第66話 私が恋したあなたにしか出来ないこと(ギャルSIDE)


「私、好きな人がいるの……」


 成瀬君からすれば、唐突な私の告白。

 案の定、驚きで面食らい目を丸くしている。

 暗がりでも、なぜかその顔は良く見えた。


 普段は澄ましている、というか冷静で、感情を見せない彼が、感情を露わにし、戸惑っているそんな姿は新鮮で、ちょっとおもしろい。


「……え、えーっと。なるほどな!?そういうこともあるよな高校生だし!」


「まぁ私も華のJKってやつだからねん、恋の一つや二つ……ねぇ?」


「いやねぇ、と言われましても……」


 そんなこと言ってみたけど実際は初恋だけど、さ。


「でもそっか、高校生でギャルになったから、恋愛強者なんだなぁ……でもそんな相沢が俺に聞くことってなんだ?」


 頭に?を浮かべる成瀬君。

 ……でもちょっとその勘違いは許容できないなぁ。

 そんな恋多き女みたいな言い方は。


「……あっひどーい偏見!ギャルが恋多きなんて!私全然恋愛強者じゃないよ? 私、男の人と付き合ったことないんだよ実は、ね?恋愛弱者です!」


「……あっごめん! そうなんだぁ、相沢もてそうだから誰かしらと付き合ったリしたことあるって思ってたよ」


 ちょっとほっとしたように見えるのは、そうだったらいいなって私の願望かな。


「恋愛相談とかされたりするから、なんか応えなきゃって思って答えたりしてるけどね。……でもあれ全部ドラマとか少女漫画とかサスペンスとかで聞きかじったものを言ってるだけなの、実は」


 えへへ、と笑う。


「聞きたくない真実出ちゃったよ」


 成瀬君も呆れながらも笑う。


「でも不思議なんだよねぇ。そうやって相談されて、アドバイスすると案外うまい事恋愛うまくいっちゃうの。でも私がしてることなんて、実際それっぽい事言って背中押してあげただけなんだけどね?」


 あはは、と笑う私に、なぜか成瀬君はまじめな顔をして。


「いやいやがすごいんだよ。背中押してあげるって大事だと思う、少なくとも俺にはそんなことできないもん。すごいよ相沢は、だからもっと自信もっていいよ。……って自信あるか相沢は」


 なにそれ。

 なにそれなにそれ、

 なにそれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!


「……ううんそう言ってもらえると嬉しい」


 何その優しい笑顔。

 反則でしょーーーー!!

 なんとか返事した私を誰かに褒めてほしいくらい。


「ってこんなの好きな人に言ってもらったほうがいいにきまってるよな、あはは」


 そんなナチュラルに褒められて、困ったように笑う成瀬君がその好きな人なんだよ?


 ……なんてそう言えたらどれだけ楽なんだろう。

 でも君には彼女がいる。とっても素敵な彼女が。


 私はずるい人間だから、そんな素直に言えないんだ。

 付き合うならみんなに言いたいし、自慢したいから。

 そもそもそんな、人の彼氏を奪うようなことはいやだし、なんかきもちよくない。


 ……まず奪えるとも思えないし!

 成瀬君は流されたりしないだろうしそもそもかすみさんめっちゃ綺麗でかわいいし、それにおっぱい大きいし!


「……んで、相談って何?……あ、俺に仲人に、みたいな感じか??で、出来るかなぁ……」


 成瀬君の仲人を成瀬君に頼むってどういう状況よ。


「あ、それは大丈夫。というか成瀬君そんななこう……ど?多分恋のキューピッド的な奴だよね! それが出来るほど顔広く無くない?なんというか……そう成瀬君は狭く深く。ってタイプだからさ!」


「確かに俺会話出来る人はいても、そんな深い関係の人いなかった……うん」


 成瀬君はいつものポーカーフェイスだけど、なんかちょっと成瀬君が落ち込んでる気がする。

 言葉尻に元気がない。

 言ってから思ったけど、友達少ないってディスったようにきこえるじゃん!


「あ、いやいい事だと思うよ!!狭く深く!!いざって時に助けてくれる人多そうだし!!」


「となると、俺にお願いしたいことってマジでなんだ?もう勉強以外、相沢にしてあげられることないぞ?本当に予想出来ないんだけど」


 ううん。もう一つある。

 成瀬君が、ううん。

 成瀬君にしかできないこと。


「成瀬君にしかできないお願いなんだぁ」


 私が恋したあなただけが出来ること。


「お、おう……頑張るわ出来るだけ!……なんか壺とか買わされるのかな?」


 もうッ!恋するギャルに失礼だよ。

 でも関わってきたから分かる。これが成瀬君の照れ隠しであることくらい。


「そんなことじゃないよ、もっと簡単なお願い~」



 大丈夫、頑張らなくて。

 逆にがんばられるとそれはそれで私が死んじゃうかもしれないからほどほどにしてほしかったり……して。


「で、何回も聞いて申し訳ないけどなにすればいいんだ?そろそろ教えてくれよ」


 そうだね、焦らしすぎちゃったかも。

 でもさ、言いづらいんだよ。


 だって、これからお願いすることは――


 弱気になったらダメ。

 退きたくなっちゃうから、このまま君に片思いしてたくなるから。

 でも成瀬君を困らせたくないから。


 私はこの恋を諦めるの。

 かっこよく言えば、私が彼のために出来ること。

 このまま友達としては関わっていきたいから。


「私の恋のために、さ」


 言いたくないけど、でも言うんだ。

 笑顔で。

 最高の笑顔で。


「成瀬君とかすみさんの付き合ったきっかけを教えてよ、私があなたを諦めるために恋愛するために


 私がそう言った瞬間、成瀬君の顔が一瞬強張った。


「え……」


「え?」



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 お久しぶりです!

 明日も更新予定です!!(まだ1ミリも書いてないけど!)

 頑張りまっす!!


 いつも応援ありがとうございます!

 沢山のコメントとかももらえてとてもモチベになっています!

 これからも星とか応援よろしくお願いします!

 

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