僕を見ながら壁をトントンと小突いていたのはそう言う意味だったのか。
何かを小突くのが趣味になってたかと思ってた。
「中学校の時には、毎年のようにチョコをあげてたわ」
バレンタインデーの日、優しい詩葉はみんなにチョコを作っては配っていた。
もちろん当時はもらったチョコが義理とは分かってても嬉しかったな。
嬉しかったから、開けてすぐ一心不乱に食べてたっけ。
だが不思議な事に詩葉のチョコをもらった次の日は腹を下していた。
「ナギにはこのチョコが本命と伝わるように『好きです。付き合ってください』って書いたメッセージカードを添えてね」
「え、そんなの入ってた!?」
おかしい。そんな内容のカードが有ればすぐにでも僕は気づくのに。
箱の中はキチンと確認したけどな……見逃してたのか?
「ちゃんと入れたわよ。……チョコの中に」
毎年悩まされていた腹痛の原因が分かった気がする。
「……ちなみになんで中に?」
「そりゃ、チョコを切り開いた時に分かるように」
「…………」
確かに、詩葉のチョコは毎年サイズがちょっと大きかったなぁ。
でもそんなの気にせず、一口で食べてたっけ。
どうせなら今後は、そんなステキな異物混入やめて欲しいかな。
「そして高校生になると、ナギは露骨に私を避け始めた」
「いや、それはーー」
避けてた意識はなかった。
でも人気者で学校のアイドルになった詩葉に少しだけ近寄りがたく思ってからそれが出てたかもしれない。
それこそますます可愛くなっていく詩葉に、冴えない僕が近くにいて良いものか……と思ってた時期があったからだ。
でもずっと僕は詩葉を見ていた。
「それでもなんとか関係を進めようとみんなに協力を仰いだけど、努力は実らず。ナギと『つき合い』たいから協力してと言えば、学校にはなぜかフェンシング部が作られるし」
つき合いたい……突き合いたい。
なるほど、創部の理由は詩葉の一言だったのか。
ちなみにそんなきっかけで作られたフェンシング部は今年、県大会を優勝した。
「ナギに『すき』を伝えたいから協力してと言えば、なぜかナギが殺し屋に狙われているという噂が出回った」
あぁ……確かにあの頃よくみんなに『ナギ君、隙があるから気をつけて!!』、『ナギ、隙だらけだぞ?』、『みんな言ってるけど、隙が多いみたい』って言われたな。
当時は意味がわからなかったけど、なんか今は分かった気がする。
「運命にまで嫌われてるかと思ったわ? でもそれ以上にナギが私の事、女として見てなくて今までずっと一人の親しい友人としてしか見てないのはこれまで一緒にいて分かった」
いやいや!! バリバリ女として意識してましたけど!?
それこそどんどんと可愛くなっていく詩葉の姿全部意識していた。
声質、可愛い仕草、柔らかそうな唇、見てはいけないと分かっていてもついつい目で追っている魅力的な体つき、豊満な胸、引き締まったウエスト、ほどよいお尻の大きさ、パンツが見えそうなのを気にして、スカートの裾を気にしてる姿にも見惚れてーーあぁダメだこれ、途中からただの変態に成り下がってる。
「まぁそんな事色々あったけど、極め付けはこれね。ナギには他に好きな人がいるから」
「は、はぁ!? す、好きな人!?」
な、なんですと!?
詩葉の他に好きな人が僕にいるだと……?
全く身に覚えないし、考えた事ないんだが。
「誤魔化さなくていいわよ。私ずっと見てたんだから、ナギの事」
「いやいや誤魔化すとかじゃなくて!? え!? 僕が詩葉の他に誰の事を好きになったって言うんだよ!?」
どうか新世代のプリキュ○、ポケモ○とは言わないでくれ。
「ナギ、"しーちゃん"の事が好きなのよね」
「し、しーちゃん……? しーちゃんって、雫(しずく)……五月雨(さみだれ)雫(しずく)の事?」
五月雨(さみだれ) 雫(しずく)。
まさか、彼女の名前がここで出てくるとは思わなかった。
雫は、詩葉とレン同様、中学からの知り合いで、よくつるんでいる友人だ。
姉貴肌で、面倒見もよく、レンと僕はいつもお世話になっていた気がする。
それこそレンと同じで、僕が詩葉の事を好きというのも認知していたし、よく僕の恋愛の相談やアドバイスも快く受けてくれた。
ちなみに、彼女は既に日本にはいない。
アメリカの大学に進学するために、卒業式を待たずして渡米したからだ。
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