マラーの工房
「あいつは直系がいないと入り浸るな。そんなに兄弟が苦手なのかね…」
ちなみに普段はリルケスがマラーの借りている工房に入り浸っている。
兄弟よりある意味仲が良かった。そして言われたとおり次の日には加護結界の玉を作り終えている。おかげで寝不足だった。そしてマラーは朝の四時にはやってきた。
「できたもんはそこだ。俺を二時間ほど眠らせろ」
「なら勝手に釜を使わせてもらうよ」
「また避妊薬か?長女の大釜を使えよ。あんなでかいの使いこなせるのは長女とお前だけだ」
「そうさせてもらおうかな。いい出来じゃないか。これならスワリーさんも納得の品だと思うよ」
「なら課題クリアーだな。次は五属彗星球だ。こればかしは長女しか作れないからな。俺もマスターできるかはわからんがな」
「それで現在のフォレスト課題は終了か?」
リルケスが難しい顔をする。
「俺は難しい課題も与えられてきたが簡単な課題で与えられてないのも多いんだ。それこそ独学でできるようにはしてきたつもりなんだが…父親が直系がなに考えてるか正直わからん」
「フォレストにも秘密のひとつやふたつはあるものさ。僕たちは錬金術師だ禁術も秘術も山ほど抱えてるからね」
「俺が漏らすとしたらおまえくらいなのにな」
「それが問題なんだろうさ」
とマラーは笑った。
そしてリルケスは仮眠をとりにいきマラーは錬金術に入る。彼の動きは緻密で早い。最低限の時間と工程で何でも仕上げてしまう。まさしくこの時代に生まれた天才児だった。起きてくると錬金術は終わり、本を読んでいた治癒系の錬金術書だ。
「リルケス、僕は明日にでも聖なる大地に旅立つ。サンプルを取ってくるだけなら時間はかからんが秘密を探りたい。じっくり満遍なく歩いてくるつもりだよ。だから工房の仕上げには立ちあって欲しい。問題ないかチェックして完璧なものを僕に与えてくれないか」
「んな難しいこと一人で出来るか、長女を連れてくぞ。工房できてからじゃ駄目なのか?」
「思い立ったらいてもたってもいられないたちなのは知ってるだろう」
「まあな、気をつけていくんだぞ。出来れば攻撃魔術師か術者を雇え」
「乱獲されても困る。これは僕とフォレストだけの秘密だよ。一人で行くけど大丈夫だ。魔術も心得てる」
そうしてマラーは旅立った。
マラーの工房をひとつひとつチェックする。火を入れたときの加減から片付けの位置の高さまで最後に排気口と入り口の出入れ具合を確かめて終わりにする。
「姉貴に来てもらってて良かったよあの馬鹿でかい釜まで設置してあるとはおもわなんだ。据え置き釜4種に変え釜16種。個人の工房としちゃ最上だな」
「伊達に特別指定魔術師に認定されてるわけじゃないわね。それに…」
「それに?」
「彼のおかげで古に眠った魔法から始まってずいぶんと多くの魔法をフォレストは買い入れたわ。フォレストはこれからどんどん強くなるわよ。錬金術師としての責務と誇りを大事にしなきゃね」
「それはマラーだって同じだろう。古い書物から次々と魔法を復活させ新しい魔法まで組み立てる。売ったってあいつの頭の中にはそらでその作成法がはいってるんだぜ」
帰ってくるとサラリーが駆けてくる。長男の子供だ。
「見てみて、トランク作ったの。底なし沼の袋の要領と同じよ。来年からさっそく使えると思わない」
「サラリーは学校へ行くのか?」
とリルケス。サラリーはいたずらそうな顔をして
「だってまだ10歳だもん充分学習できるわ。それにフォレストを出ていられる貴重な時間よ?」
「サラリー君は女の子だ。伴侶が見つかったらいつでも家をでれるんだよ?」
「あら?だって、フォレストほど錬金術に向いたところはないわ。入れというならともかく出て行く気はないわよ?私はフォレストの守り神になるんだから。それにマラーが気になるの。魔法庁の氷のキングとクイーンを魅せ占めた。特別指定魔術師にはなれたかもしれないけど彼の人生は永遠に波乱にとぶことになるわ」
「永遠ねぇ。輪廻でも超えなきゃそんなことにはならないさ。それよりトランクを至急錬金術師たちに作らせようぜ。つくりぐあいにより値段を変えればいい。学校に必要なら至急課題だぜ」
「全くだわね。サラリーも大変なものを作ってくれたわ」
そういいながらスワリーはサラリーの頭を撫でた。
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