第89話 つかの間の団欒と母親の帰還

 なぁじいちゃん。


 変わってしまった……か。

 

 「会わないのが、俺たちの為?……どういうことだよ、なんでそうなるんだ? 会って話し合わないと何もわからないだろ?」


 「すいません、会わないのが私たちの為……というのはいったいどういうことでしょうか。それだけだと私たちも何と言いますか、ちょっとかみ砕けない、と言いますか……」


 まぁ結局のところ親父もどういうこっちゃてことだろう。

 意味わからない、と。


 そりゃそうだ。


 「まぁ修君たちがそう言う風に言うのも分かってはいるんだけどな。こればっかりはそうした方がいいとしかなぁ……」


 しかしじいちゃんの言い方は釈然としない。


 「そうねぇ……今日は話し合いをしに来たのよね?真澄とのことで」


 「え、ええそうですね。まだ一度もちゃんとは話合えていないので、電話とかでも話そうとしたんですがなかなか通じず……」


 「そうよねぇ、あの子も不器用だからね。でも今回はそんなの関係なくきっと話し合いにならないと思うわよ?だって真澄の中でもう決定事項だから今回のことは」


 話し合いにすらならない……。

 でもそう言ったばあちゃんの顔は悲壮感がありながらもしかし確信に満ちていて。

 そうまで言わせるほどのことが、何かあると。


 「どうしてですか?」


 「……そうねぇ、なんていうのが正解なのかしら……ねぇあなた?」


 「そうだなぁ……話し合いをしても意味ない理由かぁ……んー、言うなればこれは真澄一人の問題じゃないから、かな?」 


 「…………真澄一人の問題じゃない?他にもこの離婚について、説得しないといけない人がいる、とか?」


 親父の問いに二人してうーんと腕を組み合わせ、頭を悩ませる2人。

 言えない理由でもあるのか?

 

 「……そうともいえなくはないが、そうかと言わればそうでもないという」


 なんだその政治家の国会等答弁みたいなどっちつかずの答えは。

 それとも問答か。

 ただ言えることが限られているから、そう言う答えになっているのかな?


 「つまり当たらずとも遠からずってことですかね?」


 「まぁそうだな……」


 「ありがたく教えていただいてなんですが、私もここで帰った方がいいと言われてもはいそうですか、と帰るつもりもないです」


 そう。

 帰ってくるなら俺らがここで帰る必要もない。

 そもそも、話し合いが簡単にいくなんて親父も思っていない。


 俺も俺でこの間のままただ言われっぱなしは性にあわない。

 もしかしたら親父は復縁の話かもしれないが、俺は俺で言いたいことは言わしてもらうつもりだ。

 

「修君ならそう言うのは分かっている。だからそれを承知で一応言わしてもらったんだ。この話し合いは絶対に真澄は折れないから」


「……絶対に譲らない……真澄がそう言うということは誰かの為って時ですか。それほどまでに大事な存在なんですね真澄にとって」


「ああそうだ」


 この言い方だとまるで浮気相手がいるようだけど……。

 でも探偵はいないって言ってた。

 調査ミスか?

 それともまだ他にも俺らの知らない人が?

 

「これは確認だがあくまで話し合いは二人で、だよな?」


「ええ、もとよりそのつもりです。……巧を同席させることの懸念でしょうが、この子を連れてきたのは、この間の真澄とのことがかなり尾を引いている様子だったので、言いたいことを真澄に言ったら少しは消化できるかな、と思って連れてきただけなんです。流石に私も弁えています」


「ならいい、どうせ後味悪い決意末になるから聞かせる話でもない」


後味悪い……。

どういことだ。


「そうはさせませんよ」


「いやなるよ、、な」


どういうことだ。

なにを知っているんだじいちゃん。


 

「…………それはまぁそれとして、巧の件、あれはあまりになんというかショック療法すぎやしないか?失敗したら…」


「真澄のやり方を踏襲しただけですよ。あえて厳しい道を行かせる。それにそこはフォローしますよちゃんと………………この子の彼女が」


「そうか真澄はそう言う育て方だったな…………ってでフォローするのいや修君じゃないのかっ!…………ってえ?!巧彼女できたの?!」


「あらあらまぁまぁ」



 二人してにやにやと俺のことを見始める。

 

 おい親父ぃぃぃぃぃぃぃ。

 なにさらっといってんねん!!




「ま、まぁまぁいいじゃん教えてあげたら孫孝行だよ孫孝行!それに久々におじいちゃんとおばあちゃんとゆっくり話しなよ、ついでに私にもなれそめ話ちゃんと聞かせてよ、そういえば巧からはちゃんと聞いてなかったよね?」


 なんかいつのまにか親父もおじいちゃんたち側になってるんだが?

 はぁどういう状況なのこれ。

 バチバチにやり合うと思ってらなぜか和やかに会話しているんだが?


「とりあえず真澄とは話さしてくれるみたいだし、それまで巧の話聞きましょうか」


「お、いいのぅ!」


「いいじゃないそれ」


 え?これどういう状況?

 大人三人年甲斐もなくウキウキなんだが?

 

「ほらほら早く、ワシ楽しみ」


「私も楽しみだわ~」


「俺も俺も~」


 なんか三人してお茶飲んでお菓子食べ始めてるんだが?


「…………あぁ分かったよ!」


 しょうがなく話した。

 まぁ所々ぼかして、具体的にはエロイところとかね?

 

 まぁ母さんの件がきっかけでもあるからこの話をするのもどうかとは思うんだけど……。

 とりあえず軽く話した。

 次第に熱が入ってかすみへの愛を熱弁した気もするが、まぁ気のせいか。


 話し終わった時はなんというか、生暖かい目線をむけられた。

 そしてひとこと。

 

「甘い、コーヒーもう一杯飲みたくなってきたわい」


「奇遇ね、私もです。入れてきますね、修さんは?」


「あ、いただきます」


 コーヒーを再度のみ、そして一言。


「青春だなぁ……」


「青春ねぇ……」


「友達の家じゃなかったのか……そういえばあの頃からかすみちゃんと……あぁだからか!」


 青春かな?

 ちょっと生々しすぎて、青くない気もするけどな?


 あと若干1名パズルのピースはまった人もいた。


 そんな風に時間は過ぎていく。

 分かっている、こんな時間がまやかしに過ぎない、ということは。

 本題があの女との会話。

 

 もう時刻は夕方。

 俺も親父も少しばかり手に力が入る。


 そして……

 

 

 ガチャリ。


 

 玄関の方で音がした。

 よく聞き慣れた声。

 

 

「ただいま……誰か来て……あぁ来ちゃったのね」


 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さぁ俺たち私たち戦争話し合いを始めましょう。


初めてあとがきでルビ振りました。

因みに自分このラノベ読んだことないです。

自分が好きなのは、お前たちは俺の翼だ、です。


てなわけで、明日も更新します。

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