第49話 校内勉強会

 テストは来週頭から。

 つまりテストまで残っている猶予は明日も含めて、5日間。

 それで、当の本人の実力はというと。


「……終わった」


 テスト範囲を見て絶望するほどらしい。

 普段の明るい姿は今の様子からは、1ミリたりとも伺えない。


「ま、まぁまぁ私も教えるからさ」


 そんな相沢さんを茉莉さんが必死になだめている。

 佐藤君と田中くんも慰めようとし……


「分かる、難しいよな、今回範囲広いし」

「俺もあんま勉強してないわー」

「あーわたしも」


 そんな三人に相沢さんは一言。


「本当?」


 目に光がない状態の相沢さん。

 普通に怖い。

 そしてそれに対して誰も一瞬答えが遅れた。


「あ、ああ」

「……もちろん」

「してないよー」


 これがあれか。

 ネットとかで話題の、高校生の俺全然勉強してないから詐欺!

 この言葉を信頼してやらないと、被害者が生まれるんだな……

 恐ろしや学生社会。


「な、成瀬君は?」


 救いを求めるように、俺を見てくる相沢さん。


「……俺もそんなしてないよ?テスト勉強」

「もしかして……仲間?」


 相沢さんが一縷の望みをかけて俺に目線を向けてくる。

 まるで捨てられた子犬のように。


「えみ~甘いよ~」

「そうだよ?あの成瀬君だよ、テスト勉強はそんな!!してないんよ?」


 佐藤君

 なんだいその嫌な強調の仕方は。

「そうだぞ?つまり正しい質問は、成瀬君1日どれくらいどんな勉強をしているの?だ」


 田中君、的確にぼかしたことを質問しないでほしい。

 相沢さんの目が敵意に満ちちゃったじゃん。


「これで勉強してないって言ったらもう本物の天才だね、で、どうなの~?」


 茉莉さんまで俺の逃げ道をふさいでくる。

 みんなが期待した目でこっちを見てくる。


「ま、まぁ1日5-6時間はしてたかなぁ平均」

「て、テスト前に?だよね?」


 震えるような相沢さんの声。


「いや普段からずっと」


 がくっと崩れ落ちた。

 その様は真っ白に燃え尽きたようボクサーのよう。


「つまり、普段から勉強しているから今更テスト勉強をする必要がないってことなんだね~」


 そんな死に体の相沢さんに追い打ちをかける茉莉さん。

 教室にどSなギャルが降臨していた。


「ちなみに興味本位なんだけど、高2の夏の今どれくらいまで勉強してるの??」

「自習では、今大体終わったとこかな~」

「あ、今年の範囲?」

「ううん、高3の範囲」

「「「「え?」」」」

「ぐふっ」


 全員の声がはもった。

 1人大ダメージを受けた人がいた。


「あ、でもさすがに今は2,3時間しかやってないよ?」

「がはっ」

「フォロー入れようとして追い打ちかけてるよ成瀬君」


 どSな茉莉さんにまで呆れられた。

 相沢さんは机に突っ伏していた。


「とりあえずお昼休みから勉強しようか」

「……うん」


 昼休み。

 隣では珍しく教科書を見て勉強をする相沢さん。

 危機感からだろう。しかし長くは続かず。


「……成瀬くーんヘルプミー」

「分かった、でもちょっと俺相沢さんの学力分からないから一回実力はかってみよう、これ解いてみて」

「ありがとー」


 それは問題集から基本部分だけをまとめて軽く作ったもの。


 解いてみれば、やっぱり基本から覚えてない箇所が浮き彫りになる。


「んじゃ、まずは数学とかは基本の公式を覚えて、問題集で実戦練習していこうね~英語とかは単語とかかな~」


 って感じで勉強のやり方を教えていく。

 話して分かったのは、そもそも相沢さんは質を量で補っていた感じ。


 ちゃんとしたやり方をすれば、もっと出来ると思う。


 俺もやり方を知るまでは大変だった。


「うへぇ、大変だぁ」

「やれば出来るから大丈夫!!可能性しかないから余裕余裕、今回の難しそうに見えて簡単だから!」

「ほ、ほんと?」

「うん、ほんと!」


 頑張って笑顔を作って、元気づける。


 俺がここまで頑張るのは、相沢さんのためだけ、ではない!

 俺の為でもある。

 今回のテストで、赤点、うちの高校は50点以下が赤点なのでそれを1教科でも超えていないと、林間学校があら大変、みんなにとっては勉強勉強合宿となってしまうのだ。


 そうなったら相沢さん頼みの班編成の俺にはいてもらわないといけないという事情もあったりする。

 ま、みんなで普通に行きたいしね。


 だから相沢さんにはちゃんとテストを超えてもらわないと困るんだ。


「ということでがんばってきましょ!」

「はい……」


 相沢さんは日に日に死にかけていった。


 そんな風に昼と放課後も6時くらいまでみんなで勉強して、ついでに他の茉莉さんとか佐藤君、田中君などにも教えたりしてたら平日は終了。


 着実に成績は伸びていた。


 あとは土日のみ。


 家に帰ったらかすみも大学のレポートとかあるらしく一緒に集中して、勉強して、息抜きにいちゃついて。


 そんな折。

 かすみがふと。


「あ、そういえば明日って時間ある?」

「ま、まぁ勉強しようとは思ってたけど」

「じゃ、勉強会しない?」

「今もしてない?」


 2人でずっとしてたじゃん。


「ん?あ、言葉足りなかったね、4人でしよ?噂によると相沢妹ちゃんの方勉強苦手なんでしょ?」

「まぁまぁ」

「こないだエルとも話してて明日とかどうかな、と思ったんだけど」

「俺は大丈夫だけど……」


 あれ?ちょっと待て?

 これ4人の中に男性俺だけじゃね?

 これ普通に気まずいやつでは?


「ちょまっ……」

「あ、エルに聞いたらおっけーだって!」

「あっ……うっす」


 彼女同伴による追い込み勉強会の開催決定した。


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 一週間がまた始まりますね……

 あぁ夏休みが恋しい。

 夏よいかないで……



 いつも応援して頂きありがとうございます。

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