第48話 勉強会と真希との邂逅
「……はぁはぁ」
今日も今日とて教室に着いたのは、遅刻寸前の時間。
「おはよ、今日も相変わらずぎりぎりだね~?」
あのあとも結局、ギリギリまでかすみといたらこの時間に。
でも学校に来たからえらいと思う。
うん。
てか前まで来てた俺えらすぎんか?
「おはよー相沢さん」
「昨日は空元気って感じがしたけど……うん今日は大丈夫そうだねぇ~?ん?」
「ど、ドシタ?」
相沢さんの勘鋭くないか?
てか俺の周りにいる女性みんな勘鋭すぎん?
「いや~、こころもちは元気になったけどうぅん?」
なーんか違うんだよなぁ、とじろじろと俺をなめ回すようにみる相沢さん。
上から下までじっくりと見て。
「……うん」
得心がいったようにひとつ頷いて、
「なんかやつれた?」
「……へ?」
ドンピシャなことを言ってきた。
「なんかまだ朝なのに疲れてる感じがするな〜」
いや疲れてますけど。
全然疲れてますけど。
朝から感情の波が激しくて追いつけてないけどさ。
なんでそれがばれてんの?
「……朝から運動したからね」
「運動? 成瀬君運動得意だったっけ?」
自慢じゃないが得意じゃない。
物語の主人公みたいに、実はやってみたらとかではない。
普通に平均したくらい。
特に嫌いなことは走る事。
「得意じゃないけど、健康のためにもやった方いいでしょ?」
「それは確かにそうなんだけど……うーんどんな運動してるの?」
きくよねー聞いちゃうよねー聞きたくなるよねー。
うんだからさ俺もこういうしかないよね。
「……有酸素運動?」
「え、朝からすごいね!」
「あ、ありがと~」
「私もダイエットとかしなきゃいけないとは思うんだけどさ~、どうしても欲に負けちゃうよね~、友達とかとご飯食べたいし、ジュースのみたいし、お菓子食べたいし~」
「うんうんわかるわかる俺もせい……」
「せい……?」
……あっぶな!?
やばい言えない。
性欲抑えるの大変だよ〜あははとか言いそうになった。
口滑らせてたら気まずい雰囲気間違いなしだわ。
変態むっつりガリ勉野郎って陽キャ共に言われるところだったわふぅ。
でも性欲に関しては、身近に煽りに煽ってくる人がいるからしょうがないと思うよね。
「せい……うん、制限するの大変だからさ〜」
「だよね!」
本当はあんまお菓子とか食べないからわからんけど。でもかすみもそんなことを言ってた気が……いやよく食べてたな、でも太るっていってなかった様な……なんか別の……あ、思い出した。
【最近食べ過ぎたからか、また胸大きくなっちゃったァ】
て言ってた。
うん、最高かよ。
「で、どんな運動してるの?」
「えっ?!」
「なに、おっきな声出して驚かせないでよ~」
ど、どんな運動ってそりゃまぁえーと……S○X?
でも確かどこかの研究結果で性行為が、運動よりもカロリー消費が同たらこうたらみたいなのが出てたし、間違ってはないんだけど、それをクラスメイトに言うのもはばかれる。
「まぁ普通の一般的なものだよ?」
「腹筋とか?」
「……まぁ」
腰の上下運動とかですね、はい。
「今度走ったりもしようとは思ってるんだよね~」
「あーなんで?」
「やっぱ持久力とか健康のためにね」
本当は最近連戦連敗なのでなんとか勝つためにも、嫌いなことをしてでも、体力を増やさないといけない。それほど事態はさし迫ってきている。
「やっぱあの運動苦手な成瀬君も、ちゃんとやってるんだもん、私も見習わなきゃね、今度一緒にやってよ!」
え?やるって、え?
う、運動?俺らがやってる?
え?俺誘われてる?
……分かってます運動だよね。。
「……そだね、テスト終わったらタイミングあれば走ったりしよっか」
もちろん普通の運動をね?
「あ……テスト」
顔を青ざめさせる相沢さん。あこーれあんま意識してなかったな。
「よーし、そろそろ担任の先生来そうだし準備を」
「待って!」
がしっと机の下から腕をつかまれる。
「勉強教えて!」
その目は鬼気迫るものだった。
「これ以上下がったらまずいの!!」
「……ちなみに前回は?」
「下から数えたほうが圧倒的に早い!」
「圧倒的……」
なのそのパワーワードは。
「あれ、でも中学の時相沢さんて」
「それ以上はいけない!」
「それ好きだよね……」
「まぁいい訳するとですね……昔はめっちゃ勉強してなんとか食らいついてたんだけど、だんだんと高校では順位とかもよくなくて、ならこんなにやっても……って感じでやらなくなって、遊びもしたら今の感じに……」
なるほど。
まぁうちのそもそも高校レベル高いしね、そもそも。
それで挫折した感じかな。
「今まではどうしてたの? そんな感じだとテストやばそうだけど……」
「茉莉とかみんなに教えてもらってた! 茉莉めっちゃ勉強できるんだよ!」
前を向いて授業の準備をしていた茉莉さんはわざわざ後ろを振り向いてくれて。
「……めっちゃじゃないよ少しね~、でも成瀬君ほどじゃないし」
「ま、確かに学年1位だもんね!」
「いやいや俺は勉強にすべてを捧げてだから、部活に勉強、遊びと全部やってる茉莉さんの方がすごいよ」
本当にそう思う。
俺はとりあえずいい大学に入るために、大人っぽくなるために勉強してただけで。
まぁ今もいい大学に入るために勉強はしてるけど。
それだけだ。
今までは高校生を楽しんでる、とは言えないから、さ。
「いやいやそれでも成瀬君が」
「いやいやいや茉莉さんの方が!」
「いやいやいやいや—―」
「――ストップ!!」
俺らの謙遜のし合いに相沢さんがストップをかける。
「どっちもすごいから!!私も分かってる!!だから前にお願いした通り!!私に勉強を教えてください!!今回は本気で不味そう!!」
茉莉さんと二人顔を見合して。
勉強会の開催が決定した。
というか茉莉さん勉強できるのか。
めっちゃギャルなのに。
やっぱ人は見た目によらないなぁ。
逆に相沢さんは元真面目ギャルだけどできないのに、茉莉さんはずっとギャルなのに勉強できたり。
これはあれか。
あるドラマのセリフ的に言えば「目に見えるものがすべてとは限らない――」ってやつだなぁとしみじみ思ったそんな朝。
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昼休み時の終わりかけ、トイレに行った帰り、ばったり廊下で真希と鉢合わせる。そう鉢合わせてしまった。
今でも真希と話すのは、母さんのことを思い出すからきついけど、でも言わなきゃいけないことがあったからちょうどよかったっちゃよかった。
真希も俺と同じタイミングで気づいたらしい。
「……あ……」
一瞬の無言。
「……ちょうどよかった」
「……え?」
俺のその言葉に意味が分からなそうにする真希。
まぁそうか、自分と話したくないはずなのになんで?と真希からしたら思うだろうからな。
たしかにそうだけど。
でもさ。
「昨日家に来てくれたんでしょ?」
「……あ、ええとうんっ」
何を言われるのか、不安げで、いつもの溌剌としていて自信ある姿は見せない真希。
あんなことあってしょうがないんだけどさ。その事を残念と思うのはエゴだよな。
「ごめん対応できなくて、ちょっと昨日疲れて死んでた、わざと出なかったわけじゃないからさ、ごめん」
来てもらったのに出れなくて悪いとおもってたんだ。
一瞬聞こえはしたしさ。
「いや私も事前に言わなかったから……」
「まぁとりあえずすまんかった、じゃ授業始まるから」
「え?」
結構ギリギリだった。
まずい、ちょっとトラウマ気味になってるかもしれない。
足早に教室に向かって呼吸を落ち着ける。
思い返せば話したのは、あの告白の日以来。
久々の会話は一瞬だった。
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二日ぶりです。
気づいたら土日に入ってました!
お待たせしてすみませんでした!
ちょっと納得いく話にならなくて……
今回久々に真希との会話すこし。
まぁ会話というよりは、巧が一方的に喋った感じでしたけど笑
今後しっかり話す機会はあるのでご期待いただければ。
いつも応援して頂きありがとうございます。
フォロー数4700を超えて、僕の作品にこんな応援してもらったことないので、感無量です、このまま5000目指してますので是非応援お願いします!
星もありがとうございます、めっちゃモチベになってます!!
後、感想とか、誤字脱字とか助かってます。
ではでは。
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