31話 望んだ状況 臨まぬ状況
城と町を切り離すかのような城壁と、外界からの危険から守る壁がのある端側に、木に覆われて隠れる様な場所に屈まない入れない感じの入口があった。そこからしばらく、じめっとした空気の洞穴の様な道を道形に進んで。やっと広い通りでる。
「腰いったいわねぇ~この道…… 王族しか知らない道かなんか?」
僕は特に問題ないが、ラミュやリエナ、そして王子こと、グーレ・カアラルドは腰を部分に手を置いて、少し柔軟運動をしている。
「そうですね、伯父や父上から教えてもらった道です。いざという時に使えと」
今では、グーレが密かに町へとサボりに行くときに使っているらしい。
「あの、それにしても……ここって?」
「この道は地下牢に通じてるんです」
そう話しながら歩くと、すぐに行き止まりにつき当たる。グーレはその場でしゃがみ込んで右壁の出っ張りがある部分を強く押し込むと、目の前の壁がドアの様に軽く開いた。
「さっ、いきま……しょう」
確かに行きついた場所は地下牢だったが、その開いた先に居た者達に僕以外の全員が固まったように驚いていた。
「なんだ? 急に止まるなよ。前見えないんだから」
「あ、あなた達。いったいどこから現れているんですの。ここ、地下牢でしてよ」
何処となく、聞き覚えのある様な、無いような年増女の声が聞こえてきた。
「なにしてんのよ、アンタらこそ。そんなら、牢屋ん中で」
ちょうど目の前の牢獄内にいたのは、ベクマルとカゼーヌとかいう高飛車な女どもだ。
「好きで居る訳じゃなくってよっ! 少し任務に失敗したからってこんな場所にレディーを閉じ込める様な奴が悪いのよっ! あんのローブ頭巾、いまに痛い目に……」
グーレはあらかじめ持っていた、牢のカギで僕等が出てきた所のカギを開ける。
「って、グーレ様っ!? 貴方の様な御方が何故、このような者達とご一緒なのですかっ」
「まさか、人質に!? いえ、脅されてそのような隠し通路からっ!」
すげぇや、あながち間違ってない気がする。
――にしても、コイツ等は……、
「煩い奴らだな。さっさと行くぞ」
「そうね、騒がれちゃたまんないし」
「(コクコク)、そこにずっと要ると良い?」
「そうですわね、さっさとお行きなさい、私達が貴方がたに救いを求める訳もございませんもの、というか、こちらを見ないで頂けます。汚らわしい」
「あの、でも…… 此処は素直に助けを求めた方が良い気が……」
「カゼーヌさん、なにか仰って?」
「いえ、なんでもありません」
そんなやり取りをしている内に、グーレが勝手に彼女達の牢のカギを開け始める。
「アンタ、コイツらがどういうヤツか解ってんの?」
僕は気にせずに、一人で勝手に行こうと歩きだしていたのだけど、
「えぇ、よく知ってますよ。ちょっと野心があってこの国を乗っ取っちゃおうなんて考えてる人達です、贅沢三昧で、宝石何かも独り占めしてますね」
臆面もなく、そういうグーレの言葉の続きが気になり、歩みを止めて振り返る。
「それを知りながら、それでも笑顔で助けるのか?」
「もちろんですよ。だって、根は悪い人ではないと自分が信じている人達ですから。非情で無情、敵からすればそうでしょけど、要らなくなった宝石や装備を密かに町人に配っているのを知ってますし、彼女達が兵士と共に常に前線で戦っている人だというのも、よく兵士達から教えてもらってるんですよ」
ガシャンッ――っと、頑丈そうな錠が外れる音が響く。
「…………それは、誰さんと勘違いしてるんじゃなくって?」
「さぁ、どうでしょうね。自分はイズリやその部下達からの情報は、無条件で信じるんで」
「アンタさぁ、そんでコイツらに騙されて国でも奪われたらどうすんのよ」
ラミュは呆れ半分のため息が混じった様な感じで聞く。
「ん~、民が守られるんなら別に問題ないですねぇ~。自分は人の上に立てるほど強くも賢くもないんで。でもまぁ正直、それはそれで少し悔しくはありますがね」
それ以上は誰も、何も言わなかった。
「……阿呆か貴様は?」
「え、やっぱそうでしょうか? イズリからも大将からも、ラミュさんにも言われますね」
あははと、グーレはあっけらかんと笑うだけだった。
「アンタもイズもお人良し過ぎなのよ、まったく」
「僕はそういう意味で、阿呆と言った訳じゃないぞ」
「へっ? じゃあどういう意味だってのよ」
「人の上に人は居ないだろうが、上じゃなく前に立って後ろについてくる奴等全員を導いていく奴が王やリーダーって呼ばれるんだろう? 違うのか?」
何故か皆がマジマジと僕の方を目をまん丸にしながら、見てくる。
「な、なんだよ、気持ちわりぃ?」
そう声を掛けると、全員が一斉にしどろもどろになりながらも、横に首を振る。
「それじゃあ、ここ開けて行くから、気付かれないように逃げてくださいね」
グーレの無駄にイケ面スマイル顔で、彼女達は何も言えない様子でリエナの様に首を楯に何度もふって。
コクコクと頷くだけだった。
もうちょっと憎まれ口でも言うかと思ったのに……
ただ、彼女達の顔が赤く見えた気がしたけど、多分、松明の灯りせいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます