第79話 違和感(sideかすみ)


 12月も後半に差し掛かり、寒さもかなり厳しくなってきた。


 

 「あぁ巧の体温を感じたいなぁ」


 

 最近は巧と一緒に寝ていた時が長かったからか、一人寝の夜がさみしい。

 巧の匂いを感じたい、体温を感じたい、鼓動を感じたい。


 そんな思いに、下着を濡らし、空しく懸想する日々。

 あぁ、会いたい。


 思い出すのは初めて二人で行ったあの海のこと。

 あの時自分の直観に従って、巧の後ろ姿を見付けて、追いかけて本当に良かったと思う。

 それくらい危うかった。


 今でこそ少し持ち直したけど、巧は今もずっと危うい状態を綱引きしている状態。

 

 相沢エミちゃんからキャンプの夜、巧の話をチャットで聞いた時は真夜中にも拘わらず思わず向かおうとしちゃったもん。

 でも彼女としては当たり前だよね、心配しない方がおかしい。

 エミちゃんに必死に止められたし、高校生活を邪魔するのもなぁと思って泣く泣くやめたけど。


 代わりに帰って来た時、めちゃめちゃ甘やかした。

 よしよしとか、膝枕とか、まぁ色々。


 

 とてもよかった。


 

 でもそれをしたからか、やっと彼の悩みを引き出せたけど……。

 巧は元々弱音を吐くのが苦手だからなぁ。

 しかもいかんせん、大抵のことは自分でどうにか出来ちゃうから質が悪い。


 「だから無理しちゃうんだけど」


 私としてはもっと頼ってほしいけどなぁ。

 それこそもっと性欲処理とかも……。

 えへへ。

 

 

 本当に好きだ、あの困ったようにくしゃっと笑う姿が。


 

 っていつまでも布団に入ってちゃだめだ、仕事しなきゃ。

  

 大学は既に冬休みに入ったから、今日はおうちでゆっくりとお仕事をする。

 仕事といってもエルのバイトでしている動画編集だけど。

 最近は最低限のノルマ分しかやっていなかったから、元素材が結構溜まってしまっているぽい。

 

 「そういえば昨日は巧からライン返信あんまなかったな」


 いつもは結構返してくれるんだけど。

 勉強とかで忙しいのかな?


 時間はまだ8時過ぎ。

 巧は寝坊とかしていなければ登校中のはず。


 一緒の家で寝泊まりしてたから、自然と習慣は覚えてる。

 行ってきますのキスをするとき、可愛かったなぁ……。


 照れながら、濃厚なのしてくるんだもん。

 毎回そのあと納めるのに大変だったんだからね?

 


   かすみん:

 『おはよ!今日も寒いね~、風邪ひかないように今日も頑張ってね!』


 するとすぐに既読がついて返信が来る。

 

   Takumiii::

『おはよ!今日も学校頑張っていってきまーす。かすみもお仕事って言ってたよね?一緒にがんばろ!』


 

   Takumiii::

『招き猫のスタンプ』


 あれ?

 おかしい……ぞ?


   かすみん:

 『おー!あ、今日は帰り遅いの? ご飯でもどう?』


 すぐに既読になるが今度はすぐに返信がない。

 

   Takumiii::

 『ご、ごめん。今日は親父に夜話あるからさ、行きたいんだけど、ごめん(-_-;)』


   かすみん:

 『りょかいりょかい!だいじょうV!!』


 返信は軽く打つが、明らかにおかしい。

 巧らしくない。


 普段の巧なら学校に行くのに頑張るなんて言わないし、変な間をおかないし、断ったりしない。

 彼が悩んで断ったってことが、ただお父さんと天秤にかけただけならいいんだけど。


 なーんか嫌な予感がしてしょうがない。

 女のかんってやつかな?


 巧には【気を付けて言ってきてね】、とライン。


 何もないといいんだけど……

  

 でもこういう時の勘てかなり当たるんだよなぁ残念なことに。

 だから一応彼女にもラインをしておく、キャンプのことを教えてくれた彼女に。

 

   かすみん:

 『えみちゃん!おはよ!』


   藍沢しか勝たん:

 「かすみさんおはよーございます!!( ^)o(^ )」

 

 流石ギャルになった子。

 すぐ返信が。


   かすみん:

 『もう巧って学校にきてる?』


   藍沢しか勝たん:

 「まーだですねぇぇ……て言ってたらきました!」


   かすみん:

 『お、なーいすタイミング!巧の様子はどう?いつも通り?』


   藍沢しか勝たん:

 「いつも通りな気がしますねぇ……何かあったんですか?」


 いつも通りかぁ。


   かすみん:

 『そっかそっかならいいんだけど。いやなんか巧元気ない気がしてさ?』


   藍沢しか勝たん:

 「そう言われると……どこか疲れてるような気がしないでもなくもなくないですね?」


 しないでもなくもなくない……つまり疲れてるってことね?


   藍沢しか勝たん:

 「うっすら隈も……ってそれはいつものことか」


 隈……なんだろう心当たりがあるぞ?

 毎回巧とは朝型まで行っちゃうからなぁ

 反省反省。

 でも昨日はしてないからそれもないし?


 土日にしっかりやりためないと! 

 

 ってそうじゃなくて!


   かすみん:

 『隈はまぁいつものことだけど……悪いけど今日ちょっと巧のこと気持ち注意して上げてくれる?』


   藍沢しか勝たん:

 「お安い御用どんのすけ!……まかしておくんなまし!」


 もはや何語なのかもわからないけど。

 わかってくれたらしい、わかってくれたんだよね?


   かすみん:

 『ありがと!今度キャラメルマキアーテスタバフランぺチーノデラックスおごるね!!』


 巧には呪文と言われていた飲み物をエミちゃんにおごってあげる。


   藍沢しか勝たん:

 「いえーいいいいいいい!」


   かすみん:

 【じゃわあるいけどお願い!】


   かすみん;

 【猫が香箱座りしているスタンプ】


 何もないといいけど。


 そのまま動画編集の仕事を再開した。


 えみちゃんから次にラインが来たのはお昼過ぎだった。

 

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