第57話 あの日の約束とWブッキング


「キャンプファイヤーの後、時間つくってくれない?話したいことがあるの……二人だけで」


 バスの中で隣にいて、会話もしないままでも気まずいから、しょうがなく雑談を続けていると、真希からいきなりの提案。


 ま、まじか。

 ここまで俺結構塩対応してた気がするんだけど。



「…………」


 真希とは話せるようになったとはいえ、話したいわけではなくて……雑談したからいいと思ったのか?

 

 塩対応でもあきらめないのか。

 ……かすみも前『話してあげて』みたいなこと言ってたか、俺もそれを了承したし。

 ということは、その時のかすみが言ってた話をキャンプファイヤーのあと話すってことか。

 流石にバスの中で雑談しました、じゃ話をしたことにはならんよなぁ。

 なるかなぁ……、いやむりだな。


実際真希はどうでもいいけど、かすみには誠実でいたいし。


 結局俺としては、正直関係性もこのままでもいいと思っている。

 このまま、他人のような、他の人と同じような距離感で。


 それが俺らの最適解とも思えるんだけど。

 でも今後、真希はかすみの妹だし、関わる機会もあるだろうからもうちょい距離感を近づけたほうがいいのかな?


 いやでも今の状態だと、話すこともままならないかもか俺が。


 結局真希はどうしたいんだ?

 振られた相手に話したいことがそんなあるものかね?

 自分は自分で新たな関係を築けばいいと思うんだけどな。


 まだ恋を抱いているわけじゃないだろうし。



 何も言わない俺に真希はしびれをきらしたのか、それとも別のナニカが彼女を突き動かしているのか。

 それは分からないけど真希は、俺の眼をしっかりと見て……


「お願い……」


 祈るように頼んできた。

 さすがに俺も鬼じゃない。話したいと真摯に願ってくるやつを拒むほどでは。

 未だにその真意も何を話したいのか全てもわからないが。


「……分かった」

「……ありがとぅ」


 俺の返答を聞いて、真希が仄かにほほ笑む。

 なんか満足げな顔をしている気がする。


 え?いや満足げな顔してますけど、長野に着くまでまだつくまで2時間以上あるんですけど?

 このあとどうすんの?

 君やり切った顔してるけど、この空気どうしてくれるの?


そんな風に今後に頭を抱えていると、ちょうどというか、なんというかバスがSAに泊まった。

 俺は何げない顔をして、一目散に自販機へ。


 缶コーヒーを一気飲みして、頭を冷やす。


「……あ~疲れた」


 夏だから日差しは眩しいが、バスという窮屈な空間に閉じ込められていたせいで、開放感がすごい。

 もうバスの中に戻りたくない。


「うーー----ん!!」


 凝り固まった背筋を思いきり伸ばす。

 あぁ、これからまだ2時間もあの空間続くのかぁ。



 ふぁーあ。



 そんな完全に気を抜いていた俺の頬に、


 ピト。


 ナニカが振れた冷たいナニカが。


「うぉぉぉぉっ!?」

「あはは!何その驚き方!普段聞いたことないような声でてたよ!ただのコーラだよ?」

「あ、相沢さん!それに茉莉さんと田中君と佐藤君も、心臓にわるいって」

「いやふふふっ、そんなに驚くと思わなくて、さ」


 ごめんごめんと手を合わせて謝ってくる。


「それにしても残念だよねぇ、バスの席離れちゃってさ、一緒にトランプとかしたかったのに」

「なんで、成瀬君だけ別の席なんだろ!」


ありがとう、俺の存在を覚えていてくれて相沢さんと茉莉さんが優しい。


「……まぁしょうがないよ、うちの班5人で奇数なのに」


「でもわざわざ佐倉さんの隣にしなくても……ねぇ」


 小声で相沢さんが共感してくれる。

 相沢さんだけは真希と微妙な関係なのを知ってるからな


「まぁしょうがないよ、別に。あの先生も俺と真希が仲いいと思ってだろうから、案外いいこととしたって得意げにしてるかもよ?」


「そんなこと……ある……かもね?」

「うん」


 いい教師ではあるけど、抜けてるところもあるんだよね。

 そう言うところを男の人に見せれば彼氏できると思うんだけどなぁ。

 弱みを見せられないタイプなのかな?


 そんな風に担任を見てたら目が合ったので、笑顔で微笑んでおいた。

 中指をみえないようにたてられた。


 そういところだぞほんと!!


「まぁまぁ、今のうちにゆっくり休んでおいてよ、後で山登りあってこれからかなりきついと思うからさ」


 そうして相沢さんは少しもじもじとし始めて……


「それと、さ」

「うん?」

「あとでちょっと話したい事、あるからさ時間作ってくれない?」


 話したいこと?


「うん、全然いいよ?相談とかでしょ?相談に乗れるかは分からないけどいいよ」

「ま、まぁそんなとこ!」

「おっけ、じゃぁ今日の夜キャンプファイヤーの後とかで!じゃ、じゃあ後の山登りがんばろー!また後でね!」


 そう言ってバスに乗り込んでいく相沢さん。

 俺もしょうがないし、乗るかぁ。

 それにしても、なんか疲れたな!

 昨日はかなり激しくて、あんまねれなかったし。

 でも俺バスとかであんま寝れないしなぁ、しょうがない後半はバスガイドさんの話でも聞いてゆっくりと……


 そんなことを考えていたら珍しく睡魔に襲われ……そのまま寝た。


 何か重大なことを忘れてる気もするけど……睡魔には勝てなかった。

 夢を見た、相沢さんと真希がなぜか言い争っている夢。


 ん?真希と相沢さん?


 なんかあったような……


 あ。


 思い出した瞬間血の気がひいた。

 そうだそうだやばいやばい。


 ……思い出した!!

 さっき昨日の疲れからか、安易に返事したけどそうだ。

 2人に約束してた。


 まっずいWブッキングしてる!!


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明日からまた1週間始まりますね!!

頑張りまっしょい!!


あ、サポーター様向けにかすみとのお風呂回投稿しました!

もしご興味あれば!


ではでは

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