第65話 夜の逢瀬と告白


「……本当に大丈夫?」


 真希が心配そうに、俺肩をさする。

 話し合いは終わったが、それでも中々立てない。


「全然大丈夫だが?」

「顔色真っ白の人に言われても説得力ないんだけど?」

「……真っ赤だけど?」


 はぁ、と謎に真希に呆れられた。

 そして何かをバックから取り出すとほらと手渡される。


「……はい鏡。貸してあげるから見てみなさい?」

「さんきゅ」


 鏡に現れたその姿はまあ酷かった。

 脂汗をかき、顔の血色は悪く、まるで死人のよう。


 そりゃ心配しますわ。


「ほんとだ、ひどい顔してる」

「でしょ?」

「さっさと寝床いって休むことにするわ」

「……そうね、それがいいと思う――」


 そこで真希は言葉を斬り、顔を俯かせる。

 でも立っている俺からしたら、その顔は丸見えなわけで。


「――ごめんなさい、私が不用意に巧に聞いたから」


 普段の強気が鳴りを潜めた状態の真希。


「なんだよその殊勝な態度は。真希はもっとこう、ドーンとしてればいいんだよ。今回の件に関しては誰も予測すらできなかったことだからな、まぁ気にしない」


 ポンと肩をたたく。


「でも――」

「――でもじゃない!」

「みぎゆ」


 真希のもちもちの頬を軽く引っ張る。


「俺がいいっていってんだからいいの!……「はい」は?」

「ふぁい」

「よろしい」


 頬の手を放し、もう1度座る。


「いちゃかった」

「嘘つけ、軽くやったわ」


 頬をさすりながら、睨んでくるが、なぜか次第にほおが緩み始める。


「……えへへぇ」


 つねられたのになんかにやけてる人おるが?

 え、こわ。


「と、とりあえず俺戻るから!」


 そう言った瞬間、ふらりと上体が揺れる。


「大丈夫?!」


 慌てて真希が駆け寄ってくる。

 申し訳ないな。


「大丈夫だ、それよりここでいいよ後は一人で戻れるし」

「でも心配だし」

「いいから、このまま二人で戻ったら変に噂立てられたりするかもだろ?そしたらお互いに本意じゃないし、だから先に真希は戻って、友達と合流しな?そのあと俺も様子見て戻るから」


 大丈夫、大丈夫と笑顔をはりつけ、手をひらひらとする。


「ほら、お前もあの友達とも話したり、女子トークしたりもあるだろ?大丈夫だからほらいったいった」

「……分かった。でも何かあったらすぐ呼んでね?」

「うんそん時は頼むわ」


 不安そうに何度もこちらを振り返りながら、キャンプファイヤーへと戻っていく真希。

 完全に姿が見えなくなったところで、やっと息を吐く。


「ふぅぅっ、なんとかなったぁぁ」


 危なかった。

 あのままいたら危なかった。


「……うぷっ」


 より人から見えない木陰を探して。

 我慢していたものを思いっきり吐きだした。





「……勿体なぁ、でも水がうま」


 普段は大したことない水が殊更にうまい、胃の中が空っぽだからかな?

 そのまま木陰で座りながら休む。

 メンタルも、ピアスに触れていたらだんだんと落ち着いてきた。

 身体はまだちょっときつめだが、ここで真希に言ったように宿に戻るわけにもいかない。


 さて、と。

 Takumiii:『お待たせ!!ごめん今終わったけど、どうしようか?今からでも大丈夫?時間も遅いけど……』

 藍沢しか勝たん:『全然ダイジョ(^^)v!!今からちょっぱやで参る!!』


 相沢さんに連絡してみると、すぐ返信が帰ってくる。

 さてさて、でも何の話だろ。


 あっ、その前に。


 Takumiii:『お疲れサマンサタバサ!今真希と話してきた!仲直りはしてきた!』


 するとすぐに返信。


 かすみん:『お疲れ!!そっかそっか、良かった……けど無理してない?』


 文面から妹と仲直りした安堵と、俺のメンタルの心配、その半分半分の複雑な心境が窺える。


 Takumiii:『心配しなくても大丈夫!!』


 ほんとは吐いたけど。

 それはまぁ言わなくても……


 かすみん:『うーん、巧が殊更に元気さをアピールする時って何かあるんだよなぁ。特に私に心配かけたくない時とか(* ̄- ̄)』


 うぐぐ、鋭い。


 Takumiii:『そ、そんなことないよ?』

 かすみん:『まぁ今は聞かないけどね?それよりも彼女にかまってないで、ちゃんと林間学校楽しみー!こういう機会貴重だからね~』

 Takumiii:『あんがと!また今度話す!!』

 かすみん:『うん楽しんできて?』


 そうしてラインが終わって、少し待ってると。


「お待たせ!」


 弾けるような笑顔で、相沢さんが姿を現す。


「ううん、待たせたのはこっちだったからさ。ごめんね!」

「全然いいよ~、こっちこそいきなり呼び出してごめん!!」

「いやいやこっちこそ……ってははは、お互いに謝ってたらしょうがないね」

「あはは、ね?」


 お互いにあはは、と顔を見合わせて笑う。

 まぁ俺の場合は、若干空元気気味ではあるけども。


「……そういえばどうだった?」


 どうだった?

 え?あやふや過ぎてなんと答えたらいいかわからない。


「……と言いますと?」

「あぁごめんね~言葉足りなかった!佐倉さんとお話してきたんでしょ~?最近仲微妙って聞いててから、さ。ちゃんとお話しできたのかな?って。あ、言いたくなかったら答えなくてもいいんだよ?全然詮索したいわけじゃないから!」


 手をぶんぶんとオーバーリアクション気味に振り、否定する相沢さん。


「あー。大丈夫だよ。まぁ概ね仲直りできたかな?」


 俺の問題は新たに見つかったが。


「概ね……なんだね。でもよかった!ちょっとは関係が進展したみたいで!よかったね~」


 わぁと無邪気に、素直に喜ぶ相沢さん。

 そこに悪意も打算も何もない。素直な気持ちを表現してるだけ。


 こういうところ、すこしかすみに似てるな。


「ま、そうだね~ありがと!色々俺も思いなおすこともあって関係の修繕をね……」

「そうなんだ!でもよかった、仲悪いよりはいいに越したことは無いからねたぶん!」

「……かもね。あ、俺の話よりもだよ、相沢さんの話聞かないと!時間無くなっちゃう」


 時計を見れば結構いい時間になってる。

 もう少ししたらキャンプファイヤーも終わってしまう。


「そ、そうだね!」


 なぜか顔を少し赤くして、慌て始める。


「まずはお礼を言いたくて!!こないだは勉強見てくれてありがとう!!本当に助かったよ!!」

「いや全然全然。俺こそ勉強になったし」

「……そういってもらえると、ありがたい、かな」

「また何かあったら言って?俺で役に立てることあれば相談に乗るから、まぁったらだけど」


 手か俺がお世話になる事多そうだけど。

 この林間学校でも多数お世話になってるし。


「じゃ、じゃあ早速いいかな?」


 もじもじと照れているのか俯きながらも、お願いしてくる。


 その様子に若干とまどいながらも頷く。


「あ、あのね!……わたし、わたし!」


 どうしてかその時俺は少し前。

 真希が屋上で告白してきたときのことを思い出していた。


 俯きながら照れながら、でもその目は真剣で、前をむいていて。


 そう、ちょうど今の相沢さんみたいに覚悟を決めた目をしていた。


 どうしてそれを思い出したかは分からないけど、一瞬相沢さんの姿とダブって見えた。


 そして相沢さんはとうとう本題を口にした。


「私、好きな人がいるの……」


 唐突な告白だった。


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 仕事忙しすぎて更新できなくてすまそ!!

 2章もクライマックス近くなってきました!

 今後もお待ちいただければ!!

 10月の最初に2章は終わらせマッスル!


 いつも応援ありがとうございます!

 あんまり感想返信できなくてすみません!

 目は通してますので、今後も感想どしどし下さい!!


 ではよい週末を!

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