第69話 しよっか
怒涛の林間学校が終わった。
行きこそ、いろいろあったが、帰りのバスはみんな爆睡してた。
あの後、相沢さんとかは部屋に戻った後人狼ゲームとかトランプとかして色々して遊んでたらしい。
にもかかわらず、朝はめちゃくちゃ元気だったから体力お化けだよね。
「おっはよーーー!!」とか言ってたし。
さすがギャル。さすギャル。
俺なんて昨日あの後は、疲れたから寝ようとしたけど寝つきがなぜか悪く、寝たのは朝の4時。
無事疲れも取れず今日の朝は死んでた。
朝起きてきた時の、俺相澤さんの雰囲気が真逆すぎてみんな笑ってた。
にも拘わらず、帰りのバスでも俺は全然眠れず。
結果解散する予定の駅に着いた時には、目が充血してバッキバキだった。
ついでにバスの中で英単語覚えるために勉強してたせいで酔ったのもあって、すごいことになっている。
まぁいってしまえば自業自得な訳だが。
後は帰るだけだから、ちょっとその辺で休んで――
「――巧?……大丈夫? 顔色悪いよ?」
真希が、友達の輪を離れ、こちらに寄って来る。
心配で来てくれたのだろう。
「……ん?そんなに悪くみえる?あんまり寝れてないからじゃないかな? ほら俺って枕変わると寝れないだろ?」
「……そうだっけ?てっきり私は昨日の――」
「――昨日の?いや全然そんなことないよ?あの後すぐに良くなったし。ご飯食ったとにすぐ動いたせいだよ多分。それより友達。まってるぞ?待たしちゃ悪くないか?」
真希のいつもの女友達が気まずそうにこちらを窺っている。
まあ色々とあったしな。
「う、うん。あ、良かったら……いやううんなんでもない。じゃあ私はこのまま打ち上げいってくるから。
巧も気を付けて!」
小走りで、元の位置へと戻りすぐに談笑し始める真希。
真希が何を言おうとしたのかは想像でしかないけど、大体わかる。
多分誘ってくれようとしたんだろう、微妙な関係の俺と真希フレンズの仲を取り持つために。
でも止めた。
……うん多分俺もその方がいいと思う。
人間には適度な距離感ってものがあるから。
真希もそれが分かったからやめたんだろう。
そのまま、近くの自販機でコーヒーをがぶ飲みし、カフェインを取って眼を覚ます。
あとはミント強めの辛いガムも併せて。
これでなんとか家までは持つ。
そんなこんなで、帰途についてるとスマホが振動する。
相手は相澤さん。
藍沢しか勝たん:
『今日はおっつ~!!今日もそんなに体調良くなさそうだったけど 大丈夫そ?』
ラインの相手は相沢さん。
心配してラインしてくれたのか、こういうところ。
Takumiii::
『おつかれ~、心配ありがと!今家帰ってるから、着いたら爆睡する…………予定!!』
藍沢しか勝たん:
『それがよき!寝て元気な子になるんじゃぞい!』
Takumiii::
『急におばさんぽくなるじゃん……早く寝まーす』
藍沢しか勝たん:
『あっ、女子に禁句いったなぁ……これは茉莉に報告ですなぁ、たっぷり叱ってもらいましょう』
続けてピコんとライン。
藍沢しか勝たん:
『話は聞かせてもらいました。隣にいる茉莉です。
被告死刑☆即刻家に帰って寝るべし!』
どうやら二人は一緒にいるっぽい。
打ち上げかなんかかな?
死刑なのに家帰れってもう訳わかんないよ、多分これ深夜テンションみたいになってるな2人共。
これは放っておこう。うんそれが良い。
Takumiii::
『おとなしく家に帰ります!』
藍沢しか勝たん:
『うん気を付けて!!また今度みんなで打ち上げいくぞーーーー!!!』
藍沢しか勝たん:
『オーーー!!!』
藍沢しか勝たん:
『海軍大将が万歳するスタンプ』
1人でハイテンションな相沢さん。
流石すぎる。
これが努力した陽の人、リアルでもネットでも関係ないと。
Takumiii::
『おーーーーー』
とりあえず乗っておいた。
藍沢しか勝たん:
『成瀬君が乗ってきた……だと?!』
Takumiii::
『お休みのスタンプ』
藍沢しか勝たん:
『ひどい!』
おつかれ、と送ってスマホをしまう。
「相沢さんはいつも楽しそうだなぁ、元気が有り余ってるのかな?それにしても茉莉さんも山登りで疲れてたのに、今は元気いっぱい遊んでるなんてやっぱ類は友を呼ぶてきな奴なのかな?」
そうこうしているうちに家に着く。
やっと。
やっと帰ってきた。
やっと会える。
長い長い色々あった一泊二日だった気がする。
「……ただいまぁ」
「おかえりぃ」
パタパタとかすみがうちのリビングから出てくる。
その出で立ちは長めの黒いパーカーにホットパンツ。
はたから見たらパンツを履いているかいないかという論争を巻き起こすようなもの。
「あーつかれ……んぎゅっ?!」
かすみは勢いそのままに、その豊満な胸に俺を抱きよせてくる。
「あ~…………スゥファ。あぁ久々のたくみの匂いだぁぁぁ!!さいっこぉぉおぉぉ」
ぎゅっと思いきり抱き締められる。
なんかキメちゃった人のような感じだしてるけど、相も変わらず可愛い。
抱き締められたおかげでかすみの香りが胸いっぱいに広がる。
甘ーい匂い。
愛してやまない匂い。
ずっと恋焦がれてた匂い。
とは言ってもまぁ1日会ってなかっただけだけど。
でももうすでにかすみ成分が不足している。
たぶんかすみもそうだろう。
めっちゃ匂い嗅いでるし。
あぁもう最高。
このまま昇天しそう。
だんだんと気持ちよくなっても
きた。
「うーん、たくみの匂いももっと堪能したいけど……でもひとまずは」
拘束を少し緩め、かすみが胸に埋まっていた俺の顔を持ち上げる。
そうすると自然と玄関の高さ分、俺がかすみの顔を見上げる形になりかすみのきれいな瞳に吸い込まれそうになる。
そうやって見つめ合っていると、かすみはにこっと笑って。
「おかえり」
弾けるような笑みを浮かべて、軽くキスをしてくる。
唇がふれるようなそんな優しいキス。
相手を思いやる慈しみのキス。
「ただいま」
おれも微笑み返し、お返しのキスをする。
「じゃあ林間学校のお話聞かせて?……あ、でもその前に」
「ん?」
魅惑的な笑みをかすみは浮かべ――
「――その前に……しよっか」
何をとは言わない。
そんなことは言わなくても分かる。
一言。
たったその一言で、久々に俺の理性は爆発した。
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2章終わりといったな。
あれは嘘だ!
次こそ2章最後の話だ!
ではよろ!!
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