第87話 突撃妻ハウス


「な、なぁ本当にここであっているのか? あの女がいる場所」


「ああ。そのはずだけど?」


「……まじか」


 学校は冬休みになり、それに合わせて俺と親父は、あの女がいるだろう場所へと向かっていた。


 でも考えたらそうだよな。

 普通に考えたら、生活基盤もそんなに持ってなかったら、こうなるか。

 浮気相手がいるという前提で考えていたから、浮気相手のところにに転がり込んでいる、と思っていたんだけどな。


 浮気相手がいない、ってなってくるなら全然話は変わってくる。

 そうなったらもう実家くらいしか考えられない。

 

 まぁつまり俺のおじいちゃんおばあちゃんの家ってわけだよな。

 祖父母の家。


 母方の祖父母の家は、群馬県にあり、頑張れば新幹線を乗らなくても、2時間くらいでつく場所に。

 車でも同じくらいかかり、まぁ俺と親父は車だった。


 車内はなかなかにきまずい。

 これから自分の妻に会いに行くというからか、親父はとても緊張しているし、俺も俺とてトラウマにぶつかりにいくからか、手には汗がにじんでいる。


 後普通にこのあいだのこともあって少しばかり気まずかったりする。


 「久々だね、じいちゃんち」


 「あ、ああ。だなぁ」


 「今日いくってはいったの? じいちゃんたちに」


 親父の眉がピクリと上がった。

 

 おやおや。

 これはちょっと。


 「アポってとったの?」


 再度の確認。

 首を振る親父。


 「とらなくていいの?ってそっか」

 

 「ああ、本来は取るほうがいいんだがな。真澄にばれたりしたら逃げられるかもしれないだろ? この間も俺に会わないように、あの時に来たんじゃないかと思っているくらいだからな。 それにお義父さんもお義母さんも、お優しく、公平な方だが、心情的には娘の旦那より実の娘の方が可愛いにきまってるからな。まぁ隠れられたりしてもあれだし、っていう、な? はははみんな疑っちまう。」


 うーんじいちゃんばあちゃんそんなことするかなぁ……。

 するイメージはないんだけど。


 でも人間どんな時に何するかわからないからなぁ。

 それもそうか。


「そっか、てっきり親父が連絡しずらいから、だと思ったわ」


 ちょっと見直したわ。

 さすが親父。

 

 すると親父は言いづらそうに……。

 

「まぁそうした要素があることも否めはしないが……」


 やっぱり親父は親父でいつも通りだった。

 漫画のようにかっこよくはない。


 「ちゃんとかっこよくないじゃん」

 

 「うっせ、奥さん持ったら分かるぞお前もぉ……例えばだぞ? 佐倉さんの家にお前は行ってるから佐倉さんちで例えるけど、たまたまあっちのお父さんと二人になったりしてみろ? めちゃ気まずいからな? 相手からしたら幸せにしてくれる半面可愛い娘を取られたともどこかで感じてしまうからなぁ」


 ……あーどうなんだろ。

 結局まだかすみのお父さんには挨拶してないんだよなぁ。

 でも前あった時は娘絶対やらんって感じだった気がする。

 どうしよ。


 真奈美さんもお父さんなんていいのよ!とか言ってたけど……。

 年始とかに挨拶だけでも……。

 でも高校生の俺が挨拶しても、今後どうするのか、とか何も答えらんないから逆に不誠実なのか?


 ……わからん。

 ま、かすみにきいてみよ。これはかすみの方が分かるだろうしお父さん性格。

 俺も昔に会ったきりで、その頃はまだ幼なじみだからな。

 恋人の親として会うのは普通に緊張する。


「……想像したか?」


「まぁ。……少しは分かる……かも」

 

「だろ!まああとは仕事忙しすぎて帰ってる余裕無かったのがでかいんだけどな」


 よし、俺は仲良くやろう!

  

 そうだよな、長期休暇あんた爆睡が基本だったもんな。

 母さんも笑顔でしょうがないわねぇ、とか言って笑ってたっけ。

 仕事が忙しくなりすぎたのもその頃か。

 

 総父母の家へは。小学校の時は毎年行っていたが、中学に上がるにつれて、行ける回数も少なくなったなぁ。

 まぁ俺も友達とか真希とかといたから、良かったっちゃよかったが、少しは寂しくもあった。


 そんな想い出に触れながら、次第に高崎の市街地へ。

 そ個からは何も話さない時間が続き、とうとう母親の実家へ。


 まぁ親父も親父で色々思うところもあるんだろうなぁ。


 車を近くのコインパーキングに泊めて、二人して歩く。

 小さい頃に止めた場所。


 昔はここをワクワクした気持ちで、家族3人で歩いたなぁ。

 今は嫌な胸のドキドキが大きい。


 「……そんな緊張するな巧。今回は俺もいるから、さ。とりあえず深呼吸しとけー」


 さっきまでの緊張は嘘のように、まるでスイッチを切り替えたかのように親父は笑顔で振り返ってくる。

 その背中は少し大きく感じて。


 でもそれを今は感じたくなかったかもなぁって少し思ってしまったり。

 なんだろうなこの複雑な気持ち。

 こんなとこで親父の背中は見たくなかったっていう。


 

 「行くぞ」

 

 

 それは俺に言う、というよりは親父自身を鼓舞させるようなそんなつぶやきだった。

 

 祖父母宅の家は2階建てでごく一般的な家屋。

 それなのに今も、昔と変わらずとても大きく見える。



 

 

 ピンポーン。


 

 

 呼び鈴をならす。

 押して数秒後。

 

 「…………はーい、今出ます」


 と少し落ち着いた女性の声。

 ぱたぱたとスリッパの鳴る音。


 多分まだ俺らと気づいていない。

 

 スリッパの音が近付くにつれて、緊張感が増していく。


 そしてとうとう。


 「はいはーい……お待たせしまし……た?」


 ばあちゃんの声が次第に小さくなる。

 さすがに俺と親父が来るとは思っていなかった感じかな?


 「……おーいどうし……た?……あぁ」


 じいちゃんもばあちゃんの様子に気付き、すぐに状況に気付いたらしい。


 

 「御無沙汰しています……真澄……いますよね?」



 こんな形では会いたくなかったなぁ。


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仕事始まって更新できなくてすまそ。

三連休は頑張りまっす。

( `・∀・´)ノヨロシク!

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