24話 望んだ状況 臨まぬ状況





 外壁の周りを辿るようにして、歩くこと数分くらいだろう。


「確か……この辺だったわよね」


 木々に覆われた道なき道を歩きまわされて、行きついたのは行き止まり。

 僕とラミュの真ん中あたりを歩いていたリエナは、ラミュが立ち止った先を除き込む。


「……何も無い?」


 リエナの言うとおりで、ただの外壁の壁が見えるだけだった。


「あん? 此処まで来て門に引き返すとか嫌だぞ。……その壁ぶち壊すか?」


 僕が壁に近づこうとするのを、ラミュが遮って止めに入ってきた。


「見つからないように入ろうってのに、なんで一々見つかるような事をすんのよ。アンタ馬鹿なの? 少しは頭使いなさいよ」


「誰がバカだとっ!」

「アンタよアンタ。良いから黙って見てなさいっての」


 ラミュは徐に目の前の外壁へ近づき、左右の茂みを何やらゴソゴソ調べ始める。


「この壁の向こうにある町ってね、昔はお城の近くに一緒に建てられてたのよ」

「え、でも……山から見た時は離れてた?」


「そう、今の王になってから城を高台の場所に建てたの。この外壁、元は城壁だったものなの、そこから色々な増築を繰り返していって。車輪の様な形の国になった」


 両端の茂みに隠れていたスイッチを押すと、目の前の壁が人一人分くらいの石ブロックが、ゆっくり地面に吸い込まれていく様に動き出す。


「昔の城はこの地下にある遺跡の上に建てられていたのよ。だからこういった感じの抜け道が幾つもあるってわけよ。まっ、知ってる人は極限られた人達だけなんだけど」


 石ブロックが下がった先には、石で出来た四角い枠の中に、今度は小さくて四角いタイルの様なモノがあった。


「いま城に居る連中で、まともな人なら町を下町って呼んでくれる。腐った連中はまるでゴミみたいな言い方で裏町って呼ぶのよ、そして現国王をその一人」


「……王様が?」


 少し信じられない感じで、リエナが不思議そうに言う。


 ラミュはそう寂しげな表情で、悔しそうに言い。

 タイルを片手の指先で上下左右に素早く動かして、絵柄を完成さていく。


 するとカチンッという音が微かに響いて聞こえた。


「つまらない話ししちゃったわね、さぁ――」

「あ~、なんとな~く分かった」


 外壁に隠されていた石の戸が開いていく。


「なにがよ?」

「あってるかは知らんが、お前、あの城の奴等を少しも信じてねぇだろ」


 僕がそう言うと、ラミュはしばらく間を置いてから口を開く。


「そんなことは無いわよ。少ないけど信じても良いかなって思える奴もいるわ」


 少し横目で僕を見ると、すぐに前を向いて奥へと進んで行ってしまう。


「やっぱり、この国……なにかある?」


 リエナも呟く様な独り言を言いながら、ラミュの後を追っていく。


「……なんつ~か、どいつもこいつも、面倒で暗いヤツばっかだな」


 しかも、あの二人ってば、フィズに会った時と似たような顔をしてるんだよ。


 ――あ~、早く一人で旅したいな。


 フィズと会ってからというもの、僕の周りには必ず誰かが居る気がする。



「それもこれも、全部あの野郎のせいだ」




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